第46話
カウダ砦が王国軍の攻撃を受けている間にレイジ軍はオルド軍と対峙していた。ヘルト軍が6000に対してオルド軍は2000も満たない数だった。
ウォードの決死の突撃に恐れ慄き逃げ出した兵士など、戦死した兵士とオルド軍は崩壊寸前であった。
「あれがオルド軍か。数も少ないしボロボロだな」
ガイルはボロボロなオルド軍を見て、少し残念そうな顔をした。
「ガイル、頼みがある」
「おう。なんだ?」
レイジはガイルの肩を叩いた。ガイルは振り返りレイジの方を見た。
「ガイル、突撃したければ俺のところに直接来い」
ガイルは質問を聞いて、首を傾げて考え始めた。レイジは時間がかかると思い一服しようと葉巻を取り出すとガイルがレイジの方向を見た。
「わかった」
ガイルは笑顔で頷いた。レイジはガイルの返事を聞いたが、ガイルに疑惑の眼差しをむけた。そして、吸おうとしていた葉巻を懐にしまった。
「レイジ様! ウォード将軍が戦死いたしました」
兵士は蒼白な顔でレイジに向かって伝えた。
「それは本当か? あのジジイが?」
レイジはまず最初に自分の耳を疑った。レイジはウォードの事をそこまで好きでは無かったが実力はしっかりと理解していた。
「はい。ヴァイス様が敵の罠に引っかかり、形勢が悪くなったのをウォード将軍が殿として残り、敵陣に切り込んで……」
伝令をした兵士は少し悔しそうに泣きながら答えた。
ウォードの訓練は厳しかったがそのおかげで兵の死亡率が下がったため、兵士のほとんどはウォード将軍を慕っていた。
「そうか」
レイジは短く答えた。そして、そのまま今後について考え始めた。
そこにその場に居合わせていたグランツがレイジに声をかけた。
「レイジ殿、私はは行かなくて大丈夫ですか?」
「いや、こなくていい。ジジイが斬り込んだってことはそれなりに損害が出てるはずだ」
レイジは伝令から受けた報告を考えてウォードができる限り敵に損害を与えていると判断した。
「そうですか。わかりました」
グランツはレイジの解答を聞くとレイジに向かってにこやかに返事した。レイジはその顔を見て露骨に嫌な顔をした。
「それ違和感しか感じねぇからやめてくれか?」
「お断りします」
レイジの反応を見てレイジの顔はさらに明るくなり、元気に答えた。
「はぁー、好きにしやがれ」
レイジはため息をつきながら懐にしまってある葉巻を取り出した。
「そうさせていただきます」
レイジは葉巻を吸いながら、黙ってグランツの横を通り過ぎようとすると、グランツはレイジの肩をたたき耳元で囁いた。
「勝てよ」
レイジは止まることなく、手を上げて口から煙を出しなが歩き去っていった。
「ああ」
レイジは下手に動かずに、相手の出方を伺った。ウォードが打ち取られたということもあり、下手に動くと危険だと判断したからである。
レイジが周りの地形で伏兵が居そうな位置などを確認して、攻め方を考えていると、レイジの元に伝令が飛び込んできた。
「レイジ様、オルド軍が我が軍に向かって直進しております」
「はぁーーー!?」
レイジは伝令の報告を聞いて、大きな声を上げた。
敵は数が少ないため、伏兵などを使用して、人数差を埋める必要があるのに何も考えていないかのような突撃は無謀であることが明らかであった。
「なにが目的だ? ここはひらけた場所だから伏兵とかも出来ねぇぞ」
レイジは伏兵など活用のしにくい場所で構えていたため、敵が攻めてくるのに伏兵は使用できないと考えていた。
レイジが考えているとガイルが装備を着込んだ状態でレイジの前に現れた。
「突撃する」
ガイルはそれだけを言い残して、振り返りすぐに去ろうとすると、レイジが慌ててガイルの肩を掴んだ。
「わかった。ちょっと待て。用事がある」
「なんだ?」
ガイルは少しめんどくさそうな顔をして、レイジの方を見た。
「オルドの当主は生捕にしろ。殺すなよ」
レイジはガイルに指を刺して命令した。ガイルはしばらく反応しなかった。
「わかった。殺すのは俺にさせろよ」
ガイルはレイジに鋭い目つきでレイジを見ないで答えた。レイジはガイルの顔を見て驚いた。
「ああ、わかった」
ガイルはすぐに踵を返して、すぐにその場を去っていった。
オルド軍はウォードの突撃により多大な損害を受けており、兵士は先ほどの戦いで勝ったという実感が無かった。
ヘルト軍を退けたとはいえ、損害は同じくらいまたはそれ以上だった。
「あの将軍は怖かったが、カッコよかった。どうせ死ぬならばあのような華のある死に方をしたい」
ライター・オルドはウォードに恐怖を感じた。しかし、自軍の現状を考えるとこのままでは勝てないことは明らかであった。
彼はウォードの武に魅せられていた。負けると分かっていながら死ぬとわかっていながら覚悟を決めたあの将軍に敬意を表していた。
「ならば、私もかの御仁のように」
ライターは普段ならば考えないような事を恐怖、諦め、魅了、さまざまな精神状態により、思考が低下していた。
「そうだ。そうしよう。私も死ぬ覚悟はできている。妻と子は逃した。私に心残りはない。そうだ、きっとできるはずだ」
ライターの目は狂気に染まっていた。ほとんどの臣下は先ほどの戦いでライターを守るために死ぬか、逃亡していた。
ライターに意見を言う物はすでに誰もいなかった。
「さあ、皆のもの。我々は絶望的だ。しかし、敵のかの将軍は少数でも我々を追い詰めた。ならば、我々にもできるはずだ。狙うは敵将の首! この私に続け」
こうして、オルド軍の突撃が始まった。




