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おいてけぼりの俺の意地。  作者: 藤山 智司
終わりと始まり、その前章
3/3

終わった初恋、下校と帰宅

 ―2029年 7月20日 金曜日 AM.11:26―


 本日の部活は休み。ちなみに明日も練習は無い。だからせっかくゆっくり出来ると思っていたのに…


「病院か~」


 前に行った時はCTとかなんとかを使って体中を検査された。それで何かが分かったんだから、良いことなんだろう。


 でも…


 昔からあまり病院は好きじゃ無い。これは普通のことなのだけど、昔からよく風邪になっていた俺は、血液検査、点滴、インフルエンザの検査(鼻に長綿棒)…子供にこれを繰り返したんだ、嫌になっても仕様が無い。


 そりゃあ、俺だって物心付いた頃には注射に慣れたりして、泣くことは無くなったけど…病院はまだ嫌いだ。何をされるか分かったもんじゃ無い。…おお怖…


 靴を履いて校舎から出る。吹奏楽部の楽器の音と運動部の掛け声が合わさって、高校という一つの世界を醸し出す。この音と空気を感じると、『今、青春しているな~』と思う。自分で青春しているとか思うのは変な感じだけど、この青春の世界の中で部活なんかをしていると、さらに強く感じてくる。この空気の中でゆったりしていると、なかなか心地良い。


「…あ。部室に部活の予定表忘れた…」


 …それはそれとして、今は早く帰りたい。



~~~~~~~~~~



 鍵を開けて中に入ると、部室には誰も居なかった。当然だ。今日は夏休みの始めにして、部活動が無い、偉大な日なのである。こんな所で油を売っているやつは一人も居なかった。


「ええと…予定表、予定表…」


 ロッカーの中や、休憩所の椅子の上なんかを重点的に探していく。腹も減ったし早く見つけて帰りたい。


「お、あった」


 …予定表は、意外とすぐに見つかった。奥の机の上に置きっ放しだったようで、ポツンと寂しく置いてあった。


「よし、帰ろう」


 これで学校に用は無い。さっさとおさらばしよう。


 外に出て鍵を掛ける。蝉の音が耳に痛い。早く、早くかえろ。


「………」


 なんとなく弓道場を見る。どうやら射る練習中らしい。


 先輩が弓を引いていた。ゆったりとした動作で矢を手に持ち、掲げ、弓へ掛ける。型というやつだ。


 そのままの状態でしばらく止まって、ゆっくりと引き絞り、狙いを定める。集中しているようだ。先輩の目が鋭く、しっかりと的を捉える。…ふいに、手が離されて弓がしなる。はじき出された矢が一直線に飛んで、的に刺さった。―ちょうど中心に刺さっている。満点だ。


 周囲の部員や生徒から歓声が沸く。相変わらずこの人は人気だ。


 三年2組、関 悠奈。すらりとした背とつり目がちな顔、綺麗な黒髪が特徴の、弓道部の部長にしてエース。今は後輩に弓を教えたりもしている。


 …そして、俺の初恋の人でもある…


 ちなみに、先輩には彼氏・・がいる。…いや、違うな。婚約者・・・、だな。


 高校を卒業してすぐに、結婚するらしい。相手は大学生らしいが詳しくは知らない。知りたくない。


 …わかっている。この気持ちは絶対に届かない。この望みは絶対に叶わない。…それでもこころのどこかで、諦めきれない自分が居た…


 もちろん、先輩には幸せになってほしい。でも…


「………」


 …やめだ。考えるな。さっさと帰ろう。それがいい。


 苦しかったが、無理矢理気持ちに蓋をする。考えてはいけない。


「…かえろ」




~~~~~~~~~~





「…ただいま~」


 しばらくして家に着いた。この辺は田舎で、うちも平屋だ。ちょっと古いがしっかりした家で、暮らしていると、とても落ち着く。


 部屋に入ってリュックを下ろす。夏休みの宿題は教科別のワークやプリント、読書感想文などである。手早く終わらせて早く遊びたいもんだ。…ああ、夏休み…何をするかな。部活は勿論、他にも海に行ったり、プールで泳いだり、後は、魚釣り、キャンプ、合宿、バーベキュー…楽しそうなことが山ほどあるな。これは期待出来そうだ。


「あ~まあ、楽しむってことで」


 …まあ夏休み、しっかりやるべき事とかもあるんだけどな。部室の掃除とか。


「さっさと夏休みの書類とお知らせ渡して飯食おう!」



 …こうして始まった…

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