第45話
「ヘルト軍が来ればなんとか追い払えそうだが、ヘルト軍が来る前に落ちそうだな」
レイモンドは一筋の光が見えたとはいえ、その光に繋がるまでが一番大変だと言うことはわかっていた。
「下手すれば今日中に城が落ちるぞ、壁が一つになるとペガサス隊が近寄らないように牽制が出来なくなる。そうなると第五城壁が最後の壁と考えるべきだな」
レイモンドは現状を考えて、次に壁が落とされれば、空に対抗する事が出来ない。
「くそ、あの騎士がまた門を壊しに来たらもう一貫の終わりだな。それより、なんで来ないんだ? まず近衛騎士団が破城槌をついてる奴しか見当たらない」
レイモンドはふと最初の騎士の事を思い出した。あの勢いで行けば三つ目の門も壊せたことは容易に想像できた。しかし、何故か壊さなかった。
レイモンドは王国軍を睨み付けたが、白銀に彩られた部隊がいない事をすぐにわかった。
「おかしい。あの騎士団が攻撃してこないのは、なんか訳があるんじゃないのか?」
レイモンドは近衛騎士団の攻撃が無いことを急に不思議に思い悩み始めた。
「今はいつもより攻撃の手を緩めたので他ごとを考える事ができるでしょう。そこで、おそらく、近衛騎士団がいない事に気がつく。そして、私に何か策があるのではないかと疑い始まるでしょう」
ドリューはカウダ砦を観ながら、眼鏡を弄っていた。
「まぁ予想はしていましたが、帝国が国境に兵士をさらに集めてるそうなので、念のため本国に戻しただけですしね。あと、今回敵の将は想定より有能なので気づくかもしれませんね」
ドリューはトリスタンが悪態を吐きながら、帰ろうとしないのを説得するのを思い出して少しだけため息をこぼした。
そして、今回の敵の将についてある程度戦いそれなりに実力を認めていた。
「帝国が来れば、ここを落としても意味が無くなってしまいますね。我々もすぐに戻らないといけないので少し急がないといけませんね」
ドリューは軽くカウダ砦を見ながら、国境付近に集まる帝国軍の侵攻に備えなければいけなかった。
そのため、王国軍はここを落とすとすぐに戻らないといけないため、時間が限られていた。
「期限は5日ほど、第二元帥がうるさそうですが、落とせなければ諦めて帰るしかありませんね」
ドリューは自分に時間がないことを知りながらも焦らずにじっくりと攻城を開始した。
「ちっ、予想はしてたが三日も耐えれねぇ気がしてきたな。近衛騎士団について考えるのはやめだ。どうせ出てきたらなんもできねぇしな」
レイモンドは第六城壁から第五城壁へと移動をしていた。レイモンドもこの三日が正念場であることを理解していたため、前線に行き陣頭指揮をとっていた。
そして、先ほどまで考えていた騎士団について考えるのをすぐにやめた。
カウダ砦は城壁が連なっており、奥に行けば奥に行くほど大規模な攻勢を仕掛けづらいため、後退すればするほど守りが強固になっている。
レイモンドは城壁を登ろうとしている敵に石を投げつけながら、上にいるペガサス騎士団の動向を確認していた。
「くそ。こっちから攻撃できないのをいいことに、悠々と空を飛びやがって」
ペガサス騎士団はこちらの反撃ができない高度まで上がって弓を打ち下ろしているため、レイモンド達は一方的に攻撃されている。
しかし、敵からは遠いため狙いをつけることは難しく、おまけに大楯をあてに向けて構えているため被害はそこまで出ていなかった。
「しかし、目の前の城壁から、空中から地上から三方向から矢が飛んでくるのは流石に厳しいな。もはや、ハシゴの近くで槍とか石を構えるのでやっとだな」
敵の攻撃がそこらじゅうから飛んでくるため、兵士は限界を迎えていた。レイモンドは忌々しく飛んでいるペガサス騎士団を見ていた。
「こうなったら一か八かでやるしかねぇな。目障りなんだよ、鳥野郎ども落ちやがれ!」
レイモンドは大楯から体を出して上空に向かって、槍を投げた。騎士団はレイモンドの行動に驚いたが一斉に矢の雨をレイモンドに浴びさせた。
投げた槍は空を駆け上がり、一頭のペガサスに突き刺さり、ペガサスと騎士は真下に向かって急降下した。
この瞬間を目撃したカウダ砦の兵士は手を叩いて拍手が巻き起こった。しかし、その拍手はすぐに静まった。それはレイモンドが矢ダルマになっていたからだった。
「なっ、レイモンド様をお守りしろ!」
複数の兵士がすぐに大楯を構えてレイモンドの元へと駆け寄った。
「レイモンド様! ご無事ですか?」
駆け寄った兵士たちはレイモンドの肩を担いで屋根のある場所までレイモンドを連れて行った。
「ああ、なんとかな」
レイモンドは身体中のあらゆるところから血が溢れていた。頭を塞ぐために腕で防御したため、自由落下の影響で威力が増したことにより、腕に刺さった矢はほとんど貫通していた。
「ですが、身体中から血が溢れ出ています。ここはお下がりください」
「いや、ここで治療を受けながら、陣頭指揮を執る」
レイモンドは大量の傷を負いながらも、その眼光は力強かった。
「………わかりました。軍医を連れてきます。後、椅子も必要ですね」
兵士達はレイモンドの気迫に押されて、何もいうことなく承諾した。
そして、レイモンドは立ち上がり大声で叫んだ。
「貴様ら聞け! このレイモンドがいる限りこの砦が落ちることはないと思え!」
カウダ砦の兵士はレイモンドの覚悟に震え上がり、声を上げてレイモンドの勇姿を讃えた。
「俺は援軍が来るまでここを一歩も引かんぞ」
レイモンドは王国軍を睨みながら、小さく呟いた。
日にちを超えてしまいました。すみません。




