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プロローグ 何でこんなに物騒なんだ

僕は名乗らない男、と世間では呼ばれている。

世間で呼ばれていると言ったから、もしかしてあなた有名人かって? と思うかもしれないがそうではない。世間と言っても、僕は極端に狭小なものを世間と変換して言ってしまった。

はっきりと言う。さっき言った僕の世間は学校のクラスレベル。

それは、世界約72億人中のたった40人

という割合。分数で表すと1800万人に一人という明らかに少ない数になる。

そんな極僅かな範囲を世間と言ってしまった僕は今、普通に僕等のクラスとかクラスメイトとかで説明した方が分かりやすいだろうと思った。しかし、こう言ってしまえばもう遅い。話を続けよう。

僕が何故名乗らない男と呼ばれるかと言うと……僕には名前というものが無いからだ。

何故僕に名前が無いかは未だ分からない。

だが一つだけ分かっていることがある。

僕には元々名前はあった。

だがある日、何かが起きて僕は名前を失った。その何かが起きたというところに関しては全く知らない。

ていうか、知ってはいけないのだ。

知ったら僕の精神が……崩壊する。


現在、日本にて。

朝の日差しを身に浴びてすっかりと目が覚めてしまった僕は、リビングのちゃぶ台に置いていたリモコンを手に取り、電源スイッチを押す。

すると、黒い画面が一瞬にして赤青緑の光の集合体に変わった。今の時間帯ではどこもニュースだな。

僕は気になるチャンネルを見つけ、リモコンをちゃぶ台に戻す。

「ニュースをお伝えします。まずは、この話題から」

何で……

僕はこのニュースを見た時、この世界への憎悪と嫌悪を感じた。これは酷い。

「先月、M市のとある道路で信号を待っていた小学三年生、愛原 戸萌ともえ被害者がとある男性に射殺されました」

何で、こう……

僕の憎悪と嫌悪が徐々に強まる。

「あー、本当あれはびっくりしましたよ。友達と話していたところに行きなり走って来てぐさっと刺していましたからね。こんな事をする人の動機が分からないよ」

何で戸萌が……

「本当、最近この世の中も物騒になって来ましたね」

「そうですね。何だかいきなりこのような事件が増えているのには何か理由があるんでしょうか?」

「んー、実際その事に関してはまだ解明されてはいないですね。皆さんもこの事件を他人事と思わず、十分に警戒して外に出るようにしましょう」

そうだよ、この世界は本当に物騒だよ。

最近、こんな事件が毎日起こってる。

殺人事件は勿論のこと、自殺や失踪事件も起こっている。一体この世界には何が起こっているのやら。

それに戸萌もこのような事件に巻き込まれたのは単に不幸だっただけなのだろうか。

もっと他の理由があるのでは無いだろうか。

もし、そうでなかったとしたらこの世界は今、とんでもないことが起こっている。

まるで、人を操り、人を殺させる、そんな事を連想させてしまうようだ。

じゃあ、戸萌はその操り人形に殺されたというのか?

ふざけるな!!

何でこうまでして人を殺させるんだ。

そんなはずが無い。

そんなはず……あるわけ……無い。

バタッ!

僕はこの時、身体全体が痺れる感覚をした。が、それ以降何があったかは全く思い出せなかった。


ん、ここは、何処だ?

辺りは空もなければ雲も無い。まるで宇宙のような真っ黒な背景に、一筋だけ神々しいものが僕の身体に当たっていた。

僕はその神々しい方に向かって体を動かすと、何と、そこには、

神がいた。

えっ、何で神がいるかって?

だって頭の部分に神って書いてあるからだ。

えっ、それは嘘だって?

まあ、確かに、ホームレスが着けてそうなボロボロの白タンクトップとトランクスみたいなズボンを履いていて、ハエもぷーんと漂っていて完全に神様って姿じゃないけれど、決定的な証拠に神様オーラがプンプン漂っている。しかも強烈な。

神じゃなかったらただの超人だよ。

取り敢えず、僕は神の方に足を運んだ。

神までの道のりは険しかった。

何も無いようにしか見えないけれど途中、急な坂や落とし穴も設置されていた。おかげでたった百メートルの道のりを五時間かけて行くことになった。

流石神。こういうところは神っぽいよ。

ようやく神様のところに辿り着いた僕は、神に一つ聞く。

「僕は何でここにいるんだ?」

僕はそう述べた後、十秒間の沈黙の後、神はこう答えた。

「お前はもう、死んだんじゃよ」

えっ?俺もう死んじゃったの。早くね!?

しかし、ここからが強烈だった。

神はこの後、思わぬ言葉を口に出した。

「わしのおかげでお前さんをこの天界に連れさせることが出来たわい。はあ、良かった」

えっ、わしのおかげ?

僕はその不快感満載の神の言葉に対して反論を下した。

「おい、わしのおかげってどういう事だよ! ていうか、何安心してるんだよ! 僕、死んだんだよ! 死んだら普通悲しむもんじゃないの! 何喜んでるんだよ! 喜んでる暇あったらあの物騒な世界を何とかして元通りにさせろ!」

はあ、疲れた。久しぶりにこんなに喋ったわ。

どうだ、効き目ありか? 効果抜群か?

しかしそんな訳が無い。そして神はこう答えた。

「普通誰かが死んだら喜ぶだろ。何を言っているんだお前さんは」

えっ……。

流石にそんな事を言われたら言葉も出なかった。

喜ぶのが、当たり前?

どういう事だ? 訳が分からない。

すると神はため息一つし、こう言った。

「そうか、お前は20T/AM星の奴だったか。じゃあわしが言っている事が分からないというも無理はないか。いいか、今からお前さんが死んだ時、皆どんな反応をしたのかビデオにまとめたから、今からそれを見せるよ」

神はそう言ってリモコンらしきものを手に取り、電源スイッチを押す。

いつの間にビデオなんか作ったんだよ。

すると神の向かい側に巨大な画面が映し出された。多分これを見るんだろう。

神は再生ボタンを押した。

するとビデオの再生が始まった。

○○○○が死んだ時の皆の反応

「ふぉーーーーーー!!!!

やったぜーーーーー!!!!」

「はあ、やっと死んでくれたわ」

「この記念に今回は宴だな」

「イェーーーーーーイ!!!」

僕はこの動画を見て思った。

はは、笑えねぇよ。

何だこのクソ動画。編集下手だし、画質も悪い。

でもやっぱり内容がとにかくヤバイ。

皆何でこんなにもまで喜んでるんだ?

僕有名人でも何でも無いぞ。

ていうか、こんな喜びが毎日起こってる訳では無いと思う。

だって宴開くとか言ってたしな。

宴とか毎日開くもんじゃないしな。

つまり俺が特別、いや無い無い無い。

そんなこの動画に不評を言う僕に対して神は……

大好評だった。

いや、顎が外れるくらい大爆笑していたからな。僕が死んでこんなに笑われると凄い不愉快だわ。罵られてるわ。

でもまあ、これが僕らの世界との一つの違いなんだな。

だけど、ここだけは同じになって欲しかった。

凄い不愉快だ。


散々笑っていた神はビデオを見終わった後も思い出し笑いでまだ笑ってる。

もう、殴っていいかな?

暫く神の思い出し笑いが響き、数分後、ついに神の笑いが消え、落ち着いて来ていた。

そして第一声がこれだった。

「面白かったな」

僕はこの言葉に一瞬無意識に手をグーにして神を殴ろうとしたがやめた。

神、だからな。一応。

「どうだったか、ビデオ」

神が問う。

「最低でしたね。何かとても不愉快な気持ちになりました。これからはこういうビデオを作らない事を私はお勧めしたいと思います」

それだけ言って、俺は顔を下に向ける。

「そう、落ち込むなよ。お前さんが死んだのは理由があるんじゃよ」

「理由? 何ですか?」

俺はつい聞いてみる。

「んん、それは、もう宇宙が滅んでしまうからじゃ」

えっ? どういう事?

宇宙が滅ぶ? 地球が滅ぶならまだしも、宇宙が滅ぶってどういう事だ?

未知な世界、それが宇宙。

その宇宙が滅びるとなると一体僕達はどうなるのだろう。分からない。

いやまて、じゃあ此処は何処なんだ。

宇宙が滅びるのに宇宙にいるということはまずあり得ない。だからって宇宙以外何があるかも分からない。

「一体此処は何処なんだ」

僕はさっきまでの思いと一緒に口に出す。

すると神はさっきの姿とはまるで別人のような真剣な顔をして答えた。

「それについてはごめんだが、秘密だ」

「何でですか?」

「それについてもノーコメントだ」

はいはい、まあ、この事については深く考えないでくれという事だな。


僕はまた一つ疑問を見つけた。

もし、宇宙が滅んでしまうから僕を死なせた理由だとしたら尚更おかしい。

どうせ宇宙が滅びたら僕達も死ぬ。つまり、宇宙が滅びるまで生かしておけば完全に得だと思う。

なのに何故神はわざわざ僕を死なせたのだろう。

そんな手間、不要だったはずなのに。

しかし神の考えはしっかりとしていた。

「お前さんは、どうせ宇宙が滅びると死ぬからせっかくだし長生きさせてくれれば良かったのにと思ってるじゃろ。しかしそれは全くをもって大間違いじゃ。もし、宇宙が滅んだ後に死んでしまったらお前は地縛霊として一生滅んだ宇宙を彷徨さまよい続けることになる。それだけは絶対に嫌じゃろ。だからわしが動いたんじゃよ」

ほおー、大体理由は分かった。

地縛霊となって宇宙に彷徨い続けるのは嫌だろうからわざわざ神が動いて死なせてるって訳か、ふむふむ。

俺は別に地縛霊でもよかったんだけどな。

引き続き神は話を続ける。

「わしがどう動いたかというと、まず暮らすための世界を作って、ほぼ現実世界に違い存在を作り上げたのじゃ。ここはまだ簡単に出来た。

問題は時空間移動を作り上げることだった。

時空間移動を作るのは非常に困難で作るには一千年はかかると言われていたんじゃ。

でも、この世界を満喫してもらう為、いつの時代にも行けるようにしたい、そうわしは思いなんとわしを合わせて四代まで引き継いで作り上げたのじゃ。一千年かかるものを大体四百年程度で仕上げてしまったものだからわしの生活はほぼ時空間移動の研究のみだったんじゃ。

その為、わしはろくに楽しい生活なんて送れていなかっかんじゃ。テレビも見ず、ゲームもせず、ずっと研究。だからわしは『時空間移動が出来るようになったらもう一度人生をやりなおす』そうわしは思った。

そして時空間移動装置が出来上がった時、わしはしっかり作動するか確認の上で時空間移動をしたのじゃ。すると何とわしはまだ生まれたばかりの胎児に生まれ変わっていたのじゃよ。しかもびっくり、さっきまでの記憶を引き継ぐ事が出来たのじゃ。その時は実験成功だーーと大声で叫んだものだから周りは喋ったーと大騒ぎになっていたけれど、まあ、無事楽しい生活を送れて良かったよ。うん」

話が長ぇぇー。

でも理由はもう全て分かった。だから僕を死なせてこの天界に引っ張りだして来たという事だ。

でもその肝心な世界というのが無い。

「あの、肝心な世界が無いんだけど」

すると神はあ、あーという反応をして指をパチンと鳴らす。

音は結構大きかった。

すると、今まで真っ暗だった背景が一瞬にして都会にすり替わった。

まるで東京の渋谷だ。

しかし、それと同時に神オーラが消えてしまった。辺りを見回すともう神はいなかった。

まて、まだしっかりとした説明も聞いていないのだが。僕はこれから一体どうすればいいんだ。

それにしても、さっきから何だか死んだ感じがしないな。しかし、それもそうだ。

だってこれ普通の都会だよ。東京だよ、どう見ても。これでも一応異世界何だよね。

僕はこれから普通にいつも通り過ごすか、それとも……。

はっ!!

大事な事を僕は忘れていた。

もしかしたら戸萌もここにいるんじゃ無いのか!?

そういえば言ったなかったが、僕にとって戸萌は……妹。でもなく、親友。でもない。

戸萌は僕の……


彼女だ。





何だか今回のは死なせて喜んでるとか、そのような表現を使ってしまったので炎上しないか心配です。

これからも宜しくお願いします。

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