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第67話

 ブレイブ城にあるレオンの執務室で3人が話していた。


「二人とも、振り分けはこんな感じでいいかな?」


 レオンはガイルとグランツの2人に名簿を渡した。ガイルは名簿を見ながら、顔を顰めて頷いた。


「名簿は見てもわからねえからいいんだが………」


「貴族たちか?」


 顔を顰めているガイルを見かねて、グランツが質問した。


「ああ、俺の事が気に入らねぇらしい」


 ガイルの騎士団には、団員は大鷲の剣が多く、貴族は少ないが貴族からガイルに対して不満があった。孤児が騎士団の団長になり、さらには爵位まで貰ったガイルを妬んでいた。


 しかし、ガイルが強いことは知っているため、誰もカインに直接文句を言わず裏でコソコソ言うばかりで、なかなか解消されていなかった。


「そこら辺は僕達の仕事だ。僕達に任してくれていいよ。ガイルは鍛えるだけでいいから。それにガイルの方には、ヘルトの民から大々的に国で入団試験をやるからそっちの方を考えてくれ」


 ガイルはしばらく悩んでいたが、レオンの言葉を聞くと安心した顔で笑った。


「そうか。それなら大丈夫そうだな」


 ノックする音が部屋に響いた。一同は扉の方に視線を送った。


「ヴァイス・ハイトです。食糧事情について、公爵にお聞きしたい事があり参りました。お取込み中でしょうか」


 レオンは二人に尋ねるように目配せをすると、二人は頷いて返した。


「入ってきていいよ」


 ヴァイスはレオンの許可を得て部屋に入ると、見覚えのある顔と目線が合った。


「「あっ」」


 ヴァイスとガイルは同時にお互いのことを指で指した。


「おまえはあの時の小僧か」


 ガイルは嬉しそうに指を指しているのに対して、ヴァイスは危険なものを見るように引き攣った顔で指を指していた。


「えっーと、ブレイド公爵様。日を改めさせていただきます。それでは失礼します」


 ヴァイスはすこし考えた後に、手短に挨拶をしてから振り返ると走って部屋の外へと出ていった。


「おい小僧、一人だとまた迷子になるぞ!」


 ガイルは、中央に置いてあった机を飛び越えて、外に走っていったヴァイスを追いかけた。


「ならないので、着いてこないでください。リッター男爵」


 ガイルとヴァイスは、肉食動物から全力で逃げる草食動物のような構図で、レオンの執務室から飛び出して行った。


 残った二人は走りかけて行ったガイルを見てため息を吐いた。


「これからは互いに苦労しそうだね」


「そのようですね」


 二人は見合うと、不意に小さく笑い始めた。


 笑いにひと段落つくと、2人はすぐに切り替えて真剣な顔つきで話し始めた。


「ところで、グランツくん。いまグリフォンに乗れるのは何人いる?」


「私含めて、10人程です。正直、相手のグランコンドル隊に対しては戦力不足かと」


 グランツの騎士団はグリフォンに乗って戦う事を目的としていた。ガイルの騎士団に比べて貴族の食いつきはものすごく強かった。ほとんどの貴族達が自分の子供をごぞって推薦した。


 ヘルトは小さい国のため、三男以下の子供は基本的に市井に下るしか無かった。それが一転、新たな騎士団で勇者が乗っていたとされるグリフォンになる部隊が新設されるのだから、貴族たちは何が何でも子供を入れようとした。


 レオンはグランツの報告を聞くと納得したように頷いてから答えた。


「分かった。今日中に全員出陣できるようにしといてくれないかな。あと、走っていった彼らも問題を起こさないように頼むよ」


「かしこまりました。それでは失礼します」


 グランツは膝をつき、一礼してから部屋を出ると、入れ替わるようにレイジが入ってきた。


「走ってた二人はなにしてんだ?」


 レイジは呆れた顔でガイル達が飛び出して行った方向に向かってだらけた腕で指を指した。


「さぁ、僕もさっぱりだよ」


 レイジの質問にレオンもお手上げだと言わんばかりに手を上げて笑った。呆れた顔をしたレイジは珍しくも真剣な顔つきになると、レオンも笑顔を崩して真剣な表情になった。


「帝国と王国が戦わずに撤退した」


「皇国は次負けたら終わりってことになるね」


 ルーデンス地方は三強国に囲まれているが今までは天然の防壁があった。大森林を挟んで帝国、大河を挟んで覇国、大山脈を挟んで王国があった。しかし、現在では覇国が大河を超えて侵攻している。


 覇国が皇国を倒せば、丸々ルーデンス地方を覇国が手に入れる。しかし、他の2カ国がそれを許すはずもなく、王国と帝国が温存した兵がすぐにルーデンス地方に雪崩れ込んでくる。


 そうなれば、現状の皇国では何一つ対応できず確実に滅ぶ。そして、ルーデンス地方は三強国同士の戦争が絶えずに行われるようになる。


 2人は話さずともそれは共通の認識であった。


「そういう事だ。だが、希望がないわけでもない。覇国の占領地域にはあちらこちらで反乱軍。鎮圧または抑えるからこっちの決戦での兵は必然的に少なくなるだろうな。あと、こっちには使う時のなかったゴーレム( あれ )もある」


「あの時に帝国がすぐ撤退しちゃったから、使う必要が無いしね。聞いた感じだと帝国の新兵器とは相性が最悪みたいだしね」




「ああ、お陰であのジジイは『俺の睡眠時間を返せ。もっと人よこせ。てか、この前送るとか言っといて、まだ1人も来てないんだが』とか文句言ってたぞ」


 レイジは気だるそうに頷くと、机の上に座って、デザートトレイに乗っている菓子を食べていた。


「まぁまぁ、彼も大変なんだよ。それより、話の続きはカインがいないとね」


「ああ、そうだな」


 レオンは話を戻してゆっくりと立ち上がって、いつもより早く歩きながら部屋の外へ出て歩いた。


 レイジはレオンが出てしばらく経つと、テーブルから降りてゆっくりと歩いて行った。




「カイン。悪いな遅れた」


 レイジがノックもせずに、カインの執務室へ入るとカインは書類に判を押していた。


「ああ、今ちょうどこっちも片付いた所だ」


 レイジが驚いた顔でカインを見た後に近寄って、カインが判を押した紙を見た。


「お前、仕事してたんだな」


「お前だけには言われたくないな」


 レイジが感心した顔でいるのに対して、カインが物言いたげな目で睨み返した。


「そんなことより、反乱軍はあとどれくらい持ちそうだ?」


 カインの質問にレオンがルーデンス地方の地図を広げ、レイジが白と黒に分かれた駒を置き始めた。


「報告を聞いた感じだと、あとは持っても、一ヶ月くらいだな」


「まぁ、反乱軍って言われてるけど、ほぼホエイだけどね」


 降伏したエルナーは、内通していたにもかかわらず君主の一族が全員打首となった。理由は人族の血がある者を貴族にできないという覇国からの待遇に抗議したからだった。


 マドナの君主は死に子供は皇国に亡命したため、何事もなく併合された。覇国はその後、二カ国の貴族から全財産と領土を没収した。


 占領されたマドナとエルナーだが、各地の貴族たちが覇国の強硬な態度に反発した。そして、盟主としてホエイを担ぎ上げて覇国に対して反旗を翻した。


「まぁ、夜襲、補給路攻撃、大軍からは逃げるこんな事してたら、流石に国とは言い張れないよな。まぁ、嬉しいことにルーデンス地方に住んでる北西の部族が南下して大暴れてるからな。覇国もそれなりに手が回ってないだろう」


 ホエイがまともに戦って勝てるわけがないため、レイジは頼ってきたホエイに散発的な戦闘をするように指示した。現在、反乱軍は昼夜問わずに攻撃して、すぐに撤退するのを繰り返している。


 そして、ルーデンス地方の北西にある部族もここぞとばかりに、周囲の村を襲っていた。覇国はその対応にも追われていた。


「そのおかげで僕たちは覇国はすぐにこっちには来れなかったから、体勢を整える時間ができた。でも、あの部族はそろそろ冬だから山に帰るだろうね」


「何しろ、ホエイがもう持たねぇぞ」


 二人が現場について語った後、同時にカインに笑いかけた。


「「さぁ、どうするんだ?」」


 二人の息ぴったりの問いかけに息を呑んだが、すぐに笑って返した。


「決まってるだろ、行くぞ。この世界に魅せてやるぞ。勇者の末裔カイン・ヘルトここにありってな」


 カインは椅子から立ち上がると、力強い足取りでゆっくりと歩き部屋の外へ出た。


 ヘルト歴366年、カイン率いる皇国軍がルーデンス地方の西に向けて進軍開始した。

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