第31話
読者様、評価にブックマーク、本当にありがとうございます。
今回とあと一、二話はクルトとクロの暗躍についてです。
暗い夜の町を、必死に走る一人の影があった。
その背後では、松明を掲げた集団が一斉に追走している。揺れる炎が連なり、まるで一つの巨大な生き物が蠢いているかのようだった。
「おい、あっちだ!」
「逃がすな!」
「囲め!」
ルード王国の首都リード。
クルトは街の自警団に追われ、路地から路地へと逃げ回っていた。
「どうしてこうなったんだよぉ……!」
走りながら、クルトは必死に考える。
「いや、違う。そもそもだ……こんな命令、受けるんじゃなかった……! 助けてくれ、センパーイ……!」
◆ ◆ ◆
――数日前。
クルトはカール、グラズガと共に、ウォード将軍の訓練を受けていた。
「はぁ……今日もきついな、ウォード将軍の訓練……」
息を切らしながらも、兵たちは課された訓練を黙々とこなしている。
「あー……ここから抜け出せる、いい口実でもねぇかな……」
連日の訓練で、クルトは肉体的にも精神的にも限界に近かった。特に精神面を削ってくるのが、隣にいる二人である。
「そんなこと言うなよ。努力は必ず実を結ぶ」
「然り。日々精進あるのみだ」
カールとグラズガは生真面目そのものだった。雑談なら問題ないが、訓練中に少しでも手を抜こうものなら、熱のこもった説教が飛んでくる。
ある日、クルトは冗談半分で「気合を入れる方法」と称して殴り合いを提案した。
二人はそれを真に受け、今では正式な訓練メニューとして採用されている。
(冗談だったんだけどな……)
「なあ、お前ら。息抜きって言葉、知らないのか?」
「確かに最近は執務もあって休めてないな」
「筋トレの話か?」
朗らかなカールと、真顔のグラズガ。
クルトは頭を抱えた。
「クルト! 来い!」
訓練場に、ウォードの野太い声が響いた。
クルトはびくりと肩を震わせ、そちらを見る。
ウォードの隣には、クロが控えて立っていた。
「また何かやらかしたのか?」
「…………ご武運を」
カールとグラズガは、哀れむような視線を向けてくる。周囲の兵士たちからも同情の気配が漂った。
クルトは唾を飲み込み、恐る恐る駆け寄った。
「えっと……何でしょうか?」
「貴様宛に、カイン様から直々の命令だ。今すぐ訓練を抜けろ」
「本当ですか!? わかりました、今すぐ行きます!」
クルトの表情は一気に明るくなった。
それを見て、ウォードの胸に嫌な予感が広がる。
「いいか、これは勅命だ。くれぐれも失敗するな」
厳しく念を押すが、
「はいはい。任しといてくださいよ。俺の優秀さが伝わったんすね。余裕ですって!」
完全に調子に乗っていた。
「……はぁ。もういい。あとはこいつの指示に従え」
ウォードは諦め、訓練に戻った。
「行くぞ」
クロが言うと、クルトは生き生きとついてくる。
「友達に挨拶してからでいいですよね?」
クロは無言で訓練場を出た。
慌ててクルトが追いかける。
「どこ行くんです?」
「敵国に潜入する。まずはリードだ」
「潜入!? かっけぇ……! 了解っす、先輩!」
クロは深いため息をついた。
「……人選ミスだろ」
小さく呟いたつもりだったが、猫の獣人であるクルトには聞こえていた。
「今、なんて言いました?」
「黙ってついて来い」
「ひどいなぁ。でも感謝してるんですよ? 地獄の訓練から救ってくれたんですから。これから同じ任務なんですし、仲良く――」
「頼むから、黙ってくれ」
こうしてクロは、延々と続くクルトのおしゃべりに付き合わされることになるのだった。
これからも時間は不定期ですが、毎日更新を心がけたいと思います。
おそらく、本日の19時ほどに新しく『レビの戦い』の記録みたいなのを投稿しようと思ってます。詳しい詳細は投稿したところに書きます。
この下にURLを貼っておきます。
https://ncode.syosetu.com/n2415hm/
※本日の19時以前だとエラーと出るので、あらかじめご了承ください。




