好きという感情
「嫌いに決まってんだろ?あんな何考えてるかわかんない女…」
勝也はため息をつき、占部の方を見る。
「あ〜やっぱり〜?」
「生き返えれるなら死んでもいいのかよ…」
占部はニヤニヤしながら勝也を見ているが、勝也の顔は曇っている。
「俺はな、能力の関係で人の好き嫌いについてずっと考えてるんやけどな」
占部の細い目が勝也の目を真っ直ぐに見つめる。
「人を好きか嫌いかで判断するって言うのは自己中やと思うねん。例えば、一緒におっておもろいから好き、つまんないから嫌い。助けてくれるから好き、嫌なことをしてくるから嫌いとかな」
占部は続ける。
「自分が判断しとると思わん?相手の考え方や今までの積み重ねも全部無視して」
「そういうもんだろ?」
勝也は占部の言葉に反応を返す。
「そういうもんやと思えばそういうもんで終わらせれるわな」
ニコッと笑う占部。そしてまた真剣な顔で勝也を見る。
「でも俺は違うと思うねんな〜、相手のことを100%理解する、相手の過去や考え方を噛みしめ、受け入れることが大切やと思うねん」
「どういうこと?」
「まあ難しいよな〜、言うてて俺も理解でけへんもん」
占部の発言にガッカリとする勝也とそれを見て爆笑している占部。
「好きっていう感情ほど複雑でおもろいもんはないで、俺は好きっていうものを問い詰めてこうと思うんや!!」
「フフ…」
思わず笑みを溢してしまう勝也。
「なんや勝也、こっちは真剣なんやで」
占部も照れ臭く笑みを溢している。
「応援してるぜ、占部!!」
「誠って呼べいうてるやろ、勝也!!」
初めて2人が笑顔で向かい合った瞬間だった。
「ハハ…アハハハハハハ」
2人の笑い声が部屋中に響き渡る。
「今やから言うけどな、実は、俺最初勝也のことクールでおもんないやつや思っててん」
「おいおい、酷いやっちゃな〜」
「なんで勝也が関西弁使うとるねん」
占部の関西弁を真似る勝也とそれに対してツッコミを入れる占部。
「やっぱ関西人以外の関西弁はしっくりこやん、今度俺が教えたるわ!!」
「お願いします。師匠!!」
すっかり友達として意気投合する勝也と占部、そこには先ほどまでのぎこちない雰囲気は感じられない。
「話は戻るけどな勝也」
また真剣な目に戻る占部。
「ようするに、俺が言いたいのはな勝也、人の一面だけみて好きか嫌いか判断するなよって話や、イブさんが何考えてるかわからんくて嫌いなら、まずは何考えてるか理解するところからや、それで理解できた時には……」
「理解できた時には?」
占部の言葉の続きを待つ勝也、その姿をマジマジと見つめニヤニヤしている占部。
「早く言えよ!!」
痺れを切らして勝也は占部にツッコミを入れる。
占部は勝也をビシッと指差す。
「その人のことをきっと好きになっとる」
勝也は黙って考えている。占部はそのまま話し続ける。
「だからな、勝也、イブさんをあの一瞬の出来事だけで判断するのじゃなくて徐々に判断していくんやで。イブさんにもイブさんの考えと事情があるはずやからな」
勝也は占部の言葉を深く噛みしめた。
「ありがとうな誠」
お礼を言った勝也、お礼を言われた占部……お互いが照れ臭そうにしている。
「ちなみにこれはイブさん以外にも言える話やからな」
「どういうこと?」
占部の言葉に素直に疑問を抱く勝也。
「学校のクラスメイトとか友達にも当てはまるってことや!!普通の青春楽しみたいんやろ?」
「誠…」
占部の言いたいことを完全に理解した勝也。その様子を占部は嬉しそうに見ている。
「人を嫌って切るより、人を好いていく方が断然楽しいからな!!」
「せっかくの人生エンジョイしようぜ!!」
占部が勝也に対して拳を差し出す。
「ああ!!」
勝也も占部に対し拳を差し出し、拳と拳がぶつかりあう。
―――コツン
「言いたいことはそれだけや、ほなな!!」
占部は拳を離し玄関へと歩いていく。
「ゆっくり寝るんやぞ〜勝也!!」
「おお、サンキューな!!」
背中を向けながら手をひらひらと振りながら占部は戸を開けでていった。
―――バタン
1人になった部屋に扉の閉じる音が大きく響き渡った。
「そう言えば、結局イブさんの話ってなんだったんだろう?」
勝也の独り言が静かになった部屋に響き渡り、勝也により孤独感が襲ってきた。