第一話 非日常へ
第一話:非日常へ
普段通りの日常の一端。
「今日はどこ行く~。あっちの喫茶店に行かない?」
「いいね。何食べようか。」
人が多い大通り、一組の学校帰りの男女がどこに行くかを話し合っている。
「私、モンブラン食べたいなあ。」
「じゃあ僕は、チーズケーキにでもしようかな。」
そう決めて、二人は大通りから抜けて、小通りに入った所にある、古洒落た喫茶店へ入店する。喫茶店野中は整理整頓がなされていて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。二人は窓側の席に座って会話を始める。
「今日の数学の授業は眠かったなー。微分・積分って何。将来何の役に立つのか分からないわ。」
「まあ、何時か役に立つときが来るんじゃない?」
そんな日常会話を話していると、机の上に置かれていた二人のスマホが振動し、メールの着信音が鳴る。
「なんだろ。」
「なんだろうね。」
二人はスマホを開き、メールの差出人を確認する。そこには、自分たちが所属する組織の上司の名前があった。
二人は表向きには高校生という立場だか、裏の立場があった。その立場とは、陰陽師といった。陰陽師とは表向きには存在しない怪異を調査し、退治する専門の役職である。陰陽師は表社会には実在を公開されておらず、裏で国家を守っている存在だった。陰陽師は、陰陽協会に所属するものが大半を占めるが、陰陽協会に所属しない陰陽師も存在する。二人は、陰陽協会所属の陰陽師だった。
上司はメールにて、「和歌山県の鳴上村から怪異調査の依頼が来た。怪異調査班を組織するので二人にも、参加して欲しい。学校には公欠扱いにしてもらうよう動いている。」と記載されていた。
怪異調査班とは、陰陽協会にて組織される怪異退治の専門部隊である。陰陽協会支部長の直轄部隊であり、成績優秀な陰陽師から選抜される。大体3~4名で構成され、担当各地に派遣される。
「怪異調査班とは滅多なことじゃないね。よほど緊急性が高いことなのかな。」
「そうね。私たちまで呼ばれるってことは相当危険な異常が発生したわね。」
「時間も惜しいし、すぐに陰陽協会に向かおう。」
「分かったわ。すぐ行こ。」
二人は、そそくさとケーキを片付けると、集合時間を決め、それぞれの自宅へ向かった。自宅到着後、荷物を置き、家族へ数日間、陰陽協会の仕事を手伝うと言い残し、荷物をまとめ、集合場所へと向かった。集合場所にはすでに、久我茜が待っていた。
「待ったかい茜。」
「いいえ。そこまで待っていないわ。義道。早く陰陽協会へ向かいましょう。」
「分かった。」
陰陽協会の京都支部は、京都市上京区中務町付近で、丸太町通と美福通の交差点の南西の一角に在った。古くは、陰陽寮が位置していた場所である。現在は雑居ビルの一つに紛れていた。通常の雑居ビルと比べると敷地は大きく、階層は高い建物であった。
二人は陰陽協会京都支部ビルの7階にある支部長室の前に立った。「協会階位:丙三条義道、及び協会階位丁久我茜、入ります」と言って、その扉をノックした。コンコンコンという音が鳴ると、中から「どうぞ~。」という声が聞こえる。
陰陽協会京都支部長の名前は、星野徹といった。陰陽階位は玄武、軍の階級に寄せるなら、少将に当たる。支部長になる前は、陰陽協会の星詠寮に所属し、星詠陰陽術の復古に大きく携わったとされる。星詠寮は、占い・予知などを管理し、管轄する陰陽協会の一部署である。
二人が失礼しますと言い、中に入ると、支部長は革細工の椅子に座りながら、二人をソファーに座るよう促した。二人が席に座ると、支部長が話し始める。
「お久しぶりやね。三条くん。久我さん。元気に知っとったかい。」
「「はい。星野支部長。」」
「そうか。それはよかった。さて、今日二人を呼び出したのは、理由がある。メールでも書いたが、今回の依頼では、支部長直轄の怪異調査班が招集される。二人には怪異調査班に所属して欲しい。頼めるだろうか。」
「「分かりました。」」
「よろしい。詳細に入る。依頼地域は、和歌山県の辺境に位置する鳴上村からだ。交通機関は、最寄りの駅から、バスが出ている。その依頼内容は、鳴上村にて発生する地震の調査である。また、二人には一月前に依頼地域に向かい失踪した調査隊員の行方だ。何かここまでで質問はあるか。」
三条義道が星野徹支部長に質問する。
「質問よろしいですか。」
「どうぞ。」
「地震の調査と言いますが、地震は火山性でもなく、活断層や大陸プレートのひずみが原因ではないということですか?」
「そうだ。地震は、それらの要因ではない事象によって、発生していると考えられる。発生原因が怪異の場合は、速やかに退治して欲しい。」
「わかりました。」
久我茜からも質問が入る。
「私からも質問よろしいでしょうか。怪異調査班は私達だけなのでしょうか。この人数で討伐となると、死者が出ると思うのですが。」
「怪異調査班はあと一人入る予定だ。名前は、鷹司夕霧。階位は甲。怪異調査班の班長になるのは、彼女だ。諸君たちの上司に当たる。君たちを含めれば、戦力として十分だと思うがどうかね。」
三条義道が答える。
「あの鷹司の御令嬢の一人ですか。一緒に戦えるなんて光栄です。確か二つ名は…」
久我茜が答える。
「戦闘狂の姫戦士でしたわね。」
「もう一つ質問が有ります。移動手段はどうすればよいのでしょうか。」
「移動は、こちらで、手配した車を使い、依頼地に向かって貰う。」
星野支部長が答える。
「以上が依頼内容となる。彼女は既に、更なる依頼地の情報を得るために、本ビルの資料室に向かった。君たちもこれ以上、質問が無ければ早速向かうといい。」
「「分かりました。資料室に向かいます。」」
「最後になるが、鳴上村の件、宜しく頼む。」
二人が失礼しましたと言って、支部長室を出る。二人は、なるはやで、資料室に向かう。
二人は、資料室のあるフロアに到着する。資料室は、図書室に併設されている。
資料室の扉を開けると、古書のコーヒーのような匂いが鼻を覆い、棚には沢山の本が収納されている。そんな本棚と本棚の通路に、深緑のような髪色をした少女が古書を立ち読みしている。髪型はショートヘア、衣服は淡い水色のワンピースを着ている。二人が少女の方に向かうと、少女は本を閉じ、顔を上げ、口を開く。
「あなた達が今回の怪異調査班のメンバー?んー。なんかパッとしないわね。」
「私の足を引っ張らなければ、別にいいけど。とりあえず、あなたの名前と所属と階位を教えてくれる?」
「パッとしないとは失礼ですが、私たちの方が階位低いので、まあいいです。失礼しました。私の名前は三条義道。陰陽階位は丙、所属は仏教経典寮です。よろしくお願いします。」
「私の名前は、久我茜。陰陽階位は丁、所属は呪印寮です。あなたのお噂は兼々。一緒に活動出来て光栄です。よろしくお願いします。」
「そう。二人とも立場を弁えた発言はできるようね。さて、早速依頼があった鳴上村について調べたことを伝えましょう。」
「鳴上村の由来は、近くの山に由来するようね。山の名前は、明道山というそうよ。村人は、その山の麓に神社を建立し、その山に居るとされる神を崇めているようね。ただし、神の名前は、陰陽協会の資料には存在しなかったわ。どこかで散逸したか。それとも、意図的に情報が抹消されたかは分からなかったわ。以上よ。二人は、何か調べたい事象はあるかしら。」
「私はありません。」
「私もありません。」
「そうか。分かったわ。質問が無いなら、早速依頼地へ向かおうと思うわ。いいわね?」
「「はい。」」
三人は資料室から出て、陰陽協会京都支部ビルの外に向かう。ロビー前の自動扉が開くと、其処には、支部長が手配したと思われる車があった。三人は、車に自身の仕事道具と着替え等のキャリーケースを入れ、車に乗る。車は、和歌山の鳴上村に向かって走り出す。
【tips】陰陽協会の部署
呪印寮(呪印や呪いを管轄する)
仏教経典寮(仏教由来の呪術や遺物を管轄する)
陰陽階位
丙 少尉
丁 軍曹
おはこんちは。著者の盟神探湯と言います。処女作です。元々、オリジナルTRPGの作成をしており、その設定を流用しています。小説家として、至らないところもあるでしょうが、温かい目で見てくれると幸いです。




