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第4話 襲撃①

「酷い目にあったぞ、レオン! 何で助けてくれなかったんだ?」


「僕まで叱られたら準備ができないからね。後、説得はできたのかい?」


「もちろんだ。この俺に出来ないことはない」


 カインは自信満々に胸を張りながら言った。レオンは嬉しそうなカインを見て剣を差し出した。


「じゃあ、ブルートを失墜させに行こう」


「嗚呼、国を荒らす害虫にはここで退場してもらおう」


 二人は子供の頃に使っていた城外への隠し通路を使って城の外に出ると、あらかじめ『大鷲の剣』に用意させておいた馬に乗った。日が沈み暗い夜の街から出てブルート公爵の領地へと向かった。


 そして数日経つとあらかじめ森で待機していた『大鷲の剣』と合流した。


「ガイル。待たせたな」


「おっ、来たか。いつでも行けるぞ」


「なら、すぐに行くぞ」


 今着いた二人が馬を乗り換えると、すぐにその場を発ち、目標の場所へと向かった。


 陽が落ちた暗い街道を進んでいると、前方から松明の光が見え始めた。


「森の中に入れ!」


 ガイルの号令とともに全員、馬を降りて茂みに隠れた。松明の光は段々と近付いてきた。そこには、統一された鎧を着る衛兵が50人ほどで馬車を護っていた。


「やっぱり、護衛に衛兵を出したな」


「これで屋敷の警護が手薄になるね」


「おい、もしかして屋敷を襲撃するのか?」


 ブルートの不正を暴くには3つの方法があった。一つ目は、取引現場を抑える。しかし、この方法は、ブルートが金で首都の衛兵を買収していることや、首都で騒ぎが確実に発生する。


 2つ目は、馬車で運ばれている現物を手にいること。しかし、これはそこまで強い証拠にはならないため、うやむやにされたり揉み消される可能性が高い。


 残るのはおそらく自分の屋敷で、大事に隠し持っている契約証または証拠を奪う事だ。この方法は、強い証拠にもなるが、その分、難易度とリスクがとてつもなく高い。


 カインは3つ目を実行することに選び事前に準備を重ねていた。その一つとして、噂を流していた。


  ブルートはいつも傭兵と衛兵を組み合わせて、馬車を護衛していた。そこで大鷲の剣に、誰かが傭兵に金を握らせて、密貿易の馬車を護衛中に襲撃するの計画しているという噂を流させた。

 この噂を聞いたブルートは慌てて傭兵に馬車の護衛を依頼しなくなり、衛兵だけで護衛するようになった。


 カイン達は自分の支持者が集まる会議ではあえて、馬車を襲撃することにより証拠を手に入れると言うことで、おそらくいる内通者に偽の情報を掴ませ、馬車の護衛を増やさせた。


  この二つの策により、屋敷を守る兵士は通常よりもかなり少ない人数となっていた。


「気にするなガイル。奴は屋敷を襲撃するわけがないと思っているから、おそらくほとんどの部下はこの馬車か会場の護衛に使っている。残りは大した戦力じゃない」


「ふん、俺たちに掛かれば私兵なんぞ余裕さ。まぁ、将来は将軍になる予定だからな、こんな所で失敗なんて出来ねぇな」


 驚いているガイルに、カインが言って聞かせたがガイルはその配慮に対して鼻を鳴らして余裕そうに答えた。


「二人とも、馬車は通り過ぎたよ」


 二人が小声で話している間に馬車が過ぎたことをレオンが伝えると急いでブルートの屋敷に向けて進み始めた。


「ここからは時間との勝負だ。あいつらが帰ってくる前に終わらせる」


「そうだね。でも、途中でバレないようにね」


「当たり前だ。俺たちがそんなヘマするわけないだろ」


 レオンが、バレないようにと指摘するとガイルは当たり前だと言わんばかりに胸を張った。




 ブルートの屋敷がある小規模な街アデプトに着くと、近くにあった森の中へと入った。小規模な街と言ってもヘルトの中では首都であるブレイブの次に人が住んでいる。


「作戦内容を話す」


 カインは全員を集めると作戦内容を話し始めた。


 作戦の内容は、まずは外壁がない街なので、普通に街に入る。その後、カインとレオンとガイルの3部隊に分かれる。

 まず、ガイルが陽動として正門を襲撃する。


 そこで敵の注意が正門に向いている間に裏門から少数部隊でカインとレオンが屋敷に侵入する。カインは契約書を探し、レオンは地下室で管理している奴隷を保護する。その後、援軍が来る前に離脱するという作戦だ。


「俺は陽動だな。別に正面突破できたらしていいんだな?」


「できたらな? 無理そうだったら、絶対にやるなよ。負けることは無いが被害が大きくなる。お前らにどれだけ金かけたと思ってるんだ。損害額が馬鹿にならん」


 ガイルが自分の力を見せつけるように腕をまくりながら、言ったが、カインは首を振った。


 カインが、しっかりダメだと言わなかった理由はガイルがダメだと言っても話を聞かないからだ。やる気を出しているガイルを遠目で見ているカインをレオンがこづいた。


「それよりも早く行こう。襲われたなかった馬車が異変に気づいて帰ってくるかもしれないよ」


「そうだな。よし行くぞ」


 カイン達は馬に乗り、ブルートの屋敷に向けて、真っ暗な街を駆け抜けた。

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