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第55話

 カイン率いるヘルト軍は先に合流している覇国派の軍勢に合流した。


「ありがとうございます、皇王陛下。まさかご本人が自ら来るとは思ってもおりませんでした」


 マドナの君主で犬の獣人のツァール・マドナがやってきたカインに膝をついて感謝の言葉を述べた。それに連なってホエイとエルナーの君主も膝をついた。


「それで覇国はどこまで攻めてきている?」


 カインはすぐに状況の確認を求めた。ツァールは顔を伏せたまま答えた。


「このまま行けば明日の朝には会敵する予定です」

「そうか。なら、ひとまず作戦会議をするのだろう。さっそく行うぞ。会議の場所まで案内してくれ」


 カインは返事を聞くなりすぐに馬から降りて、マドナの案内で会議用のテントに向かった。


「それで我々の戦力はどのくらいだ」


 カインはすぐに一番奥の席に座ると、覇国派の君主達は手前の席に座っていった。


「我々の戦力はエルナーが4000、ホエイが5000、マドナは6000、皇国軍5000でございます。それにたいてい進行してきている兵力はおよそ4万から5万だそうです」


 カインは三カ国の国力と最大兵力を引き連れているのかどうかを確認して、素早く質問をした。


「エルナーは後、1000人は出せる筈だが、何故少ない?」


 カインはすぐに国力を考えて、エルナーに向けて威圧的に疑問を投げかけた。


「すみません。それが、北西の高原に住んでいる蛮族が最近、南下して略奪をしておりまして、その抑えとして兵士を割いている次第です」


 エルナーの君主、狐の獣人ウネグ・エルナーはいかにも申し訳ないと言わんばかりの顔をして謝罪をした。


「そうか。わかった」


 カインは大体予想していた返答を聞いてそれ以上追求はしなかった。


 ルーデンス地方の北西部には常に雪の積もっている高原がある。そこには少数の民族が住んでいる狩猟などをして生活しており、食糧難になると周辺の村や町を集団で襲い強奪をする。


 帝国や覇国では大規模山賊団と見做しており、一人を捕まえると国から正式に報酬が貰えるほどである。


「敵はおそらく我々に対して、空のグランコンドルと重装機動歩兵は使わないだろうな」


 カインは覇国が帝国への防衛として、固有軍と空軍は使わないと考えた。


「使われたら我々はなすすべもありません」

「その通りです。あの空軍に固有軍を使われたら、いくら皇国の援軍があっても赤子同然です」

「皇王陛下、使われたらどうするのですか?」


 3人は使われることを考えると敗北の二文字が頭にちらつき出した。


「しかし、使われる可能性もある。そのため、我々は森の中で軍を布陣する。ちょうど後ろにそれなりの森林があるはずだ。これで、相手の空の優位は無くなる」


 3人の君主は納得したように頷いた。その後、ホエイの君主、ドゴール・ホエイが手を挙げた。


「しかし、森の中では我々の連絡が取りにくいではありませんか」


 カインはドゴールの疑問に頷いた後に、腕を組み椅子にもたれかかって答えた。


「そこで三カ国は左、正面、右で戦線を構築して我々皇国軍は後ろで連絡の中継を行い、私の判断で危ない場所の救援をする。これで問題ないな」


 その場にいた他の3人は眉間に皺を寄せたが、渋々頷いた。この作戦で行けばヘルトに損害が全くなく、いつでも逃げ出せるということである。


 しかし、3人は援軍の5000である皇国軍が帰れば勝てることは確実にできないため、苦肉の決断であった。


「俺は森の後方に行き陣を張る。何か要件が有れば気軽に訪ねてきてくれ」

「「「わかりました」」」


 カインはテントの外に出るとすぐに軍を纏めて、森林の後ろへと移動した。


「カイン様、よろしかったのですか?」


 一人の大きな男がカインに向かって話しかけてきた。カインは振り向くと納得したような顔をした。


「ああ、ゴロスか。いいんだよ。今回は勝てると思ってない。そもそも俺一人で覇国に勝てるとは思わん。レオンかレイジ、それかウォードがいないと勝てないさ」


 カインは最初は笑っていたが最後の言葉で悲しそうな顔をした。ゴロスは気の利く言葉が見つからなかった。


「わかりました」


 ゴロスは一言だけ言って、後ろへと下がっていった。


 その後、カインは誰とも話すことなく森を進み、予定の場所に着くと野営の準備をした。皇国軍の野営の準備が完了した時にはすでに日は沈んでいた。






 皇国軍と覇国派の国々が合流した日の夜に覇国は休むことなく歩みを進めていた。


「もうすぐ、連合軍が野営しているところでございます」


 一人の兵士が馬に乗っているライオンの獣人の男に向かって話しかけた。


「そうか。このまま、夜襲を敢行する。それよりちゃんとカイン・ヘルトはいるんだろうな?」

「はい。そのようです」


 兵士の返答にライオンの獣人の男はまるで目の前に御馳走があるかのように舌舐めずりをした。


「リカルド第一親王殿下、決して侮らないでください」


 サイの獣人が隣で浮かれている覇王の嫡子であるリカルドを嗜めた。


「わかっているさ、ルブラ。だから、グランコンドルと重装機動歩兵を連れてきたんだ。さあ、獲物を狩るぞ」


 リカルドは後ろで控えている重装の鎧に包まれた兵士と大きな鳥に跨る兵士を見て大きな声を出して高笑いした。

 三強国がようやく全て登場です。明日には、三強国の固有軍と空軍をまとめて説明します。


 少し投稿が遅れてすみません。

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