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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

チャイム。

作者: 間内りおん

少しの不思議を孕んだ、

ノスタルジックな

先生×生徒のBL系の作品になっております。

貴方の時間を少し譲ってもらえるならば、

それで読んでいただけたら、幸いです。

「先生…」


誰も居なくなった放課後の教室。

少年が一人、窓辺にたたずんでいた。

夕陽が差し込んだ教室は

すっかりオレンジ色に染められている。


頬から流れる、一筋の涙。

少年はそれを気にする事なく、

窓の向うに広がる夕焼け空を

ずっと見つめていた――――――――――。


そして。



キーンコーンカーンコーン―――。


…遠くからチャイムの音がする。

これから、どこのクラスの授業だっけ…。

そもそも今は何限目だ?

…体が鉛の様に重たくて動かない…。


「せ・ん・せ・いっっ!!」


「わぁっ!?」


俺は突然後ろから掛けられた声に

びっくりして飛び起きた。

危うく教卓が倒れそうになった。


「やーっと起きた!先生ってば

何度起こしても起きないんだもん」


「南…。あのなー、

先生をおどかすんじゃないよ…

起こすんならもっと優しく起こして。」


目が覚めると、放課後だった。

窓から夕陽が差し込んでいて

夕陽のオレンジ色が俺と南を照す。



俺を起こしたこいつは、

2年A組の南スグル。

俺はこの学校の数学担当教師。


初めて出会った時から

スグルは妙に俺に懐いてきて、

数学の問題で分からない事があったら

よく聞きに来るし、勉強熱心な奴だった。

勉強以外でも、色んな相談に乗ったりと

接する時間も増えていった訳だが…


『…先生!

初めて会った時から…す、好きでした!

僕と付き合って下さい!』


…さすがに、告白された時は、

びっくりした。びっくりしたさ。

正直どうしたものかと思った。

確かにスグルは可愛い生徒の1人だ。

でも…

俺は教師だし、スグルが

大人への憧れを恋だと勘違いしてるなら

それを教えてやるのが教師ってもんだ。


『南…あの…』


しかし…

スグルの真っ直ぐな眼差しに

【本気】を感じ、俺は何も言えなかった。

そう、さっきまで教師が云々思ってた俺は

つい彼の気持ちを受け入れてしまったのだ。


たしか、あの時も教室に夕陽が差し込む

こんな放課後の時間だったっけな。


つい気持ちを受け入れたとはいえ、

男と付き合うのはもちろん初めてだった。

でも、後悔はしていない。

だって、日を追うごとに、

スグルのことが愛しくて愛しくて

たまらなくなってくるんだ。


今の所は清い交際ってのを続けている。

だから、キスすらまだしていない。



「先生?二人きりの時は、

ミ・ナ・ミじゃなくて、

ス・グ・ルでしょ?名前で呼んで?」


ほっぺをふくらまして

抗議をしてくる姿も可愛らしい。

俺は教師としてという以前に、

何か色々もう…重症だ。


「ごめんごめん。……そういえば、

放課後なのにまだ残ってたんだな。

スグルは確か帰宅部だったろう?」


スグルの表情が一瞬曇る。

何か怒らせるような事を言っただろうか。


「もぅ!先生が呼び出したくせに

忘れてたの!?…ひどいなぁ…」


スグルが発した言葉の

《ひどいなぁ…》という響きが、

何だか、俺を切ない気持ちにさせた。

なんで、こんな気持ちになるのか、

分からない…。


「ごめんな…寝ててすっかり忘れてた…

今度から気をつけるから

そんな顔しないでくれ…。」


俺はすスグルの、その

やわらかい髪を撫でながら、謝った。

本当は…

放課後にスグルと会う約束をした事を

どうしても思い出せなかった。

最近、どうも記憶が曖昧で

俺自身困ってるわけだが…。


「先生…」


スグルの瞳が俺を捉える。


「何?」


「忘れた罰。キス…して?」


「え?」


スグルの言葉に、焦る俺。

体が…動かない。


スグルは目を閉じて待っている。

窓から差し込む夕陽が、

その唇をよりいっそう赤く見せていた。

きれいな唇…。

俺は恐る恐る顔を近付ける、

スグルの唇に後数センチとせまった時…、


キーンコーンカーンコーン…


…チャイムが鳴った。


チャイムの音に驚いた俺は、

近づいた顔を慌てて離した。

スグルは泣きそうな顔をしていた。


「えーっと…」


俺は言い訳の言葉を必死に探していた。


外では、

運動部に所属する生徒達が片付けを始め、

俺達二人が居る教室では、

何とも言えない気まずい空気が流れていた。

色々考えてる内に


「チャイム、鳴ったね…」


スグルがポツリと呟く。


「待って、スグ…」


「じゃ、また明日・・・先生。」


スグルは窓辺で、

夕焼け空を見つめながらそう言うと、

そのまま俺を残して教室を

出ていってしまった。

スグルはチャイムが鳴った後から

一回も俺の方を見る事は無かった。


…やっぱり怒ったよな・・・絶対。


あの時、戸惑う事無く

キスをしとけばよかったんだ。


スグルは《罰》とか言って

キスを求めてきたけど、

その言葉はスグルなりの

精一杯だったんじゃなかろうか?


スグルの言葉を気持ちを…もう少し俺は…。


《罰》と言う言葉が俺の中に

ジワジワ染み込んで来た。



キーンコーンカーンコーン――――。



遠くでチャイムが鳴っている。

懐かしい音。ここは…学校…?


「せーんせいっ!」


気が付くと、

誰かが後ろから抱きついていた。


誰だ…?


「先生…どうしたの?」


抱きついていたのは

可愛らしい顔をしている少年だった。


「君…誰…?」


俺がそう言うと、

少年はひどく傷ついた顔をして、

顔を伏せてしまった。


…また怒らせるような事を

言ってしまったのだろうか?


また…って何だ?


「…ひどいなぁ…」


スグルが発した言葉の

《ひどいなぁ…》という響きが…


…………スグル?


「スグル…?」


彼の名を呼ぶと、スグルは顔をあげた。

悲しいそうな複雑な笑顔をしていた。

俺…もしかして、スグルの事忘れてた…?


「ごめん…。俺、また約束を…」


「…いいよ。本当は…僕が勝手に

会いに来てただけなんだから。」


「え…?」


「先生、いつもここにいるから…

会いたかったんだ。」


俺だって…。


「俺だって、スグルにいつも会いたいんだ。

キスだって…今度は俺から…」


スグルは悲しいそうな顔で笑った。

そんな顔、させたくないのに…


「チャイム…もうすぐ鳴るね…」


スグルがポツリと言うと同時に

俺の体は勝手に動いていて、

スグルの唇にキスをしていた。


チャイムが鳴る前じゃないと

駄目だと思ったからだ。


初めてのキスのはずだった。

だけど俺はスグルの唇の感触を

覚えていた。


そして、俺は思い出してしまった。


「スグル…俺…、

チャイムが鳴ったら…いかなきゃ…。」


そう思った。


だから、スグルとこうやって会うのも

これで最後…。


「俺、全部思い出したんだ…」


キーン…。


その時、チャイムが鳴りはじめた。



俺は3ヵ月前に事故で死んだ。

スグルが告白してくれてから、

3ヶ月目の日だった。

放課後の教室で

初めてスグルとキスを交わし、

その後…俺は車の事故に巻き込まれた。


俺が最後に聞いた音は、学校のチャイムの音。

目に浮かんだのは、スグルの姿…。


コーン…。


そして、俺がここに居るのは

スグルとの別れの時間を

神様か何かがくれたためなんだろう。


カーン…。


「スグル…ごめんな…」


最後に触れたくて

俺はスグルのやわらかい髪を撫でた。


「せん…せぃ…」


目の前でスグルが泣いていた。

あぁ、スグルに…

こんな顔させたくなかったのに…。


コーン。


スグルの泣き顔を最後に

俺の意識は薄れていった―――――。





キーンコーンカーンコーン。



遠くでチャイムの音が聞こえる。

真っ暗闇の中、

スグルの泣き顔だけが脳裏に甦る。

死とはこういうものなのか?

真っ暗闇で淋しくて、

愛した人にも会えない…。



「先生!」


スグルの声がした気がした。


「――っ、先生ったら!もぅ、起きて!」


「…え?!」


気が付くと、そこは放課後の教室だった。


「まったく、先生寝すぎ!」


「あ…、ごめんごめん。なんか、

変な夢を見てたみたいでさ…。」


「そっか。」


スグルはとくに興味なさそうに、

窓の向こうに広がる

夕焼け空を見つめていた。


にしても、なんだったんだ?

今までのは全部、夢…?


「先生!行くよ!」


スグルが

突然思いたったように言いだし

俺の手をとった。


「え?どこに?」


スグルは俺の手を握ったまま、

俺の胸に顔を埋めた。


「先生が…行く所ならどこへでも…」




キーンコーンカーンコーン。


チャイムが鳴った。



スグルは埋めていた顔を上げ、

優しく微笑んだ。

握りかえした手から

スグルの暖かさが伝わってきた。



キーンコーンカーンコーン。


チャイムが時間に合わせて規則的に鳴る。

教室にはもう誰もいない。

開けっ放しの窓。

どこからか、

幸せそうな二人の声がする。


夕陽が差し込んだ教室はすっかり

オレンジ色に染められている。




Fin.

読了頂き、ありがとうございました。

この作品はいわゆる先生と生徒ものになります。

少しの謎と少しの切なさと。

南スグルはいつ先生と同じ存在になったのか。

それを踏まえてもう一度読んで頂ければ

また、違った捉え方があるかもしれません。

後、先生の名前は一切出ていませんが、

違う作品で名前を出せたなら、と考えております。

ここまで、本当にありがとうございました。


間内りおん。

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