第29話
前回間違えて28話を27話と書いてしまいました。
訂正しておきました。申し訳ございません。
戴剣の儀が終わってから数日後。
ブレイブ城にて、帝国派諸国への対応を議題とした会議が開かれていた。
「帝国派の国々が、近く帝国の支援を受けて侵攻してくるらしい。
案のある者は発言せよ」
長方形の机の最奥にカインが座り、その左右にレオンとレイジが並ぶ。
さらにその隣に貴族たちが座し、背後にはガイルとグランツが護衛として控えていた。
「僕は、まず敵に攻めさせるべきだと思う。
その後に反撃し、軍を三つに分けて一気に占領する」
レオンが冷静に口を開いた。
「いや、俺は逆だ。
攻められる前に攻めるべきだ。帝国と唯一繋がるルードを先に制圧し、
支援を断った上で順に潰す方がいい」
レオンとレイジは、真っ向から異なる意見を示した。
貴族たちは互いの案を聞き、思案し始める。
「レイジ殿、それは危険では?
敵は必然的に連合軍となる。功績争いの中で連携に綻びが出たところを崩し、
そこから反撃する方が合理的かと」
レオンの隣に座っていたウォードが、即座に反論した。
あまりの即応に、貴族たちは驚きを隠せない。
「ウォード将軍。それも一理ありますが、
我々の領地を踏ませる必要はありません。
我々は強い。隙を突く必要などないのです」
今度はレイジの隣に座る男が声を上げた。
旧シメオンの有力貴族、ケイレブ・シュケムである。
想定以上の速度で議論が進み、貴族たちは焦り始めた。
やがて、我先にと意見が飛び交い始める。
机を挟み、激しい論争が巻き起こった。
――それこそが、カインたちの狙いだった。
――会議の数日前――
カインは執務室で、次の会議の席順をレオンとレイジに相談していた。
「会議では、俺を挟んで座れ。
その際、各自、信用できる者を一人隣に置け」
「なるほど。
噂になっている僕たちの対立を、事実のように見せるんだね」
「なら、意見も対立させる必要があるな」
二人はすぐに意図を理解した。
「僕の隣はウォードだ」
「俺は……爺やにするか」
「爺や? シメオンの貴族か?」
カインは首を傾げた。
「俺の教育係だよ。
こう見えて、昔は優等生だったんだぜ」
「嘘だろ」
「想像できないね」
二人の即答に、レイジは肩を落とす。
「本当だっての……。
その爺やがケイレブ・シュケムだ」
「ああ、なるほど」
レオンは納得したが、カインはまだ半信半疑だった。
「信用できるなら問題ない。
話す内容は個別に伝えろ。五人で話すと意味がない」
「了解」
「わかった」
――会議――
議論はさらに激しさを増し、やがて誹謗中傷に近いものへと変わっていった。
中立の意見は一切出ない。
――それも計算通りだった。
「そこまでだ」
カインの一声で、場は一瞬で静まり返った。
「反撃だろうと先制だろうと、
帝国派へ侵攻することに変わりはない」
カインは全員を見渡す。
「ルードのみの占領では、帝国が動く口実を残す。
だから最初から攻める。
ただし、軍を三つに分ける。将軍は後で伝える」
そう言って、レオンとレイジを呼び出した。
「ついてこい」
「了解」
「わかった」
会議は唐突に解散された。
その後、貴族たちは
ウォードを中心とする派閥と、
ケイレブを中心とする派閥に分かれていった。
ただ一人、無言で退出した者がいた。
◆ ◆ ◆
執務室では、メアリーが紅茶を用意して待っていた。
「お疲れ様です」
「おう」
「ありがとう」
「お前、たまには気が利くんだな」
次の瞬間、メアリーの視線が冷たく刺さる。
「……後で来てくださいね、レイジ殿」
レイジは無言で何度も頷いた。
「それで、指揮官は僕たち三人かい?」
「いや、俺は出陣しない」
二人は同時にカインを見た。
「え?」
「誰だお前」
「俺だって出たいが、
常に前線に出られるわけじゃない。
お前ら以外の指揮官の適性を見たいんだ」
「聖剣があれば帝国派程度、問題ないしな」
「……誰を選ぶ?」
「ウォードの予定だったが、
今日、面白そうなやつを見つけた」
カインは楽しそうに笑った。
レオンはやれやれと肩をすくめ、
レイジは仕事が増える予感に、深いため息をついた。
将来的な話ですが、 勇者外伝『英雄ハヤト』 と言うタイトルで初代勇者について書くつもりですが、いつ書けるかはわかりません。




