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第60話

 皇国軍は森林火災を何とか防いだ後に、ブレイブ城へと帰還した。


 ほとんどの兵士は最初にレイジが指揮していた兵士だったため、勝ったというイメージが強く意気揚々に皇国軍は帰ってきた。


 しかし、帰還した皇国軍にとある人物がいない事を街の住人は疑問に思っていた。


「皇王陛下がいないぞ!」

「そんな……、ウォード将軍に続いて皇王陛下まで」


 意気揚々に帰る兵士とは対照的に民衆の間には不安の声に包まれた。そんな中、先頭を進むレイジはなんともいえない顔をしながら、ブレイブ城へと入城した。


 ルーナとメアリーが真っ先に皇国軍を迎えるとレイジの顔を見て、安心したが、隣にカインがいない事に気が付き、レイジに詰め寄った。


「お兄様、カインは?」


 ルーナはレイジにカインの居場所を聞いた。レイジは目を閉じて頭を抱えた。


「おい。もってこい」


 レイジは近くにいた兵士に指示を出すと、複数の兵士が大きな木箱を持って現れた。


 ルーナは顔を青くして、すぐに木箱に近寄り、蓋を開けて中を覗くと頭を押さえてその場に倒れ込んだ。


「おい。ルーナ、大丈夫か? 個室にこの木箱を運べ、そしてすぐにクラウス閣下をお呼びしろ」


 レイジは倒れ込んだルーナに駆け寄った。レイジは場所が悪いと判断し直ぐにルーナを抱えて個室へと移動した。


 レイジの招集にクラウスはケイレブと一緒にレイジの呼び出しに応えて部屋へと集まった。二人は泣いているルーナと木箱を見て答えた。


「レイジ殿、この箱はなんだ?」


 クラウスは木箱に指を指しながら、レイジの顔を見た。レイジはクラウスの落ち着きに驚いたが、すぐに気まずそうに答えた。


「えっと、………カインが入ってます」

「そうか」


 クラウスはレイジの声を聴くと残念そうな声で答えた。クラウスが箱を見る目は何か懐かしいものを見るかのような目をしていた。


「坊ちゃん。何故、こんなことに?」


 ケイレブはルーナとクラウスの様子を見て、レイジに質問を


「それが俺が森の中で葉巻吸おうとしたら、うっかり落として、森が大火事になって……」


 レイジは最後の言葉を詰まらせた。話を聞いたケイレブは目を大きく広げ、口を開け閉めしていた。先ほどまで伏せていたルーナが凍えるような目でレイジを睨みつけていた。


 レイジは顔を歪ませてゆっくりと後退りした。すると、レイジは後ろにある何かと衝突した。レイジはゆっくり振り向くとそこにはメアリーがいつもの笑顔で立っていた。


「これは訳があってな」

「そうですか。それはどんな訳かしっかりと聞かせてもらいましょう」


 メアリーはすぐにレイジの服を掴み、違う部屋に連れて行こうとしている最中に、クラウスが木箱の蓋をずらして、カインの顔を確認した。


「私は今まで隠していた。本当はお前は私の息子ではないと」


 クラウスの呟きにこの部屋にいた全員がクラウスを見た。そして、全員の注目が集まった時に木箱の蓋は部屋の隅に飛んでいき、箱から煤だらけのカインが飛び出すように顔を上げた。


「おいおいおい、父上が俺の父上じゃねぇってのはどういうことだ?」


 レイジはカインの行動に目をつぶって頭を押さえた。他の者は唖然とした顔でカインを見た。メアリーはすぐにレイジに向かって睨みつけた。


「話していただけますか」

「わ、わかった。話すから」


 メアリーの圧にレイジは屈してすぐに事情をその場にいるものに話すこととなった。




 森が火事になった時、カインとレイジはすぐに全兵士を集めて、消火活動を開始した。幸い、火はそこまで強くなく、すぐに鎮火することができた。


「おい、レイジお前のせいで煤だらけじゃねぇか。これじゃあ、負けたみたいじゃねぇか」


 カインはレイジを半目で見ながら身体中についた煤を落とそうとしたが、なかなか落ちないでいた。


「負けたんだよ。まったく、そもそもお前がアホみたいな事するからだ」


 レイジはカインの意味不明な抗議に呆れた顔で肩をすくめた。


「お前が来たからいいじゃねえか。問題ないだろ」


 カインは真面目な顔でレイジに言い放った。レイジはカインの開き直りに苛立ち、カインに向かって勢いよく指を指した後に頭をこづいた。


「まったく、自分の命を勝手に他人に委ねやがって、偉そうに言ってんじゃねえ。こっちは疲れるんだよ」

「何言ってんだよ。俺は王だ。だから、部下に俺の命を賭ける。それが王だろ?」


 カインはレイジのこづいた指を握りながら胸を張って答えた。レイジはカインの返答に吹き出して笑った。


「ああ、そうだな」


 カインとレイジはその後、しばらく沈黙し、レイジが懲りずに再び葉巻を懐から取り出して、一服し出した。


「あっ、いいこと思いついた。レイジ、協力しろ」

「却下だ。お前のそれは大抵碌なことにならん。仕事が増える」


 カインが大声で叫ぶとレイジはかいんを見た。カインの不適な笑みを見ると、すぐに嫌な予感を感じとり考えるままなくレイジは拒否した。


「そうか。ならこの前、机の上に置いてあったケーキを盗み食いしたのはクロじゃなくてレイジって教えてやるしかねえな」


 カインはレイジの胸をこづいて、首を傾げながらレイジの顔に近づけた。レイジはすぐにカインの顔を片手で追い払った。


「お前……、はぁー。わかったよ。めんどくさいのはやめろよ」

「安心しろ。きっと面白くなるさ」


 カインはイタズラを考えた子供のような顔をして笑った、レイジはそれを見て呆れた顔をしていたが、口元には笑みが溢れていた。




「ということだ。なっ、訳があるって言っただろ」


 レイジはすぐにメアリーに弁明したが、メアリーは表情を変えずにレイジの服を握り続けた。


「そうか」


 クラウスは一言だけ答えると、ケイレブと一緒に部屋の外へと歩いていった。


「父上!」


 部屋から出て行こうとするクラウスをカインは呼び止めた。クラウスはカインを見た後に首を振った。


「お前には先にやるべき事があるだろう」


 クラウスは呆然とした表情でカインをずっと見ているルーナを見た。そのあと、すぐに部屋を出ていったその時、クラウスの顔は笑っていた。


「あっ、悪かったなルーナ。その、驚かせたくて……」


 カインはクラウスの言葉に気付かされたように、ルーナに謝りながら手を握ろうとした。


「もう、お兄様も()()()()も知りません」

「待ってくれ」


 ルーナはカインの手を払い除けると、部屋の外に走っていった。カインはすぐにルーナの後を追いかけた。


「はぁー、言わんこっちゃない」


 レイジはため息をついて、カインに言い放つと、葉巻を吸い出した。


「何を人事みたいに言ってるんですか? レイジ様は少々、私とお話ししましょう。いろいろと話すことがありますので」


 メアリーは葉巻を奪った後に、レイジの服を引っ張って、部屋の外へと足をすすめた。


「俺は関係ないだろ? 脅されてたんだって」

「その内容についても気になりますねー」


 メアリーは楽しそうな声なのとは対照的に、レイジは悲痛な声を上げながら、部屋を出ていった。

 毎日投稿したいですが、なかなかできません。これからも登校できない日が多々あるとおもいます。

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