第64話
「皇王陛下。これは何処に向かってるんですか?」
カールは軽い足取りで歩きながら北へと向かっていた。後ろで、ヴァイスはおぼつかない足取りで地面に杖をつきながら歩いていた。
「原初の森に行くんだよ」
先頭にいるフードを被ったカインはカールに目の前に見えて来た大森林に向かって指を指した。
カイン達は馬車でリードまで到着するとそこで降りると徒歩で原初の森へと向かっていた。
「なぜ、徒歩で、向かって、いるん、ですか?」
ヴァイスは息を切らせながら、質問をした。
常に体を鍛えている二人とは違いヴァイスは体を鍛えたことがない為、息を切らせていた。
「じきにわかるさ」
カインは二人から常に疑問を投げかけられていたと笑いながら答えをはぐらかしていた。カールとヴァイスは二人顔を見合わせた後に、黙ってカインの後を追った。
カイン達は原初の森に着くと、日は沈みかけていた。
「カイン様。何故、今回の戦勝会議でわたしを罰さなかったのですか」
ヴァイスは野営の準備をするカインを見て、すぐに休憩を辞めて、テントを貼り始めた。
「敗北が作戦立案の功績で相殺されただけだ」
カインはヴァイスの質問に向かって、淡々と答えた。カインはヴァイスの気にしている事を理解していたがそれに関しては口にしなかった。
「………」
ヴァイスはカインの淡々とした反応とカインのそれ以上は話すなという目を見て、それ以降は何も聞き出さなかった。
「皇王陛下。デモール
次の日になるとカイン達は火が昇る前に原初の森に入った。
「カイン様、これ以上奥はグリフォンの縄張りです。グリフォンは獰猛で侵入者を見かければすぐに襲いかかってきますよ」
カールはこれ以上奥に行こうとするカインに警告をした。カインは不敵な笑みをカール達に向けた。
「ああ、もう俺のやる事はお前らも大体わかってるだろ」
カイン達は歩くスピードを上げて、さらに森の深くまで入ろうとした時、鈍い音で羽ばたく音が近づいてきた。
「来たか」
カインは高くからカイン達を睨んでいるグリフォンを見ながら笑った。カールはすぐにカインを守るように前に出た。
グリフォンは徐々に集まりだし、段々とカインを取り囲んだ。
カインは簡単にカールの前に出ると、力強い足取りで前へと進んだ。
「お前ら、これから起こる事をしっかりと目に焼き付けておけ」
カインは後ろに振り向き笑うと、そのまま腰の聖剣を手に取り出し掲げた。聖剣は眩く光出した。
そして、ヴァイスとカールは目の前で起こったことに、驚いて口が塞がらなかった。
先ほどまでカイン達を警戒していたグリフォン達は飛んでいるものは飛ぶのをやめて、全てのグリフォンがカインに向かって平伏した。
ヴァイスは胸から一つの本を取り出すと本とカインを交互に見て、目に涙を浮かべていた。
「これは、………」
聖剣を掲げているカインに他のグリフォンより一際大きいグリフォンがカインの横に座ると、カインはすぐにグリフォンに跨った。
カインは嬉しそうにグリフォンに跨ると、グリフォン達は一斉に空に飛んだ。
カインがブレイブ城の方に聖剣を傾けると、グリフォン達はカインが示す方角へと飛んでいった。
「「えっ!?」」
その場に残されたカールとヴァイスは互いの顔を見て、とぼけた声を出した。
そして、彼らはしばらくグリフォン達が飛んで行った方角を眺めていた。
銀色の仮面をつけた人物が中央にレッドカーペットが敷き詰められた廊下に足音を立てずに歩いていた。さまざまな装飾が施された大きな扉を開けた。
「絶影か」
謁見の間の奥の椅子に座っている老人は低い声で反応した。そして、二人の男性が上段にいる老人を挟むように下段で膝をついていた。
「皇帝陛下に第一皇子と第二皇子殿もお久しぶりです」
絶影は椅子に座っている人物と平伏している二人に頭を下げた。
「ああ、二人とも楽にして良いぞ」
椅子に座っている皇帝は平伏している二人に命令をすると二人はすぐに立ち上がった。
「絶影か。久しぶりだな。どうだ、やはり私に協力をしないか?」
右側に立っていた第二皇子と呼ばれた男が手を差し伸べながら、絶影に笑いかけた。第一皇子は絶影に軽く礼をするだけで終わった。
「私は皇帝陛下直属ですので、貴方が皇帝陛下になれば従いましょう」
絶影は第二皇子に頭を下げて断ると、第二皇子は食い下がって要求をした。
「じゃあ、一つだけでも頼めないか?」
左側の第一皇子は何も言わずに絶影と第二皇子のやりとりを見ていた。
「ペルダン黙れ。私直属の部下だ」
皇帝は第二皇子が食い下がる様子を見て威圧をした。
「も、申し訳ございません。皇帝陛下」
第二皇子のペルダン・アダマスは顔を青くしてすぐに膝をついた。
「ガニアン、王国の国境に集結している帝国軍とヤーデ選帝侯の軍の解散を伝えてこい」
第一皇子のガニアンは黙って頷くと、一礼してからその場を去ろうとするところに、ペルダンは通り過ぎるガニアンを睨んだが、ガルダンは気にすることもなくそのまま出て行った。
「はあー。ペルダン、お前も行け。私は絶影と話がある」
皇帝はため息をついて、ペルダンに向かって手を払った。
「かしこまりました」
ペルダンはトボトボと弱い足取りで、謁見の間を出て行った。皇帝はしばらく喋らずに黙って扉を見続けた。絶影は膝を突き、次の言葉を待った。
「絶影、ペルダンを殺せ」
皇帝は理由を述べることもなく、冷酷な声で淡々とと言い切った。
「………勅命承りました」
絶影は沈黙した後に、ゆっくりと膝をついて皇帝に頭を下げると、すぐにその部屋を出ていった。
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