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第19話

 ムルドとナイーブは必死に馬を駆けさせ、敗走する自軍にようやく追いついた。


「ムルド様、ナイーブ様。

 残存兵はおよそ五百。ほとんどが散り散りに逃げ出しました。

 レビ軍に至っては五十名にも満たしません」


「……ムルドとレビで四千以上はいたはずだがな」


 ムルドはその報告を聞き、自分たちが完全に叩き潰された事実を改めて突きつけられた。

 一方、ナイーブは自分が逃げたという現実に苛立ち、終始無言でいた。


 ムルドはナイーブに声をかけることなく、追撃を警戒しながら残兵をまとめ、陣地へと急いだ。


「ムルド様、陣地が見えてきました。

 後方に追撃の気配はありません」


「助かった……。急いで入るぞ。休憩を取らせろ」


 レビ軍はほとんど走り続けて敗走しており、全員が満身創痍だった。


 ルベン軍も同様に、疲労は限界に近い。


「我はムルド・ルベンである。

 急いで開門せよ!」


 しかし、返答はなかった。


「……おかしい。どうした?」


「悪い悪い。俺だよ。

 レイジ・シメオンだ。今すぐ開ける」


「そうか……シメオン軍が到着していたか」


 ムルドは安堵した。

 だが――門が開いた瞬間、その安堵は絶望へと変わった。


 門の向こうには、武装を整えたシメオン軍が待ち構えていた。


「……これは、何の冗談だ? レイジ殿」


「冗談? 現実だよー。

 全軍、突撃だ〜」


 突如として降り注ぐ矢と、押し寄せる兵。

 疲弊し切った連合軍は対応できず、瞬く間に半数以上が斃れた。


「まずい! 体勢を立て直せ! クラック!」


「了解!」


 クラックとムルドの奮戦も虚しく、

 連合軍は気力に満ちたシメオン軍の波に飲み込まれていった。


「我が名はレオン・ブレイド。

 カイン・ヘルトの右腕だ。

 臆病者ナイーブ、出てこい。正々堂々、一騎討ちだ」


「き、貴様ぁぁっ!! 殺してやる!」


 ナイーブは完全に理性を失っていた。

 挑発に乗り、一直線にレオンへ突撃する。


 レオンも剣を構え、正面から駆け出した。


 二人はすれ違う。


 次の瞬間、

 ナイーブの首はすでに胴体から離れていた。


 遅れて、胴体が馬上から崩れ落ちる。


「このレオン・ブレイド、

 ナイーブ・レビを討ち取ったり!」


「ヒュー! やるねぇ!」


「「「うおおおっ!!」」」


 シメオン軍は歓声を上げ、

 レビ・ルベン連合軍は完全に戦意を喪失し、一斉に降伏した。


 ムルドは逃走を試みたが、レイジの矢に射抜かれ討ち取られた。


 クラックも混乱の中で、一般兵に斬られて果てた。


 こうして――

 カイン・ヘルトの初陣は、完全勝利で幕を閉じた。


「よし。ムルドとナイーブの首を取れ。

 捕虜は例のテントにまとめろ。

 ……早く寝たい。手早く済ませるぞ」


 事後処理は迅速に行われた。

 戦勝祝いに沸くヘルト軍とは対照的に、

 陣地内は静まり返っていた。


 夜半、

 レオンはヘルトの方角を見つめながら、一人酒を飲んでいた。


「どうした? こんな所で一人とは珍しいな」


 背後から、レイジが歩み寄る。


「こうして飲むとさ……

 カインと一緒に飲んでる気がしてね」


「寝るって言ってなかったか?」


「気が変わった」


「じゃあ、一緒に飲もう」


「そうさせてもらう」


 レイジはスキットルを受け取った。


「それじゃあ……」


 ◆ ◆ ◆  


 一方その頃――


「ウォード。ガイルたちの容体は?」


「命に別状はありません。

 ただしガイル殿は声が濁り、

 グランツ殿は左目を失いました」


「そうか……。カールたちは?」


「三人で祝杯を挙げております。

 もっとも、まだ勝利は確定しておりませんが」


「レオンが失敗するはずがない。

 今頃、終わってるさ」


 カインは笑い、酒を煽った。


「お前も飲め。戦勝祝いだ」


「では一杯だけ」


 ウォードはスキットルを受け取り、合図を待つ。


「いくぞ」


 ◆ ◆ ◆  


「「我らの勝利に――乾杯」」


「かんぱーい!」


「お喜び申し上げます」


 レオンとカインは、

 同じ夜、同じ勝利に、別々の場所で杯を掲げていた。


 互いの健闘を胸に秘めながら――

 隣にいる者へと、

 “いつも隣にいる友”の話を始めたのだった。

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