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第八話 ポイントの稼ぎかたもわからないのか?


アレッサ「どうもこのポイント、のびかたがおかしいな」

清之助「おかしいのは貴様の分析と短絡だ」

アレッサ「いくらなんでもこれらの作品より低いのはまちがっている」

清之助「まちがっているのは貴様の発想と性根だ」


アレッサ「私にとっておもしろいということは、少なくとも私と好みの合う読者にはおもしろいはずだろう?」

清之助「ばーか。そんなわけあるか。初心者なら『自分の作品が二段以上は良く見える』と意識しろ」


ユキタ「自分『ちょっといいかも』は他人『かなりひどい』だね」

ユキタ「自分『確実にすごい』は他人『悪くはない』だね」

ユキタ「自分『神になった』は他人『ちょっといいかも』だね」


アレッサ「そこまでひどい差はないだろう!?」

清之助「貴様の書いた作品は、貴様と相性が完全に合う作品だ」

アレッサ「ま、まあ、自分以外だと多少なり相性のずれが生じて、一段は落ちると見るべきかもしれないが……」

清之助「そして貴様は作品を読む前から作品を理解し、感情移入している」

アレッサ「う」


清之助「作者はどうあがいても、読者より何段も上の作品理解者に『なってしまう』のだ。その差を縮める技術や経験が初心者の貴様にはまるで足りない」

アレッサ「二段以上……か……」


清之助「そういった客観意識を持てないマヌケが読者やサイトシステムに文句をぶつけ、なれあいだの不正だのわめきながら消えていく」


清之助「ゆがんだランキングやポイント評価が多いのはたしかだ。だが貴様のようにゆがんだ文句をつけるアホも多すぎる」


清之助「サイトのシステムを改善したいなら勝手にがんばれ。だが理由はどうあれポイントを求めるなら、もっとやるべきことがいくらでもある」



清之助「前回も言ったとおり、最速は『コネ増やし』だ」

アレッサ「うーむ……」

清之助「前回も言ったとおり『ユーザ交流』は束縛力が大きい。SNSやソーシャルゲームでも重視される手法で、最も強烈な『ユーザばなれ防止』になる。だから外部宣伝と同様にシステムでも推奨されている。サイトの利益になるからだ」

アレッサ「うむ……ん? 前回にはない内容が加わってないか?」


清之助「あつかましい恥知らずならコメントのつけかた次第で、かなりの底上げをできる」

アレッサ「貴様……その手法を本当に薦めているのか?」

清之助「仮想敵として『最速』の存在を教えただけだ。好き嫌いで言えば大嫌いだ。執筆時間と対人関係を浅薄に扱うクズは作品も浅薄になる」

アレッサ「はじめからそう言え! ややこしいひっかけで試すな!」



清之助「薦める手段は新人賞だ」

アレッサ「え」

清之助「作品に自信があるのだろう? 紙媒体に比べれば、応募の手間など無いも同然だ。そして選考通過ごとにアクセスは大幅に増える」

アレッサ「いやしかし、まだ私の作品はそこまで……」


清之助「一次選考通過作品をかたっぱしからのぞいてみろ。二次選考でもいい。貴様が『まちがっている』と言ったレベルのつまらん作品も大量に入っている」

アレッサ「失敬な! 選考を通過したならば、しかるべき…………あれ?」

清之助「『これなら自分もいけるかな?』と思っただろ」

アレッサ「そ、そんなことは決してて……」


清之助「さあ応募しろ。くりかえし一次落選して『審査員がおかしい』とわめくか『自分がおかしかった』と認めるかを選べ」

アレッサ「ぐ。落選のくりかえしは決定事項か……」


清之助「新人賞や持ちこみは当たりハズレが大きい。一度や二度は誤差だ。本当に自信があるならその程度で悩むな落ちこむな。最低でも数社は試せ」

アレッサ「たしかに出版社や編集部によって基準は差がありそうだ」

清之助「担当者ごとにまるで違うことも珍しくない。その日の気分だって大きい。何十回とハズレを引き続けてプロになった一流作家がどれだけいると思っている?」


清之助「もっとも初心者の場合、作品のおもしろさとは別の致命的なミスをしていることも多い。応募規定の違反とか、著作権の違反とか、圧力団体にたかられそうな表現とか、編集部の作風を考えていないとか、出版社の企業系列を知らないとか……」


清之助「だが最終選考に残れる作品が一次選考で落ちることは少ない。ないでもないが、何度も連続では考えにくい」


清之助「システムに文句を言う時間があるなら、一回でも多く落選しろ。もし通過すれば『正しい注目』が得られるぞ? ククク」

アレッサ「ぐ……」


ユキタ「『ネット小説大賞』は特に応募しやすく、ジャンルなどの制限もありません。一次選考段階からピックアップや感想つけが行われるなど、育成面も重視してくれる賞としておすすめです」


清之助「いきなりどうした」

ユキタ「君がいちいち迷惑な言いまわしをするから、穴埋めにシッポふってんだよ!」


アレッサ「情けないが、応募となると急に自信が……」

清之助「めんどくさいやつだな。そんな薄っぺらい自信で他人のせいにしていたのか」

ユキタ「身内以外にも推薦する人が複数いるなら試さないともったいないかも」




清之助「では残りの気休め対策だ」

アレッサ「ほかはすべて気休めなのか!?」

清之助「表示されるわずかな時間と文字数で釣る基本はすでに教えた。作品名、作者名、あらすじ、冒頭だ。そこで手を抜くやつは神社にでも通え」


清之助「関連サイトで『登録の多いキーワード』『登録の多いタグ』『検索数の多いタグ』なども一度は参照しておけ」

アレッサ「おおっ。検索数が多くて登録が少ないキーワードはねらい目だな!」

清之助「気休めだ。しかし盛ったほうがいいキーワードの傾向はわかる」


ユキタ「検索数があっても登録数も多いと埋もれるよ。それに、似た作品を読み飽きた人は除外指定してくる」

清之助「無駄な多さは読みにくいし、釣りくさく見える。ましてキーワード欄で余計なネタなど、新人賞では審査の邪魔でしかない非常識だ」

ユキタ「……」



アレッサ「ジャンルでかなり悩んだが、ランキングの入りやすさにずいぶん差がある。競争の厳しいジャンルを避けておけばもう少し上がったか?」

清之助「気休めだ。マイナージャンルほど見る読者も少ない」

ユキタ「選べる作品でわざわざ厳しいジャンルにしなくてもいいとは思うけど」


アレッサ「うん? あきらかにジャンル違いに思える作品が入っているな?」

清之助「『ジャンル詐欺』か。効果は高いな」

アレッサ「こんな姑息な手段が!?」

清之助「貴様のようなどシロウトでもひと目で『読者や他作者のことも考えられない無神経な作者』『小手先に頼って努力も自制もできない作者』とわかる」


清之助「そして深く読んでくれる読者ほど、不誠実な作者には強い嫌悪を持つ。無神経で努力もしない態度は、読んだ時間を裏切られる可能性に直結するからだ」


アレッサ「えーとつまり……」

清之助「きわめて効果的に信用を失う手段だ」


ユキタ「ジャンル分けしにくい作風は増え続ける傾向にあるけどね」



アレッサ「あと活動報告は……」

清之助「気休めだ」

アレッサ「工夫して効果はあるのか?」

清之助「活動報告の一覧から作品を探す特殊性癖も一定数は存在する」

アレッサ「ではタイトルと内容もおもしろさはなるべく配慮しておこう。む。これも一覧では二百文字までの表示か。ならばなるべく二百字以内で……」

清之助「気休めだ。しかし作品と離れた話題もついでに盛りやすい欄ではある」



アレッサ「自己紹介欄にはなにを書いたらいいのだろう?」

ユキタ「なにが好きか、どんな作品を書きたいか、方向性がわかるような内容があるといいかも」


ユキタ「作品を読む前後でマイページに入ると、パソコンだと作品タイトルと活動報告タイトルだけ並ぶんだよね。必須キーワードとジャンルだけで、あらすじもない」

アレッサ「なるほど。判断に迷っている時にはあと押しに……」

清之助「気休めだ。しかし誠意をつくして悪いわけがない。読者の求める情報を書け」



清之助「貴様、なぜこの感想には返信してない?」

アレッサ「『犬が八匹ですね』のひとことではひやかしと区別がつかん。どう返していいのかわからず、困っていたところだ」


清之助「これは貴様の恥ずかしい作品名をクリックし、平坦な冒頭説明をながめながらも『八匹』を理解する部分までは読んでもらえた証拠だ。そして七文字だろうが『文章を打ちこんで送信ボタンを押す』という異例の手間をかけている」

アレッサ「なるほど。ならば返信は『ありがとうございます。当初は四十七匹でしたが冗長になるかと思い削りました』と、手探りでも返しておくか」


清之助「仮に悪意でも丁重に扱え。できればユーモアも加えろ。作者の度量力量を示すチャンスだ。むしろ罵倒や誹謗中傷なら、よだれをたらして友好的にもてなせ。呼びこみなしにぼったくりバーへ入った客のようなものだ」

アレッサ「もう少しマシなたとえは……」


清之助「まとはずれな小言をならべる知ったかぶりは褒めたたえろ。感想のふりして自慢や愚痴をならべるマヌケは『すごいですねー』とあいづちをうて。だがうそはつくな。相手の立場になり、相手にとって役に立つ返信を考えろ」


アレッサ「形はどうあれコネ……『人とのつながり』というわけか」

ユキタ「感想欄を先に読むことも多いよ。感想の対応で作者自身に興味を持つことも多い」



ユキタ「でも清之助くんの対応は前提になる作者像が偏っているよ。感想を無視したほうがいい作者適性だってあるだろう?」

清之助「すまん」

ユキタ「あと、こんな作品を書いた作者の今後の感想欄が心配だよ」

清之助「それは心配ない。下には下がいる」




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