第54話
今回は、ヘルトが帝国派に攻める時、帝国に亡命したローラとマルコの話です。
ある一台の馬車が原初の森にある帝国とルーデンス地方を結ぶ一本道を走っていた。
「マルコ、あとどのくらいで森を抜けられますか?」
馬車に乗っている赤ん坊を抱えた一人の女性は不安そうな顔をしながら御者に話しかけた。
「ローラ様、後二日ほどは森の中です。この森には野盗や山賊が多々おりますのでなるべく早く抜けれるようにします」
マルコは振り向き笑顔で答えた。は正面を見ると周囲を警戒し始めた。
「そうですか………」
ローラは不安げな顔をしながら抱きかかえている赤ん坊を見ると、赤ん坊はローラの顔を見て、無邪気に笑い出した。
ローラは赤ん坊の頭を撫でると、赤ん坊はさらに嬉しそうな顔をしてローラの顔に向かって手を伸ばした。ローラは伸ばされた手を握ろうとした瞬間に急に馬車が止まった。
ローラは急に止まったことにより体のバランスが崩れたが、自分の手にある赤ん坊は怪我をさせまいと抱きしめていた。
「マルコ?」
ローラは御者をしているマルコの方をみると、マルコは御者台に立って、腰にある剣を引き抜いていた。
「野盗の集団が現れました。大丈夫ですこの私が命に変えてもお守りいたします」
馬車に向かって走ってくる野盗の数が2人しかいなかった。しかし、二人の様子を見て疑問に感じた。
「おい。馬車だ。物品を盗むか?」
「馬鹿か? そんなことしてる暇があると思うな。そうだ。あの馬車を囮にして逃げるぞ」
一人の野盗が武器を構えようとするのに反応して、マルコも身構えたが、もう一人がが相方の武器を奪った。
「そうだな。運よければこいつらがやられて物品をそのままいただけるな」
野盗の二人は場所を交わすようにして、マルコの横を通り過ぎていった。
「まずい。後ろから乗り込むつもりだな」
マルコの反応は早く、すぐに振り返りローラの方へと駆け寄って馬車の後方から入ってくるであろう的に身構えた。
しかし、マルコの予想は外れて二人の野盗はそのまま道に沿って走り去っていった。マルコは走り去っていく二人の野盗を見てひとまず剣を鞘に収めた。
「助かったのですか?」
ローラはマルコに状況の確認をしたが、マルコも何が起こったのかをいまいち理解していなかった。
「ええ、おそらくは」
マルコは馬車の後ろに先程の野盗が帰ってきてないことを確認しようとた。馬車の上から馬が血を出しながら地面に転がり込んだ。
「なっ!」
マルコは衝撃的な出来事に腰を抜かしそうになったが、すぐに気を取り直して、御者台の方へと走った。
マルコは馬車に繋いでいた馬の代わりにグリフォンが馬車の前に立っているのを見て、腰を抜かした。
「マルコ! 大丈夫?」
ローラは赤ん坊を抱えてマルコへと駆け寄った。
「ええ、それよりも馬車から逃げましょう。このままでは死んでしまいます」
マルコは急いでローラの手を取り馬車の後ろから馬車の外に出た。マルコたちが外に出たと同時に馬車が凄まじい音を立てて崩れた。
「ローラ様、このままお逃げください。私があいつを足止めしますので」
マルコはローラの手を離すと、素早く剣を引き抜き、馬車の方へと身構えた。
「そんな必要は無い」
マルコはローラ以外の声が聞こえたことに驚き素早く振り向くとローラの隣に銀色の仮面にフードをした男が立っていた。
「なっ、何やつだ!?」
マルコはローラの元へと駆け寄り直ぐに二人の間に割って入った。
「俺の名は絶影だ。知らんわけないだろう」
絶影は腕を組みながら、マルコに向かって答えた。
「絶影……あの帝国の暗殺者!!」
マルコは驚きのあまり手に握っていた武器を落とした。絶影は気にすることなくグリフォンの方へと歩いていった。
「運が良かったな。俺はグリフォンと1度戦ってみたかった。そのついでに助けてやる」
絶影は片手を振りながら、堂々とグリフォンの方へと歩いていった。
「あっ、ありがとうございます」
マルコはすぐに頭を下げて大声で叫んだ。
「気にするな。俺はやりたい事をしてるまでだ」
絶影は腰にある短剣を構えてゆっくりとこちらに向かってきているグリフォンに身構えた。グリフォンは狙いを絶影へと定めると絶影に向かって全力疾走した。
絶影とグリフォンの牙がぶつかろうとした。その時に、マルコよりもさらに大きな声が響いた。
「うてぇっーーーーー」
その後に、爆音が多段に響き渡った。グリフォンはすぐさま空へと飛び上がり、そのまま空高く飛んでいった。
「よかったな。私のお陰で命拾いしたな絶影」
全身に鎧を纏ったフレイが貫射弓を担いで絶影の方を見ていた。
「はあー。貴様はことごとく俺の邪魔をするな」
絶影は頭を押さえながら、ため息をついた。
「なんだその言い草は。助けてもらったのに礼も言えないのか?」
フレイは首を振った後に、ゆっくりと絶影に近づき肩に手を置こうとした。
「俺は先に行く。貴様と話していると気が滅入りそうだ」
絶影はフレイの手を払い除けてゆっくりと後ろに下がった。後に、素早く走り去っていった。
「それに関しては私も同意見だ」
フレイはゆっくりと振り向き、倒れ込んでいるローラと震えているマルコの方を見た。
「それで、貴方たちはどこに行く予定だったんだ?」
「私の実家のモリス家に行こうと」
フレイの問いにローラが素性を明かすと、フレイは納得したように頷いた。
「ああ、モリス伯爵のとこか。帰り道だからついてくるといい」
フレイは聞き覚えのある人物の知人だと知りすぐに同行を提案した。
「「ありがとうございます」」
マルコとローラは一緒に頭を下げて感謝を示したが、フレイはすでに馬に乗り出発の準備を開始していたため、マルコとローラは慌てて荷馬車に乗った。
「グリフォンか。勇者、グリフォン、ヘルトまさかな。グリフォンは獰猛だ。人に懐くことは無いだろうな。しかし、考えておく必要はありそうだな」
フレイは壊れた馬車の方を見ながら、ヘルト皇国について考えた。その後、フレイ率いる帝国軍は順調に進み、原初の森を抜け出し帝国に帰還した。
すいません。昨日は投稿する前に寝てしまいました。ですので、本日は2話投稿する予定です。




