謎の男
ーーープルルルルル
学生服のポケットから電話が鳴り響いていた。
「んふふふ、ターゲットは始末したわよ」
殺しの高揚から上機嫌になっている。
「え...それって......」
手から携帯がこぼれ落ちる。
「お嬢さん...落とし物やで〜」
学校服の女は慌てて後ろを振り返る。
「へぇ〜…こんな可愛い子が殺し屋なんてな〜」
「!?」
男のセリフと共に女は後ろに距離を取りナイフを構える。
「そんな警戒しやんでや〜振られたみたいで悲しなるやん」
「私を見逃してくれるなら…今度デートしてあげても良いわよ?」
ヘラヘラとする男に対し臨戦体制を取り続ける女。
「一応聞いとくけど、白百合 麗華ちゃんで合ってるか?」
「………」
「無視かいな…まぁ…沈黙は金なり言うし正解ってことかな」
「そう言うあんたは何者なのよ?私、自己紹介もしない男とか無理なんですけど」
相変わらず空気はピリピリとしている。
「俺の名前はそうやな〜……大阪 太郎や!!」
「死ね!!」
名前を言い終わると同時にナイフが男の首元に向かっていた。
「聞いてきたんそっちやのに〜」
「!?」
首元に向かったはずのナイフの刃先は折れており、男には擦りもしていない。
「とりあえず、生きて連れ帰るって予定やし黙ってついてきてくれやんか?」
男は完全に舐めきったトーンで話しかける。
「誰が……あんたなんかに……」
「私が……私がいなくなれば…あの娘が…」
ナイフがなくなったため拳で殴りにいくが、女の拳は男には擦りもしない。
「あかんあかん……湿っぽいのは嫌いやねん」
突然女の頭の上に衝撃が走り、女は気絶する。
「ここまで言わせてもうたか……」
男は夕空にポツンと呟いた。そしてポケットから携帯電話を取り出し、耳に当てる。
ーープルル
「俺や、ちゃんと予定通り、終わったで」
「最上 勝也の死体と白百合 麗華の身柄はばっちし抑えたわ」
「早いところ迎え頼むわ〜、東京は大阪と違うてなんか苦手なんよ〜」
「おう、わかった、了解」
そう言うと男は電話をポケットにしまいため息をついた。
「関西弁やから名前聞かれた時に大阪 太郎って言うボケあんまなんかな〜」
1つの死体と2人の影が夕焼けに照らされていた。