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幸せの愛言葉を探して  作者: あかり
策略編
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思いもよらぬ彼らの再来

 


「私、お兄様に言ってくる!」

「パトリシア、待って」

「でも!」

「僕も、王に知らせるのには賛成です。彼女は、貴女を陥れる気だ」

「もう関わらないようにするから。それに、みんな忙しそうで、邪魔したくないの。今はまだ、見て見ぬふりをしてくれないかな。私も注意する」

「………お母さんが、そういうなら」


 言い募る私の様子を眺めた後、パトリシアとエリオットがちらりと互いをみやり、最終的に溜息をついて折れてくれた。

 



 彼らと別れ、部屋に戻り、お行儀が悪いのを分かっていながらベッドに後ろからダイブする。


 軽いスプリングが鳴る音がして、身体が小さく跳ね、すぐにベッドに埋もれるように収まった。


「はぁ」

 気が付けば溜息がでる私を、どうか許してほしい。


 視界に何も入れたくなくて、腕で目元を覆った。


 やらなければいけない事はたくさんある。

 自身の身の振りかただとか、パトリシアの輿入れの準備の手伝いだとか。エリオットは一緒に来てくれと言ってくれているけれど、パトリシアには兄のために残ってほしいと、間接的に伝えられていた。


 十年ぶりに再会した二人が同時にまた居なくなれば、きっとジルが悲しむだろうからと。


 そんな中で何故、まったく知らないエカテリーナ嬢の嫌がらせを受けなければいけないのか。


「あー、イライラする」

 考えれば考えるだけ、腹が経ってきた。


 正直いえば、今すぐにでもあのお嬢様の所に直談判に行って思いの丈を叫んでしまいたい。しかし、ここは冷静に大人な対応をすることにしよう。


 相手は、自分より二回りも年下。

 

 自分で言ってゾッとした。


 よし、無視だ。無視。





 その後も何度かエカテリーナ嬢のお付きの人達からの頼まれごとや嫌がらせ染みたものがあったものの、華麗にやり過ごす。

 言付けに押し付けられた物は、傍にいた騎士に預け、嫌がらせ的なお小言は鼻で笑ってやった。


 見た目は大人、中身はもっと大人、を舐めんな。


 パトリシアも気遣ってくれてか、基本私と共に居てくれるようになったし、エリオットに関しても、どうしてもパトリシアが共に居られない時は一緒に居てくれた。




 書類の面ではまったく力のない私でも、嫁入り道具の準備に関しては少し譲れない所もあったので、精を出した。


 パトリシアのお付きの侍女達が私をきちんと王女の母として認識してくれていたお蔭で、特に問題なく荷造りがされていく。 


 ジルに直接をいう事は諦めてくれたらしいパトリシア達だったが、何故かクラリスだけには事の詳細を聞かせてしまったらしい。

 私以上の憤りを見せてくれた彼女のお蔭で、私の怒りは少しずつ鎮火していった。

 

 パトリシアの輿入れは、春先に行われることが決定した。



✿  ✿  ✿



 ある時、パトリシアの輿入れに居る物リストを侍女の人に見せてもらった。


 そこには、衣類の種類やら、小物、そして輿入れ道具として隣国にもっていかないといけないものやらが所狭しと書かれていて、一瞬気が遠くなった。


 春先の事と言っても、もう数か月もない。


 今国は連日雪に包まれている。それは、冬が終盤に差し掛かっているということでもあるのだ。

 その間にこれらすべてを揃えなければいけない。


 母として混ぜてもらえる事になった以上、心して準備に掛かりたいと思う。

 

 そう決意した数日間、私は侍女達とパトリシアの輿入れの際の衣装についてあーでもないこーでもないと顔を突き合わせて話し合っていた。


 母国で用意するべき衣装は最低でも十着以上。


 輿入れする際の服はもちろん、最初の晩餐会で着るものや、隣国での王族達との集まりの時のもの、初夜で着るものもこちらで用意しなくてはいけないときた。


「………気まずいわぁ」

「メイ様、それはわたくし達で用意しましょうか」

「お願いしてもいい?あ、でも、露出は控えめでね。可愛らしい感じで」

「はい。わかりました」


 流石に初夜の衣装を選ぶのは気まずいなぁと閉口していた私に、侍女の一人がありがたい申し出をしてくれたので、迷わずお願いした。


 この世界の輿入れ時期は大体十六から遅くても二十代前半まで。

 パトリシアに関しては王女様なので少し早いぐらいがちょうどいいらしい。

 

 余談だが、私やエメは完全に嫁ぎ遅れである。


 さり気なくエメに訪ねてみたことがあったけれど、笑顔で首を横に振られた。彼女も結婚願望はないらしい。


 なんでも、彼女は一人で生きていかなければいけない理由があるというのだ。

 その様子があまりにも思いつめているようで、それ以上聞くのは憚られた。


「お母さん」


 衣装の布選びをしている最中、パトリシアが部屋の中に入ってきた。

 少し慌てた様子の彼女は、私の腕を取ると、早く早くと急かしてくるではないか。


 普段ではあまり見られない彼女の姿に何かあったのかと思った私は、布を侍女に手渡し、彼女らに後をお願いした後、パトリシアと共に部屋を出た。


 娘が連れ出したのは、城を出て渡り廊下を過ぎた、城の片隅だった。


 城の端に位置するそこは、茂みと木々に囲まれ、少し身を縮みこませれば誰にもばれることはないだろう、というほど隠れた場所。


「パトリシア、なんでこんな」

 こんな所に用事があるとは思えなかった私が、頭の中を飛び交うハテナマークをそのままに口を開いた瞬間、木々の隙間から見えた人影。


「久しぶりね」



 黒の長い髪を風に遊ばせ立つ女性と、大きな身体を少し小さく丸めたままのっそりと出てきた男性。 



「アリシア様にクルト様ぁぁ!!??」

 




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