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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある王女の夢

ネタです。


設定に突っ込みはナシでお願いします(笑)

「今この場で、貴方との婚約は解消させて頂きますわ!」


 静まり返ったダンスホールに響いたのは、まだ幼さの残るような女性の声だった。


 王国の華と讃えられ、苦労も知らない無垢で穢れない女性の一言になる。


 その細く白い指を向けるのは、彼女の婚約者。いや、婚約者だった公爵家の嫡男であるギルバート。


 見た目も並みで、剣も魔法も学問も並のあまり目立たぬ男。


 何故彼が王国の華と言われる第一王女の婚約者なのか。それは一重に彼が建国の時から続く名家の者だからと、誰もが噂した。


 それが……、王立学院の卒業パーティで、突然で一方的な婚約破棄の通告だった。


「私。エリザベート・カリーヌ・オスペニアは、勇者アスペル様と婚約致します!」


 先程まで流れていた楽団による音楽も止まり、まるで時が止まったようなダンスホールにて、王女であるエリザベートの隣には彼女の腰に手を回している若い男性がいる。


 邪竜を倒した救国の勇者であるアスペルだ。艶やかな金髪をしてギルバートとは正反対に何でも出来る男。町行く女性が思わず視線を奪われるような容姿をしている。


 エリザベートとアスペルの周りには、彼女達の取り巻きである上級貴族の子弟がニヤニヤとゲスな笑みを浮かべて見守っていた。


 彼女達にとって、これは輝かしい未来への新たな門出なのだろう。


 救国の勇者と結婚することこそ、王国のため。 エリザベートはそう信じて疑わなかった。


「国外追放を命じます! 連れて行きなさい!」


 もうギルバートには用はない。エリザベートは平凡過ぎて見るのも嫌な男を、一刻も早く目の前から遠ざけたかった。


「何をしてるの! 早くしなさい!!」


 ただ、彼女は気付いて居なかった。


 護衛の騎士や兵士達の顔色が真っ青であることを。


「自分で出て行きますよ」


 時が止まったように動かぬ騎士や兵士に変わり、動いたのはギルバート本人だった。


 エリザベートが見たこともないほど、穏やかな表情で一言答えるとダンスホールを出ていく。






「さようなら。お馬鹿さん」


 ダンスホールを出て王立学院の門を出たギルバートは、風に流され消えそうなほど小さな声で、嬉しそうに別れの挨拶を口にする。






「ああ、アスペル。これで貴方と私の障害はないわ」


「ええ。殿下」


 人々が世界が祝福してくれると、エリザベートは信じていた。


 愛しい人の温もりと微笑みに魅了されるように、彼女は目を閉じる。


 交わされた誓いの口づけは、永久の愛の誓い。


 いや、永久の呪いとなることを彼女は知らない。




「終わった。王国は……終わった」


 御付きの騎士はそんな二人を見つめ、止まることのない涙を流していた。






「アスペル様。これは一体……」


「やあ、エリザベート。何か用かい?」


「何かではありませんわ! 何故、妹と……そっ……そのような……ふっ……ふしだらな真似を!?」


 彼女のエリザベートの夢が覚めたのは、翌日のことだった。


 まだ若いエリザベートの妹が、愛する勇者に襲われ純潔を散らしていたのだ。


「僕はこの国の王になるんだ。この国のモノは全て僕のモノだよ」


「貴方は王配になるのです! 王ではありません!」


「いや、僕が王だ。決めたんだ」


「ふざけないで下さい!」


「ふざけてなどないさ。邪竜を倒した僕を、君に止められるのかい? 強い者が王になる。何の問題があるんだ?」


「そんな……何故。あの優しいアスペル様が……一体何故」


「頭の悪い君に教えてあげようか? 建国以来この国を守っていたのは、ギルバートの家なんだよ。神代の力により王家の剣となり盾となり」


「…………」


「何事も過ぎた力は害になる。神はちゃんと考えていたんだ。勇者の暴走を止めるが、神代の力を継ぐ者の本来の定め。それを君のご先祖様の恩により、代々力を隠して尽くしたのに。愛想が尽きちゃったみたいだね」


「……」


「君は自ら切り札を捨てたんだ。随分腹に据えかねたみたいだね。彼は働かない君の代わりに、こっそり政務を助け、目立ちすぎないように力を隠して尽くしたのに」


「……ウソ」


「彼が君の代わりに働いていたのは有名な話。だから兵士も騎士も動かなかったんだよ。君に国を動かすのは無理でしょ?」


 アスペルはまるで喜劇でも見てるかのように、無邪気に笑っていた。


 滑稽だったのだろう。何も知らず自分の地位が当たり前にあるものだと考えてるエリザベートが。


「さあ。君も僕のモノになるんだ。この国のモノは全て、僕のモノだからね」


「イヤ……。イヤァーー!!!」


 助けに来る者は誰も居なかった。すでに王宮の騎士達は全て殺されていた。


 勇者の国に無能な騎士など要らないと。


 男も女も等しく勇者の奴隷とされた国は、神に与えられた寿命が尽きるまで続くことになる。


 エリザベートは二度と人々の前に姿を表すことなく、歴史の闇に消えた。



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― 新着の感想 ―
[一言] いくら強くても勇者一人じゃ国民全員を奴隷として管理できないだろうし逃げたい放題な気がするな 隷属魔法でもあって国民全てにかけて回ったりでもしたんだろうか
[気になる点] 誤字? 「さあ。君も僕のモノになるんだ。この国のモノは全て、僕の 《国》 だからね」 《 モノ 》と書いたほうが分かりやすいのではないでしょうか? [一言] 見事なザマァでした。 …
[一言] スゴイね、ギルバート君とその一家 個人に対する悪感情だけで、国丸ごと見捨てたなんて 何も知らず、好き放題して国ごと巻き込んで失墜した王女(クソ) 先祖伝来の使命を、個人の感情だけで放棄した国…
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