沈黙
脱ぎ捨てられた衣服、出しっぱなしの布団、見覚えのある勝也の部屋であった。
「は…はは…」
あまりの部屋の汚さに恥じらいを感じているのか、勝也の顔はリンゴのように真っ赤になっている。口からは乾いた笑い声しか出てこない。
「す、すぐに片付けます!!………ッ!?」
慌てて起き上がろうとする勝也だが、身体が痛く起き上がることすらままならない。
「清掃なら私がいたします」
慣れた物を見るような目で周囲を見渡し、一言そつ呟くと同時に手を叩く。
―――パァン
音が部屋に響くと同時に、散らかっていた衣服が消え、勝也は布団に横たわっていた。
「…えっと…ありがとうございます?」
勝也は完全に何が起こっているのか理解できず、とりあえずお礼を言った。
「まずは、勝也様に何があったのかを説明いたします」
「お願いします」
冷静に話を始めるイブとツバを飲む勝也。勝也の額には汗が滲んでいる。
「一昨日、勝也様はヒットマン白百合 麗華の手によって殺害されました」
「え……それってどういう…」
「ですがご安心ください、勝也様の身体は100%元通り修復いたしました」
「死んだってどういうことですか!!」
激昂する勝也、その息は荒れている。
「凄まじい回復力でしたよ勝也様、通常なら1ヶ月は寝込む所を3日で意識を取り戻し会話をできるのですから」
「舐めてんのか?」
重たい身体を無理矢理起こそうと布団を振り払うが、気力とは裏腹に身体はついてこない勝也。
「今は安静にしておいてください」
ソッと布団をかけ直すイブ。
「今、私たちは勝也様と敵対するつもりはありません、もし、無礼を働いていたのであれば謝罪いたします」
頭を地面につけ謝るイブ。その姿から気持ちは伝わってこない。
「もう……いいよ…帰ってくれ…」
勝也は背中をイブの方に向ける。
「帰ってしまうと命令違反になりますので返りません」
イブは地面に頭をつけたまま言葉を発する。
「女に土下座させるなんて酷いやつやな〜お前も」
関西弁が部屋の空気に響き渡る。
「思った通りな展開やで〜やっぱり来てよかったわ」
「占部……」
聞いたことのある声の方へ振り返る勝也。
「誠でええよ〜、タメなんやしさ〜」
ヘラヘラと笑みを浮かべながら勝也に近づく占部。
「誠……どうしてここに?」
「いや〜、2人のこと少しは知っとるやろ?絶対上手いこといかんと思って来ちゃったわ!!」
勝也に近づきながら占部はイブの方を見る。
「イブちゃんはもう帰り、ここでそんなことしててもなんも変わらんよ」
「しかし、占部様……」
「ええよええよ、上には俺が上手いこと言うとくから!!それに、こういうのは俺のが得意やろ?」
占部は指でグッジョブポーズを取りながらカッコつけている。
「それでは、お願いします……」
そう呟くとイブは勝也の方へ顔を向ける。
「本日は勝也様に対しての無礼、大変失礼致しました」
「もう、いいです」
勝也がそう言うとイブは両手で手を叩きどこかへ消えた。
「よっしゃ!!男同士水入らずで話し合おうか!!」
「……」
ペラペラと喋る占部に対し、沈黙する勝也。
「なんや〜暗いの〜」
それでも軽快に話し続ける占部。
「最初の話は、勝也!!お前、イブさんのこと好きか?」
「え?」
予想外の質問に戸惑いを隠せない勝也と、それをニヤニヤと見守る占部。