第28話
貫射弓の読み方書いていませんでした。
貫射弓 かんせききゅつ と読みます。
カインの執務室にて、カイン、レイジ、レオンの三人は帝国に関する情報を集めていた。
「帝国の新兵器、か……。
貫射弓の対処だけでも頭が痛いのに、そんなものを考える余裕なんてねぇよ」
カインは戦略図の駒を動かしながら、愚痴をこぼした。
レオンとレイジは書物を広げ、帝国の戦歴を調べている。
「でも、貫射弓を使ったのは覇国と王国だけみたいだよ」
レオンは資料を見比べながら、冷静に分析した。
「だろうな。今回も帝国本体は動かないはずだ。
選帝侯主導でやらせるつもりだろう」
「帝国にとっては“わざわざ出るほどの敵じゃない”って判断だね。
だから新兵器の試運転を選帝侯に任せたんだと思う」
「つまり、帝国が直接動く可能性は低いな」
二人の報告を聞き、カインは静かに笑った。
「そう考えりゃ、どうにかなりそうだな。
――出てこい、クロ」
「はいよ。なんだ?」
クロは天井から音もなく降りてきた。
「うわっ!」
レイジは思わず本を落とした。
「あー、レイジにはまだ紹介してなかったな。
諜報担当のクロだ」
「驚かせて悪いな。クロだ。よろしく」
「あ……ああ。レイジ・シメオンだ」
取り繕ってはいたが、明らかに動揺していた。
「それで、用件は?」
「手短に頼む。急いでるんだ」
落ち着きのない様子のクロを見て、カインは本題に入った。
「帝国が試作した新兵器があるらしい。それを確認してきてほしい」
「場所は?」
「帝国。おそらく選帝侯の一人、グリード・オパルスが持っている。
もしくは、帝国派の国にすでに渡っている可能性もある」
カインは地図の数か所を指した。
「この範囲を一人は無理だな。人手をくれ」
「じゃあクルトだ。あいつは人から話を引き出すのが得意だろ」
カインは命令書を書き始めた。
「捕まったら即バラしそうだが……まあいいか」
「これを見せれば借りられるはずだ」
クロは命令書を受け取った。
「ありがとよ。朗報を期待しとけ」
「頼んだぞ」
クロは窓から飛び出し、訓練所の方へ走っていった。
「よし。新兵器対策は一旦ここまでだ。
――次は、最近行ってない場所へ行くぞ」
「はいはい」
「了解」
◆ ◆ ◆
カインは目的の部屋の前に立つと、乱暴に扉を開けた。
中は薄暗く、机の上には温かそうなコーヒーが置かれている。
「おい、デモール。
あれは完成したか? 次の戦いで使わせてもらうぞ」
返事はない。
「……おかしいな」
「人材が足りんのじゃよ」
床下から、くぐもった声が聞こえた。
「うあっ!?」
驚いたカインの蹴りが、地面から這い出てきたデモールの腹に入った。
「ぐおっ!」
「なんだこの頭のおかしい爺いは」
「失礼な若造じゃな! 年寄りを労わらんか!」
レイジが冷たく言い放つ。
「お前みたいなのを労わる奴がどこにいる」
デモールは睨み返したが、レオンに起こされ椅子に座らされた。
「どうじゃ」
勝ち誇ったようにコーヒーを受け取るデモール。
レイジは呆れて葉巻を咥えた。
「人手なら、とりあえずカールを回す」
「おお、それは助かる」
デモールは嬉しそうに笑った。
「それで……成果は?」
「ああ。一体だけ複製した。
動力の円の意味は分からんが、同じことはできる」
デモールが視線を向ける先には、
古い兵器と並んで、完成したゴーレムが立っていた。
すでにカインは操縦席に乗っている。
「助かる。さっそく試すぞ」
「待て! ここで動かすな!」
ゴーレムは動き出した。
「すげぇ……。少し遅いが、貫射弓に対抗できる性能だ」
「こんなの作ってたのかよ……」
デモールとレオンは慌てて資料を守った。
「やめろ! 本と豆が!」
やがて、ゴーレムは停止した。
「……なんか、気力が吸われる。もう動かせん」
「気力……なるほど……!」
デモールは狂喜したようにメモを取り始めた。
「次は俺が――」
「出て行け!」
デモールは二人を摘まみ出した。
「まったく……とんでもない奴らじゃ」
「ごめんね。人員は増やすよ」
廊下では、レオンに背負われたカインが眠っていた。
「俺も乗りたかった」
「はいはい」
レオンは苦笑しながら執務室へ戻っていった。




