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秋時雨  作者: 徳次郎
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【第11話】

「未由!」

 学校へ行くと、麻須美が凄い勢いで駆けて来た。

「あんたのバイトしてる店、強盗が入ったんだって?」

 息を弾ませながら彼女は言った。

「あれ?麻須美、よく知ってるね。新聞取ってないのに」

「祥子に聞いたのよ」

 祥子とは、同じクラスの女子生徒で、やはり夜の仕事をしている。

 短時間でそれなりの金額を稼ぐには、夜の街が一番なのだ。そして、一度夜の仕事をしてしまうと、昼間の仕事はなかなか出来なくなる。

 生活サイクルからくる不快感もあるが、やはり時間に対しての給金が全然違うのだ。

 麻須美は、人事のように呑気に話す未由の腕を掴んで「あんた、どうもされなかった?」

「大丈夫よ。犯人もその場で捕まったし」

 未由は簡単に事件の経緯を話して聞かせた。

「へぇ、あいつけっこう勇敢なんだ」

 もちろん、長谷部の事である。

 麻須美は笑いながら「きっと、未由を守ろうとしたんだね」

「ただ無謀ななけだよ」

 未由は冷静な顔付きでそう言ったが、麻須美が言った事は充分に承知していた。

 それなりに親しい友人達は、未由を心配してか、ただの好奇心か、色々と訊いて来たが、退屈な休み時間の暇つぶしには充分な話題だった。

 2限目が終わる頃、敦が現れた。

 麻須美が未由のお店の事を彼に話したものだから、学校が終わってから3人はファミレスで食事をし、彼女は再び武勇伝を話さなければならなかった。

 もちろん、主役は長谷部だし、落ちたナイフが勝手に滑って行った事や、犯人が何故バケツに足を突っ込んだのかと言う事には触れなかった。

「その長谷部君っての、勇敢だね」

 敦はコーヒーを飲みながら素直に感心していた。

「バカなだけよ」

 未由がそう言うと、麻須美は「敦くんならどうする?」

「そうだな、その場の空気次第だろうけど、俺、喧嘩弱いしな」

 敦が目を細めて笑った。

「あら、長谷部君も喧嘩が強いようには見えないけど……」

「じゃあ、正義感が強いか…… よっぽど未由を助けたかったか」

 敦の言葉に、未由はドキッとして、麻須美に目配せした。

「敦くんどうする?ライバル出現だね」

 未由の表情を見て、麻須美が楽しそうに言った。

「あんた、お店に行く時間はいいの?」

 未由がそう言ってジロリと麻須美を睨むと

「遅れるって、電話したもん」

 彼女はそう言って笑いながら、食後のケーキを口へ運んだ。



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