第十二章 『take a shot』
煌く赤き炎よ!
――晩秋。
「ふむ……」
薙は受験勉強を一通り終えていた。後は問題演習で点数を詰めて行くだけだ。得意科目の世界史は全て暗記している。
「ラティエナ王立大学部を目指しているのよね?」
メネシスが聞いた。
「そうなのだ」
財務一種で海外へ留学するなら、スウィネフェルドが良い。数年間、薙は故郷へ凱旋する考えだった。
「なら、もっと勉強しないとな」
若葉達の様に外洋へ出るのも良い考えだが、ラティエナが大陸での足場を固めるためには、先ず、自分の外遊で進めて行こうと考えていた。
「うむ」
(今のうちに、一度、帰ってみるのも良いと思う――)
薙は二人に相談を持ち掛けた。
「――今年のクリスマスはタイケヌサ城で過ごしたい」
「なるほど」
1月には受験もあるので、それなりにリスクを背負う。
「吹雪さんに会うのね?」
「そうなるな。余の方から、連絡を取っておく必要もある」
薙にとって、吹雪はそれほど面識のある人物ではなかった。彼は秋雲家とは距離を置いている。
「北部進駐大使として、どこまで自治が行き渡っているか、見極めておく必要がある」
薙がスウィネフェルドを視察するのは数年ぶりだ。
「情勢が安定しているとは聞くぜ?」
「ラティエナ国の出丸として、頑張って居るのだろう。余、自ら之を労いたい」
その必要も大いに会った。吹雪は軍師としても優秀で、民の信任も厚い。
「冬場は厳しい寒さになる」
スウィネフェルドやブラナタス領は首都エルケレスに比べて、随分、北方に当たる。
「この時期は、食料等の備蓄も管理せねばなるまい――」
資源豊富な北方では台頭する国家資本が直接、市民を管理していた。
「国営企業を育む為に、政府系のファンドが之を運営しておる」
ラティエナとは違ったやり方だった。資本の在り方が違う。
「確かに、一度、陛下が会って置く必要があるな」
「うむ。その時は留守を頼む」
こうして、薙は一時帰国する為の手続きと、段取りを準備するのであった。
貫く白き誇りよ!!