第十一話 『作者のオ○ニー』だってさ
アレッサ「う~む、この感想によると、まだ書きなおしたほうがいいようだ」
清之助「アホ。『作者のオナニー』『自慰行為の作品』から無駄な下品さを抜いてみろ」
アレッサ「え。『ひとりよがり』『自己満足』とか……?」
清之助「自分が納得できる作品のなにが悪い」
アレッサ「え……あれ? しかし読者のことも考えて……」
清之助「当然だ。読者の求めるものを書かなければ読まれない」
清之助「だが作品は作者自身だ。作者が求めるものを軽んじてどうする」
清之助「創作表現は『伝える』作業だ。作者の『書きたいもの』を無視すれば読者に伝えるべき価値観が失われ、そもそもの存在意義を失う」
清之助「もちろん受け取り側である読者の『読みたいもの』の無視も論外だ。プロであれば『読みたくなる』表現が求められ、そうでなくても自分以外に読まれるなら『読みやすい』せめて『読める』表現が互いのために望ましい」
清之助「つまり『ひとりよがり』『自己満足』は読者へ伝わらない表現を批判した言葉だ」
アレッサ「なるほど……あれ? ならば正しい指摘ではないのか?」
清之助「どアホ。それなら具体的になにをどう改善する?」
アレッサ「だから読者の求めるものに合わせて……」
清之助「合わせてなにをする?」
アレッサ「だから合わせて……あれ?」
清之助「具体性がなさすぎる。批評としての価値が薄すぎる」
清之助「作者が読者に合わせようとするのは当然だ。その助言が『読者に合わせろ』でなんの役に立つ」
アレッサ「あ」
清之助「わかりにくいとか、ぱっとしないとか、しんどいとか、それくらいの漠然とした表現でもまだマシだ」
清之助「編集者や編集者きどりなら『売れない』『商業性が低い』もまだわかる。そして改善させる気があるなら『想定読者層』と『作品要素』を挙げて『なぜ売れないか』くらいは指摘する」
アレッサ「だが『読者に合わせろ』ではなんの改善にもならないわけか」
清之助「そのまま『読者の立場になって考えろ』と言うだけならまだ『ろくに努力してないやつに指導する気はないから自分で考えろ』という激励にはなる」
清之助「だが『ひとりよがり』『自己満足』という非難になると作者を否定し、作者の書きたいもの、作者の意志を捨てさせる意図にも解釈できる」
アレッサ「それだけは許されぬ!」
清之助「アホ。意志を通してガチエロを十八禁表示なしに書かれたらどうする」
アレッサ「あ」
清之助「その時には『作者の「ひとりよがり」で読者を傷つけるな! 会社をつぶすな!』と言ったほうが互いのためになる」
アレッサ「う、うむ……」
清之助「しかしそれも作者の否定には変わりない。無責任な立場から『その生きかたはやめろ』と言っていいわけがない」
ユキタ「でも規約違反の通報は遠慮なく。サイト利用者はみんなが責任をかぶる立場ですから」
清之助「だが無責任なやつほど安直に『ひとりよがり』『自己満足』という言葉を多用する。実際には『オレに合わせろ』程度の意味で使う」
アレッサ「え」
清之助「まともな指摘をできないからだ。しようとも考えないからだ。さらには客観性が欠落しているからだ」
アレッサ「え」
清之助「『自分に合わない』だけの不満を読者全体の意見のように誇張するしか説得力を出せないアホだからだ」
アレッサ「うあ……」
清之助「そして慎重に使っても相手を傷つける『ひとりよがり』『自己満足』という言葉へ、無意味で下品な侮蔑まで加えた『作者のオナニー』『自慰行為の作品』という言葉こそ『最低に下劣なひとりよがり』の表現だ」
清之助「無意味な侮蔑で人の意志を否定する人間に、まともな感性などあるわけがない」
アレッサ「うむ」
清之助「無駄な下品さで語気だけ強めて脅す人間に、まともな知性などあるわけがない」
アレッサ「うむ……だが貴様が言うか」
清之助「したがって『お前の作品はオナニーだ』は『オレの批評能力は絶無だ』と翻訳すればきれいに意味が通じる」
清之助「とはいえ『ひとりよがり』『自己満足』程度の言葉なら、具体的な内容をたずねた時に答えてもらえることもある。それは素直に聞いておけ」
清之助「しかしまともな答が返らないで不機嫌になってきたら『オナニー』と同じ用法だ。『自己満足とは具体的にどのあたりでしょう?』が『あなたの批評能力の欠落はどれほどでしょう?』と言ったも同然になるから、平謝りして『もうしわけありません。もう少し自分で考えてみます』と切り上げろ」
ユキタ「今回は下品な言葉を連呼してもうしわけありません」




