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迷える猫は神を信じる 2

「さて……やっぱり私の言った通りじゃないか!依頼人が来た、さすが私だよ」


すごいですね〜等と適当に相槌を打ちながらムトウはコーヒーカップを片付ける。


「よくある迷い猫の依頼とはいえ依頼は依頼だ。早速調査に出かけようじゃないか、助手君?」


首を傾けて気取った声で放った言葉にムトウはキッチンでカップを洗いながら返す。


「早速って、社長も学校に行く時間でしょ。早くしないとまた遅刻ちゃいますよ?」

「なっ、久しぶりに依頼が来たんだし今日くらいいいじゃないか、公欠みたいなモノだよ」

「ダメです。以前は許しちゃってましたけど、前に出席日数が足りないって担任の先生に呼び出しくらったばかりでしょう」

「むぅ……で、でも!」

「でももだってもありませんよ、社長……いやコルちゃん、オヤジさんから頼まれているんですからキチンと行ってもらいますよ」

「……コルちゃん言うな……それにそれを言い出すのは卑怯だよ……」


そう、依頼人のツムグと同じくコルティも学校に行かなければならない。この国では、17歳の少女が学校に通うのはごく普通のことだ。


コルティは渋々という様子で奥の部屋に向かう。


「今から制服に着替えるから入ってくるんじゃないよ」

「入りませんよ、子供には興味ありませんから」

「なぬぅ、そう言われてしまうとなんだか悔しいじゃないか、もう子供じゃないのに……」


コルティが奥の部屋に入ったのを確認すると、ムトウは食パンをトースターにセットした。


チーンという音でトーストが吐き出されたのと同時に、コルティが部屋から出てきた。ムトウはサッとトーストにバターを塗る。

ツムグとほとんど同じ制服に身を包んだコルティがキッチンに向かう。


「はいどうぞ、ムトウ特製トーストですよ。そういえばさっきのツムグさんも同じ制服でしたけど学園内で会ったこととかなかったんですか?」

「特製って、ただバターを塗っただけじゃないかね……君がガン見していた彼女の胸に付いていたリボンの色を思い出したまえ、彼女のは青だったじゃないか。私は緑だよ。ただでさえ学生数の多いルビー女学園で彼女は下級生だ、わからないね」

「そうですか、社長って友達少なそうですもんね」


君は話を聞いていたのかねっとコルティが言い終える前にムトウはヘルメットを差し出した。


「……うむ、お願いするよ。それと別に私は友達がいないのではなく、敢えて作らないだけで……」


2人は階段を降りる。ムトウは喫茶店の横の路地に停めてあったスクーターのエンジンをかけた。

ムトウがハンドルにぶら下げてあった半ヘルを被って跨るとコルティもそれに続いて後ろにちょこんと座った。


ブロンブロンと今にも壊れそうな音をたてながら石畳を走る、そのせいで、2人は自然と大声で会話する。


「いつも思っているのだが何故私が頑丈なジェットで君がペラペラの半ヘルなのかね、暑苦しいから私も半ヘルにしたいのだが」

「ダメですよ、万が一って事もありますし、社長にはちゃんとしたヘルメットを被ってもらわないと、我が社の頭脳ですしね」

「そう言われると悪い気はしないが……それに君にヘルメットは必要ないかもしれないけど……」


君が心配だよと言う小さな声はエンジンの音にかき消された。


10分もかからずルビー女学園の正門の少し手前に停車する。女学園は城と見間違えるほど大きく厳かな雰囲気を漂わせる校舎を持ち、その正門も歴史を感じさせるがっしりとした、しかし優美な造りをしている。

もう始業も近づいていて、多くの女生徒が登校している。お嬢様学校ということもあり「ごきげんよう」などの挨拶も多く聞こえて来る。


「それでは私は授業を受けているから何時もの時間になったら迎えに来てくれ。そのまま捜索開始だよ、それまでに下調べをしておいてくれ」

「わかりましたよ、俺が昼過ぎ迄にバルちゃんを見つけるかもしれませんが」

「それは困る。あくまで下調べだ、バルちゃんを見つけちゃダメだよ」


えぇと言うムトウを意に介さずにコルティはヘルメットを手渡し登校する女生徒達の流れに加わる。

見つけちゃダメだからね〜という声とコルティは波の中に消えて見えなくなった。ムトウはエンジンをかける。


ムトウは依頼を開始する前にいつも行く場所にバイクを走らせた。

ムトウのスクーター

中古で購入した魔動式二輪スクーター。15年以上前の製品でかなりガタが来ている。

モデル ラビットスクーター

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