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第十二話の補足 いきなり書いてプロになる素質


アレッサ「いきなり最終選考……」

清之助「都合のいいところだけおぼえるな。貴様のようなアホが百人試しても、ひとりいるかどうかのまぐれだ。そして最終選考の先は話が別になる」


アレッサ「いったいどんな素質があれば……」

清之助「根本的な才能についてはすでに以前の回で語ったが、いきなり書いて『読める』作品を書く人間には共通の素養がある。つまらんほど当然すぎる条件だ」



清之助「まず、文章になれている。国語の成績だけはよいとか、成績が悪いだけで、なんらかの読み書きで文章に慣れ親しんでいる」


清之助「小説は読まなくてもネットサイト、図鑑、ガイドブック、絵本、マンガ、雑誌、広告文、新聞などを読みあさっていたり、小説は書かなくてもネット書きこみ、落書き、作文、学級新聞、論文、企画書などで書き慣れている」


清之助「特にメールやりとりやブログ、SNSなどは人に読ませる前提で書き、人からの反応も得るくり返しだ。自閉的な自称作家よりもはるかに実戦力がつくことは珍しくない。中でもネタによるウケねらいなど『おもしろいと思われる』ことを意識した努力なら、経験として大きい」


アレッサ「そんな……私はそういう習慣はあまり……」

清之助「自分に合うSNSや掲示板でも探したらどうだ? ほかのユーザの活動報告へ『役に立つこと』『おもしろいこと』を考えてコメントするのもいい」



清之助「次に体力」

アレッサ「え」

清之助「まともに審査できる一冊相当の文字量を書くには長期間の集中力が必要になる。そして精神力を支えるのは結局、体力だ」

アレッサ「意志の強さがあれば……」

清之助「補えない。精神は体力に支えられているからだ。絶食やフルマラソンのあとで執筆できるものならやってみろ。体調不良は執筆をさまたげる最大の要因になる」


清之助「そもそも、ろくに動かないで脳へスムーズに血流を送り続けるには高い健康力が必要だ。知識も意志も感情も、すべては運動と栄養と衛生が土台かつ増幅器となる。本を百冊読むだけより、その八割をダンベルがわりに振りまわすほうが作品の質は上がる」


清之助「プロ作家は不健康という迷信があるが、実際は高い健康力を超える過労をしているだけだ」



清之助「そして金と時間」

アレッサ「な!? 苦労しながら、わずかな時間を惜しんで書く根性こそ……」

清之助「集中して書く時間をとれるほうが有利に決まっている。作業道具や資料集めだって、金を惜しまなければ格段に効率が上がる可能性がある。ネットに転がっているようなことしか教えない専門学校でも、添削マシーンがわりには使える」


アレッサ「ラノベ新人賞受賞者のニート率は噂で聞いたこともあるが……」

清之助「その先は別だ。受賞作以外に本がでない割合も考えろ。その先は社会人経験も重要になる」


清之助「本業プロをめざすかどうかはともかく、人としての経験を積まない作者には作品の先もない」


清之助「だからプロ作家になりたいなら資格でもとって、安定した職場で金と時間と健康を確保しろ」

アレッサ「なんて夢のない……金銭のために書いているわけではないが、可能性としては……」


清之助「アホ。創作は絶望的に金にならない。そして時間と健康を急速に削る苦行だ。金と体力を用意して挑むほうが有利に決まっている」




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