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Renbu4 理想と現実のギャップ

 琉依のおかげで、憧れていた彼と再会出来たのは良かったけれど、現実の彼はおねぇ言葉を惜しげもなく披露する“女”の性格を兼ね備えた人物だった。




 空中を軽やかに舞う蝶の様に、彼の舞はとても綺麗で思わずため息が出るほどだった。

 いつまでも色あせる事無く、その光景を心の中に残しておきたい。いつ見れるかも分からないのだから、あの時見た美しいままで……


 「う、う……ん」

 目が覚めると、とてもいい香りがしてきた。あれは夢だったの?


 「あら? 気が付いたの?」

 その声を聞いた途端、くら〜っと再び気を失いそうになった。何とか気を保ちながら声のする方を見ると、そこには先程までおろしていた長い髪を綺麗に結った彼(彼でいいのよね?)の姿があった。

 「る、琉依は?」

 「琉依なら、え〜っと何だっけ? あぁ、アオリンを買いに行ったわよ」

 アオリンを? アオリンとは、私の好きな飲料の名前だった。わざわざ買いに行ってくれているなんて、普段はあんなにふざけた行動を見せていても、本当は優しい人なのだ。


 けれど琉依がいなくなってしまっては、二人きりの楽屋……何を話したらいいか分からない。彼は化粧に取り掛かっていた。

 「じ、自分で化粧されるのですね」

 「や〜ねぇ。敬語なんて使わないで頂戴よ。体中が痒くなっちゃうわ」

 そう言われても……いくら琉依の親友と言っても、私にとっては初めて話す人だから。

 「小さい頃から教えられてきたからね。化粧くらいは自分で何とかできるわよ」

 適当・適当と笑いながらも、慣れた手付きで、どんどん鮮やかな仕上がりとなっていった。


 「ねぇ、さっき気を失った原因はあたしの言葉遣いにあるのかしら?」

 化粧をしている手を止めずに、私に話しかけてくる。確かに、原因は彼の外見からは想像できない言葉遣いにあったけれど、まさか即答できる筈も無く返答に困ってしまった。

 「や〜ねぇ。無言って事は“はい”って言ってるようなものよ」

 クスクスと、女性らしく彼は笑っていた。そんな彼の言葉に、私は思わず顔が赤くなる。

 「ほ〜んと、可愛いわねぇ。琉依には勿体無いわね」

 「ち、違います! 私は琉依の彼女なんかじゃありません!」

 ほら、やっぱり勘違いされているし。けれど、誤解されてもそんなにショックじゃなかったのは、やっぱり彼のギャップが私の中にあった彼の理想像を壊したのが原因だと思う。


 ガチャッ


 「おまっとさん……あれ? 梓、気が付いたんだ」

 ドアの開く音と共に、琉依が入ってきた。

 「はい、アオリン〜」

 私にアオリンを差し出すと、琉依はそのまま彼の方へ行った。

 「伊織には、これ」

 アオリンと共に持っていた大きな花束を、琉依は彼に渡した。花束を受け取ると、彼は中に入っていたカードを見ていた。

 「いつものよね。悪いわね」

 そう言うと、彼は花束を置いて化粧の仕上げにかかり始めた。


 「あぁ、そうだわ。ねぇ、舞台が終わったら三人でご飯食べに行きましょうよ!」

 「えっ!?」

 突然の彼の申し出に思わず変な声を出してしまい、隣にいた琉依がそれを見て笑いながら彼に“OK”のサインを出していた。そんな、私の返事も聞かないで……

 「やった! じゃあ、決まりね」

 私の気持ちを無視して二人は何か話を進めていった。行きたくない訳じゃないけど、まだこれまでの状況を把握していないのだからとりあえず落ち着きたいのに。


 コンコンッ


 「紫柳さん、お願いします」

 「は〜い。分かりました」

 スタッフの呼び出しに明るく返事すると、彼はゆっくりと立ち上がった。綺麗な衣装や化粧に包まれた彼の表情は、とても真剣でさっきまでとは違って一人の役者としての雰囲気が感じられた。

 「じゃあ、行ってくるわね」

 「おう! その美しさでババァ共を悩殺して来い!」

 琉依と拳をぶつけ合うと、彼は私に手を振ってから楽屋を後にした。

 「じゃあ、俺たちも行きましょうね」

 琉依はそばにあった私の荷物を持つと、私の前に靴を並べてくれた。こういう事も平然とやってのけるんだから……そんな目で琉依の方を見ると、こちらに気がついた琉依は笑顔を見せてくる。

 「紳士ですから」

 そんな琉依の頭を軽く叩き、私達は楽屋を後にした。

 こんにちは! 半年振りの再開です! 長い間お待たせして本当に申し訳ございません! シリーズ4作目の方に集中していてこちらの方が疎かになっていました。きちんと完結させますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!

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