第一章 『策士の業』
ここはラティエナ国の首都エルケレス。町の中心には王城が存在し、その謁見の間には鎮座する少女が一人――
『霧島薙陛下の、御成り〜!』
すると、家臣達が頭を垂れる。
「うむ、今日も良い朝だ」
多数の臣下の前に、金髪の少女が姿を現した。
「陛下、本日もご機嫌麗しく――」
「世辞は善い。これより朝礼を始める」
碧眼で家臣を制すると、霧島は王座に着席した。
「陛下。本日は魔法学園にご出席された後、望月カシス校長と歓談のご予定でございます」
「ふむ」
霧島は学校が苦手だった。
「やはり、行かなければダメか?」
「ダメです。お言葉ながら、陛下には、もう少し、勉学に励んでいただきませんと」
霧島は『むぅ……』と眉間にしわを寄せた。
「先代の望月タキジ校長が逝去された折に、陛下をよろしく頼むと家臣一同はお引き受けしたわけですから――」
「その様な事、壱弐分に分かって居るわ」
家臣達も霧島の御身を思っている故の事であった。
「陛下も今年で14歳……」
「うむ」
激動の前大戦より5年が経過しようとしている。
「時代も変わった」
「……」
霧島は窓の遠くを見つめた。前大戦によって多くの尊い命が失われた。自分が未だに鎮座していられるのが不思議であった。
「そうだな、カシスにも会って置く必要があるな」
「はい。では、早速、支度をさせます故――」
朝礼を終えた君主は、魔法学園へと向かった。
新都社より移籍しました片瀬拓也です。
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