第59話
少し長くなってしまいました。
カイン率いる皇国軍はブレイブ城を目指して撤退していた。
「上空より覇国の空軍がこちらに迫っております」
カインは馬に跨りながら、決して聖剣を下ろすことなく、聖剣を掲げていた。
「皇王陛下! 今すぐ剣を下ろして我々の中団にお入りください。命がいくつあっても足りません」
一人の将がカインに向かって、忠言をした。しかし、カインは忠言したものに笑いかけた。
「安心しろ。俺にも考えがある。成功するかどうかは考えるまでもねぇ。確実だ」
カインは胸のペンダントを握りながら、自信満々に胸を張った。忠言した将は何かわからないが自信満々なカインの顔を見て、それ以降は何も言わなくなった。
カインに向かってグランコンドル隊が一斉に襲いかかった。今度は隣の兵士と緻密に連携をとり、カインに向かって突撃した。
「今度ばかしは厳しいかもな」
カインは迫り来るグランコンドル隊に向かって剣を振るうが今度は簡単に敵を撃ち落とすことはできず、カインは防戦一方となってしまった。
「皇王陛下を今すぐお守りしろ!」
副官の号令と共に馬に乗っている兵士と将は急いでカインの元に駆け寄り、グランコンドル隊との死闘を繰り広げた。最初は拮抗していたが、空から自由に攻撃のタイミング決めれるグランコンドル隊が次第に優勢になった。
カインの身体中に傷が増えていった。皇国軍の兵士の奮闘もあり、なんとかカインは殺されずにいた。
「皇王陛下! 覇国軍の地上部隊がこちらに迫ってきております」
カインは報告を聞いて、少し考えた後に足元を見て笑った。
「全力でこの場を切り抜ける。この光につづけ!」
カインは近くの森に向かって、敵の攻撃を無視し前方に向かって走り始めた。
皇国の兵士は全員、グランコンドル隊と戦うのを中断して全力で走り出した。グランコンドル隊は皇国の突然進路を変えて猛ダッシュした皇国軍に少し戸惑ったがすぐに追撃を開始した。
「おい。なんか追いつけねえ!」
「あいつらまだこんなに余力があったのかよ」
覇国の空軍は何故か距離を詰めることができない皇国軍の速度に驚いた。皇国軍はこれまでよりもさらに速く走っていた。誰もが森にたどり着けると思った時に、カインは突如として森に到着する前に止まり、聖剣の光も消えた。
あまりにも不自然な行動に敵味方問わずに、全員が止まった。そして、皇国軍はあまりの疲労にほとんどの兵士がなし崩しに崩れ始めた。
そんな中、一騎のグランコンドルが好機と判断して、沈黙の中カインに向かって突撃をした。乗り手がカインに向かって剣で切り付けようとした。
しかし、乗り手は不自然に地面に落ちた後、乗り手を失ったグランコンドルはカインによって切り伏せられた。
「まったく、遅えんじゃねぇか?」
カインはにやついた顔をしながら大声で叫び出した。森の中から数千の兵士が現れた。その先頭にはレイジ・シメオンが弓を持った手で頭を押さえていた。
カインがゆっくりとレイジの方に馬を進めると、倒れ込んでいた兵士は急に立ち上がり、森に向かって走り出した。
「助かった! 助かったー」
「俺たちは生き残った」
森に着くと走っていた兵士たちは先ほどまで疲労困憊していたとは思えないほど騒ぎ出し、互いに抱きしめたり、大声で叫び出した。
「さてどうする? これから俺とやりあうか!」
カインは聖剣を掲げると、聖剣は再び光だして、あたりを照らし始めた。
覇国軍から金色の立髪を靡かせた男が一人でゆっくりと前に出てきた。
「見事だカイン・ヘルトいや、皇王よ。見事な撤退だった。俺の名はリカルド・ボード、覇国の第一親王だ。やはり、勇者一族は人族の中でも格別。どうだ、ここは我と組み世界を取らないか?」
リカルドは大声でカインに向かって同盟の誘いをした。カインは考える間も無く即答した。
「断るね。お前の国は差別するからな」
カインの返答により、両軍の緊張は高まった。両軍の兵士は二人の号令を今か今かと待った。
「クックックッ。そうかそうか。今回、我々は撤退する。次に会う時は再び戦場だ。楽しみにしているぞ」
緊張状態の中リカルドは笑い出すとすぐに指示を飛ばした。リカルドの返事により、場の緊張感はなくなり覇国は直ぐに撤退を開始した。
「ああ、首を洗って待ってろ」
カインは大声で叫んだ後に、皇国軍もすぐに撤退を開始した。その時、リカルドとカインの顔は互いに笑っていた。そんなカインの小腹をレイジが肘でついた。
「うっ、なんだよ?」
カインはレイジを睨みつけるとレイジは呆れた顔で答えた。
「なんだよっじゃねえぞ! おい、カインてめえ、何が遅えだ! あんなに光りながら走りやがって、あんなん狙ってくださいって言ってるようなもんだろうが。仕事を増やすんじゃねえよ」
「悪い悪い。でも、俺を見つけやすかっただろ? お前が来ると思って目印になると思ってな」
カインはレイジに笑いながら謝ると、レイジの背中を叩いた。
「はあー。俺が来る保証はねえだろうが」
レイジはため息をついて、頭を掻きながら答えた。
「それはない。まず、レオンがお前に行けって言う。それを言われてお前は断らない。名推理だろ」
カインは指を振った後に、両腕を組んで得意げに鼻を膨らませた。
「全く、それより俺はお前の義兄だぞ? もっとな敬うとかさ」
カインはレイジの顔を見て、うっすら笑った。レイジはカインの笑みを見て嫌な予感を感じた。
「わかった。これから敬います。俺、義兄ちゃんのこと信じてるもん。だから、」
レイジはカインのわざとらしい敬い方に顔を顰めた後にカインの口を押さえた。
「それ以上言うな吐き気がする。はあー、」
レイジはカインから手を離して、懐から葉巻を取り出すした。残念そうな顔をしているカインをよそに、レイジは葉巻に火を灯して咥えようとすると、うっかりと手をすべらして葉巻を地面に落とした。
「「あっ、!!」」
火がついた葉巻を火種に森の草に火は燃え移り出した。
「おい。お前のせいだぞ」
「そもそも、ここで吸おうとしたお前が悪いだろ」
二人は責任のなすりつけあいをし始めた。しかし、火は次第に大きくなって二人は危機感を感じて、声を揃えて叫んだ。
「「てっ、喧嘩してる場合じゃねぇ」」
皇国軍はいきなりの出火に驚き動揺して、あたりを警戒し始めた。
「全員、消化しろ!」
「いそげ! 森がなくなるぞ。くそ、仕事が増えやがった」
二人は矢継ぎに指示を出して燃え広がる火を消化するために矢継ぎに指示を出していった。
覇国軍は覇国派の占領するため、撤退していると皇国軍が撤退した方向に火の手が上がっているのに気がついた。
「リカルド第一親王殿下、皇国軍の方から火の手が上がっております。これは好機ではないでしょうか」
ルブラがリカルドの馬に合わせると、リカルドに進言をした。リカルドは少し考えた後に首を振った。
「確かに好機かもしれんだが、あいつの事だ。罠かもしれん。そもそも火の森に突っ込んだら我々の被害も馬鹿にならん」
ルブラは納得したように頷くと自分の馬が何か引っかかったため、確認すると地面に矢が刺さっていた。向きで森から飛んで来ていることがわかった。
「これは……矢? 何故、この向きで刺さってる?」
リカルドは地面に刺さってる矢を見た後に火の手が上がる森の方を見た。そして、リカルドは急に高笑いし始めた。
「クックック。なおさら、これは行けねえな」
リカルドは火事が起きている森を見て見ぬ振りして、そのまま撤退をした。




