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第38話

 レイジ率いるヘルト軍はルード軍を破った後に、首都のリードを占拠した。レイジはガイルとグランツとその他の将を呼んで会議を開いていた。


「作戦通り全軍はこのまますぐにオルドへと向かう。しかし、ルードを完全に掌握はできていない。だから、制圧と治安維持用にある程度部隊を残さなきゃいけない。俺が残る……」


 レイジはリードを占拠したがルード全体を制圧したわけではない。そのため、ルードを平定するにはある程度の軍が必要であった。


 レイジは本音をこぼしたが、グランツが冷たい目をして、ほかの将は困惑の顔を浮かべていた。ガイルだけは呆けた顔で首を傾げていた。


「……わけにもいかないからな。そうだな、グランツお前が適任だな。今回の戦いで功績を上げたから、十分であろう」


 レイジはあたりを見渡した後に、今回1番の功績を上げたグランツを見つけて、ちょうどいいと頷いた。


 グランツの功績はシュマンの首を取っただけでなく、ヘルト軍は損害を軽微に抑えられたと言う功績もある。


「さすがはレイジ様、素晴らしいご提案です」

「グランツ殿、これ以降は我々にお任せください」


 他の将達はこれ以上、功績を取られてなるものかという考えからレイジの発言に次々と賛同した。


 レイジが今回連れてきたのはグランツとガイル以外は、自分に取り入ってきた者だけをさいようしていた。そのため、全員功績が欲しい為、一番活躍しそうなものを前線から下げたかったのである。


「わかりました。その任務責任を持って承りましょう」


 グランツは場の雰囲気を感じ取り、速やかに応じた。しかし、応じた後にガイルを心配そうな顔で見るとガイルは笑顔で親指を立てた。グランツはガイルの反応に余計に気が重くなった。


 その後、レイジはすぐにグランツと部隊を分けて、オルドへと向かおうとすると、グランツに呼び止められてた。


「どうしたグランツ?」

「お前な。一応、俺たちは旧知の中かもしれないが立場は考えろ」


 レイジとグランツは王国派として昔までは対等な関係だったが、レビの戦いで立場が変わってしまった。レイジはそれでも対応を変えなかったが、他人の目がある時、グランツは敬語で話すようになった。


「そんな小言言いに来たのか?」


 レイジはあたりを見回した後に、気だるそうに答えた。グランツはため息が出そうになったが堪えて真剣な顔でレイジを見た。


「違う。それよりも、ガイルから目を離すなよ。あいつは話を聞く俺の親父だと考えておけ。すぐに敵に突っ込む手綱はしっかり握れよ」


 グランツは真剣な表情でレイジに向かって諭した。レイジはグランツの言葉を聞いて、指示を出す前に疲れていたグランツを思い出して、納得した顔でグランツを見た。


「あー、気をつけるよ」

「頼んだぞ」


 グランツはレイジに頭を下げた。レイジはグランツの行動に目を疑ったがそのあとほおが緩んだ。


「わかったよ。あいつの事は任しとけ」


 レイジは頭を下げているグランツの肩を叩いた。そして、その場を後にしようとすると、伝令が走ってきた。


「伝令!! 伝令です!!」


 レイジは笑っていた顔を引き締めた。そして、自分の気持ちを落ち着けて伝令の報告を聞いた。




 数日前、ヴァイス軍はオルドに向けて進軍をしていた。


「ウォード将軍、父上はそれでなんと言ったのですか?」

「はっはっはっ。静かにしろって叫んだんじゃよ。お主の父はそれそれは落ち着いた人であったよ。いつも彼らの暴走を二人で止めていたものさ」


 ヴァイスはウォードに昔の父について質問攻めをしていた。ウォードはそれを感傷に浸りながら答えていた。


 しかし、話をしている間もヴァイスは少しだけ不安な表情をしていた。


「彼ら?」

「それは、レオン殿の父と……」


 ヴァイスの質問に、ウォードが二人目の人物の名前を言おうとしたときに、伝令が走ってきた。


「報告です。これより少し先に敵軍がおります」


 ヴァイスはウォードの方を見たが、ウォードはヴァイスを見返した。そして、ヴァイスが戸惑っていると、ウォードがヴァイスに耳打ちをした。


「ヴァイス、あなたが大将ですよ。あなたの声でお応えしてください」


 ヴァイスは自分が今回の大将であることを思い出して、すぐに慌てて返事をした。


「わ、わかった。下がっていいぞ」


 ヴァイスが声を出して、命令を出すとウォードは満足そうに頷いた。


「急いでテントを設営しろ」


 ヴァイス軍は敵が遠くに見えるなかで進軍をやめて陣を張った。そして、数日間、ヴァイス軍は敵を目前にして動かなくなった。

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