昔語り
前振りなためあまり中身がありません。また、初投稿のため、拙い文章ご容赦下さい。本編は二人の王の時代の話になります。
「昔、双闘王と称された二人の王がいたと言う」
それはビビアンが兄から聞くことを好んだ昔話だ。年の離れた兄は末の弟であるビビアンを可愛がった。その昔話を聞くとき、彼の新緑の瞳はいつも楽しげであった。
「かの王たちは仲の良い兄弟だった。兄のイングルハートは内政を、弟のアレスシスは戦をそれぞれ得意とした。衰退しかけていたこのエアレオール王国を立て直した王たちだ」
ビビアンの兄の話は続く。かの王たちの父はまさに愚王であったと伝えられる。彼らは父を廃し、共に王位についた。
二人の治世は前半は戦ばかりであったものの、後半は穏やかであったそうだ。
いつもはかの王たちの偉業を讃え終わる兄の話がある日変わった。
「ビビアン、今日はいつもの話とは少し違うよ。あの二人の王には謎がある」
歴史を愛する兄は少し興奮気味だった。
「何なのですか?お兄様?」
ビビアンが小首をかしげると、彼の赤毛がさらりと揺れる。兄はそれに目を細め、口元に仄かな笑みを浮かべながら答える。
「かの二人の王は結婚しなかった。王位は後に血縁の者に受け継がれている。だが、有能な王が二人。後世には断片的な偉業しか伝わらっていない。でも、本当はどうだったのだろう?二人の争い事は?そもそも、なぜに二人共が王になり、血筋も残さなかったのか?私には不思議で仕方ない」 普段は気にせず指摘しなかった部分を兄はその時に限って気にした。
「お兄様、どうかしたのですか?」
ビビアンの問いに兄は頬を紅潮させて答えた。
「私はかの兄王のものと思われる文書を偶然手にしたんだ。それはそう、弟王に対するまるで恋文のように熱烈な言葉たちだった。それを解読していき、一気に彼らが身近に感じられたんだ」
兄の興奮が伝染したように、ビビアンの声も少し高くなる。
「お兄様、私にぜひ聞かせて下さい!」
そして語られるのは二人の王の物語。銀色の髪を持つ麗しい兄王と、夜色の髪を持つ、様々なことに翻弄された弟王の話。