第1話 追放
「お前の上位互換スキル持ちを雇った。だから明日から来なくていいぞ!」
僕、帰来誠は日本で最大手のクラン『漆黒の瞬き』で事務員として働いている。
僕のスキルは【リターンLv1】。
できることは消耗したり壊れたりした武器なんかを新品に戻すことだ。
あんまり頭のよくない僕は何とかギリギリの成績で入った高校をこれまたギリギリの成績で卒業した。
大学に行く見込みもないのでダンジョンで稼ごうと思ったが、戦闘向きでないこのスキルのためダンジョンの資源を獲得する探索者の道も見込みが薄い。
でも僕のスキルならダンジョンで得られる一品物の何億円もするような武器でも新品に戻せるんだからクランの経済面に貢献できるはずと思って、それをアピールしたらクランに採用されたんだ。
そしてクランの物品の管理と修理をずっと任されていた。
けれども僕のスキルはちょっと弱点があってもしかしたらこういうこともあるのかもしれないと思っていたけど……。
「そんな、僕の上位互換スキルって、どういうことですか?」
「おう、【グランドリペア】つってな、お前のスキルと違って使える回数が多いんだよ。しかもお前と同じく神器さえも修復できるのも確認済みだ」
そう、僕のスキルにはレベル表記がある。
【リターンLv1】では1日に1回しか使うことができない。
それでも高価な武器を新品にできるんだから十分に価値があるはずだ。
だから僕も食い下がる。
だいたいここでクビを受け入れたら生活ができなくなってしまう。
「確かに1日1回ですけど、それでもその【グランドリペア】の人の予備くらいの価値はあります! だから僕を追放しないでください!」
「あのなあ、お前クランに入ってもう1年にもなるがスキルのレベル上がらないじゃねえか。いつレベルが上がるんだ? 上がったとして使用回数増えるのか?」
「それは……わかりませんけど……」
「それにな、てめえは気に入らなかったんだよ、前からな」
「それはいったいどういう意味ですか……?」
僕が理由にもならない感情論をぶつけられ首をかしげていたところ、後ろから人の気配がした。
僕たちがいる部屋に入ってきたのは黒羽里香、僕の恋人だ。
彼女は幼馴染でいっしょに探索者になろうと誓って僕と同時にクラン『漆黒の瞬き』に入った。
だが事務員の僕と違って彼女は探索者としての採用。
なぜなら彼女のもつスキルは【黒衣の賢者】。
ただの【賢者】なら日本にもそれなりにいるが彼女のはその上位のスキル。
そのうえ採用当初から【四大魔法Lv5】【闇魔法Lv7】【経験値増加LvMAX】【魔力回復】【魔力強化】【詠唱破棄】といったスキルを持っていた彼女が『僕といっしょじゃなきゃクランに入らない』とまで言ってくれたんだ。
だが、その彼女は僕を無視して僕の目の前の男にしなだれかかった。
唖然とする僕。
「ねえ真也、ちゃんとお別れの言葉を言ってあげたの~?」
里香の肩の上から彼女の大きな胸を片手で鷲掴みにしているその男は僕より5つ年上の京極真也。
あっという間にクランの若きエースとなり日本の最難関ダンジョンの攻略階層を更新し続ける里香のパーティメンバーの斥候役で【ファシネイトアサシン】という【アサシン】の上位スキルもちだ。
この二人が僕の目の前でいちゃついている。
信じられない。
夢なら早くさめてくれ。
「里香、なんで真也さんと……」
「誠、お前まだ里香とヤッてなかったんだってな! もしかしてお前不能だったのか? まあ里香の処女はいただいたよ。とっくにヤッてると思ってたからもうけもんだったな。だがよ、その程度のスキルでエースの里香の彼氏面しているお前はずっと気に食わなかったんだ。お前の後任が見つかったからようやく追い出せるぜ。じゃあな」
「お、おい、里香、ホントなのか?」
「そうだよ、いまごろ気がついたの? 誠は私の武器とか優先して直してくれるから別れずにいたんだよ。でももうそれも終わりね。それにね、なかなか手を出してこない誠も悪いのよ。私のことを不安にさせていたんだから、私はそんなに魅力なかった?」
違うんだ。
初めての彼女で大事にしていたし、彼女のおまけでクランに入ったことで陰で「コネ野郎」と言われていたのもわかっていた。
だからちょっと彼女に気後れしていたというのもあった。
さらに真也は僕に追い打ちをかけてきた。
「大事な女ならきちっとモノにしておかねえとなあ~? うかうかしててそれをしなかったお前が悪いんだぜ? じゃあな、負け犬。このクランにはふさわしくねえんだよ、とっとと出ていけ!!」
こうして僕は彼女と仕事の両方を失った。
いつもお読みいただきありがとうございます!




