城の愉快な仲間達 3
更新が遅くなってしまい、申し訳ないです。。。
最近ちょっとしたスランプ気味なのか、中々パソコンの前に座ってられないのです泣
でも、とりあえず連載は再開します!
今私は、とても居心地の悪い場所にいる。
といっても、居る場所自体はむしろ居心地がいい。
談話室のようなそこは、前回もきたことがあるような錯覚を起こさせるほど見慣れた配置で、ただ少し絨毯の色や椅子や机の配置が違うだけ。
どんだけ同じような部屋があるというのだ、まったく。
けれど問題なのは、私に襲い掛かる視線の数々である。
「えーと」
何故こんな状態になっているのかさっぱり見当がつかない私を見つめるのは四対の瞳。
もちろん、お馴染みの彼らのもの。
「どうかなさいました?」
いけしゃあしゃあと尋ねてくるクラリスに、無言でお茶の準備をしつつその瞳は私から離れないエメ。
ぶっちゃけ怖いんですけど、それも。
「とりあえずそんなに緊張すんな」
どうにか場を和まそうとするクラウディと一心に私を見つめてくるセリム。
「いや、何も言わずにここまで誘拐してきといてその言い草はないでしょ」
私と彼らの仲なので、言い返したいときは言い返すのです。
私の反論を聞いてさも当然のように頷いて見せる四人ではあるが、その空気は何一つ変わらない。つまり、まったく悪びれていないというわけである。
「メイ様、どうぞ」
図ったかのようなタイミングでエメが紅茶の入ったティーカップを差し出してくる。見上げた先にあったキラキラした笑顔は拒否を許さない。
「あ、ありがとう」
丁重に受け取った。
彼女はその後、他の三人にも手渡して周り、最後に自分はソファーの端に腰を落ち着けた。
その手にお茶はなく、ただ侍女としての責務を果たしたことが窺える。
しばし訪れたティータイム。
「じゃなくて、よ」
いかんいかん。穏やかな空気に流されそうになったわ。
頭を振って自分の脳の活性化を測ってみた。
すでに紅茶は飲み干してあるので、少しぐらい荒々しい行動を起こしても問題はない。
「なんか聞きたいことがあるんでしょう、私に」
「あら、お分かりになって?」
「分かるわ………」
揃いも揃ってこんなお偉いさん達が雁首揃えて私を見つめているのだ。これで何もなかったら逆に不安になる。
紅茶を飲み終えたクラリスがカップを手元の机に置き、私を見つめてきた。
ちなみに、部屋の椅子の位置としては、二つの長いソファーが向き合うようにして並び、その間にもう一つ一人用のソファーが置いてあった。
所謂誕生日席、というような並び方だ。
私の隣にはクラウディが居て、私を挟むように反対側に居るのがクラリス。エメとセリムは向き合った長椅子にそれぞれ並んで座っている。
「実は、小耳に挟んだことがありまして」
「小耳?」
「メイが、まったく結婚を考えていないと」
「………へ?」
急すぎる話の展開に目が文字通り点になってしまった。
みんなが揃いも揃って真面目な顔でいるものだから重い話かと思えば、何故に私のそんな話を。
「な、なんだー。そんなこと?もっと重大だことだと思って構えちゃったじゃん」
「それは、本当ですか?」
片手を首を後ろに回し乾いた笑い声をあげていれば、セリムが至極真面目に質問を繰り返す。
「もう、きっとパトリシアね、そんなこと言ったの。確かに結婚願望なんてまったくないけどさ。………みんな、なにそんなに真剣になってるのよぉ」
「それが何故か、聞いても?」
笑顔でどうにか会話の出口を探そうとするが、今度はエメによって塞がれる。
一瞬脳裏に蘇った、彼と女の去っていく後姿。
「別に、面白い話なんかじゃないんだけど」
「いいんだ。ただ、興味があってな」
クラウディの巧みな話術に、結局話さなくてはいけなくなってしまったようだ。
溜息を一つ零して、手短に彼らの質問に答えることにする。
別に隠しているわけではないし。
「昔、みんなと会う前ね、私には婚約者が居たの」
驚いたように見開かれるみんなの瞳。
少し笑えた。
「というか、むしろ結婚式も始まってたんだけど。誓いの言葉を言う前に、変な女が乱入してきて、彼、攫って行っちゃったの。ただ、それだけよ」
「「「「………」」」」
全員がまさかの話の展開に気まずくなってしまったのか、視線を下げて黙りこくってしまう。
こうなることが目に見えてたから、黙っていたのに。
「もーう。みんながなんで気になったかは分からないけど、別に私の過去を知ったところでなんにもならないんだから!それに終わった事はもう振り返らない主義なの!この話はここまで!!」
笑い話にしようと言葉を紡いだ。
もう十年以上前の、異世界での話だ。過去の事には出来ている。
ただ、心の傷が癒えないだけで。
変な空気になってしまったその場を収めてくれたのは、年長組の二人だった。
「すまんな、変な事思い出させちまってよ」
「もう過去だし、気にしないで」
クラウディがいつものように頭を掻き毟りながら私を見てくるので、普段通りの笑顔で見返した。
「ですが、話してくださり、ありがとうございます」
エメが丁寧に頭を下げてくる。通常運営なのでただ頭を振ることで了承の意を示す。
「これは、予想外、ですわね」
「おーい、クラリスさーん」
斜め横に座っているクラリスは手を顎にやってなにやら一人難しい顔をしていた。
「………また、計画を練り直さなければ」
知らぬが仏、だ。
セリムの方は逆に手を頭にやって「俺なにも知らない」なんて言葉を零してたけど。
「よし!じゃあ、私はここで失礼するよ」
「あら、何か用事でも?」
難しい顔をしていたクラリスの顔が、一瞬「おや」といったものに変わった。
「うん、ちょっとパトリシアに会う用事がね」
「お供、致しましょうか」
「ううん、大丈夫よ」
一緒に行こうかと申し出てくれたクラウディとエメにやんわり断りを入れ、廊下に出た。
未だに彼らのあの過去に関する質問の意図は見えないけれど、兎に角今はパトリシアに会いに行くための道順探しに集中しよう。
そう思って廊下を歩いていれば、途中まさかのご本人に遭遇することになった。
「あ、パトリシア、に、ジル、に………えーと?」
一緒に居たのはジルと、見知らぬ年若い金髪の青年だった。
「あ、お母さん」
パトリシアの顔が、ぱっと明るくなり、私に走り寄ってきた。
柔和な笑みを浮かべた青年も続くように私の前に立ち止まると、右手を左胸に添え一礼をしてくる。
丁寧な挨拶に、つられるように私もお辞儀をしていた。
「初めてお目にかかります、エリオットと申します。お噂は伺っておりますよ。………パトリシア様のお母様ということは、私にとっても将来の義母になるわけですね」
「………え?」
思わずジルとパトリシアを見れば、二人共私と視線を合わせないように目線をあらぬ方向へ向けていた。
なに、どういうこと?




