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第7話「辞職届と非国民の烙印」

第7話「辞職届と非国民の烙印」


王都に戻ると、街は花と旗で埋め尽くされていた。

「勇者、よくぞ守った!」

見知らぬ人間が手を振り、子供がサインをねだってくる。

新聞には「ガム島奪還」の文字。俺の名前はどこにもない。

レンヤだけが、戦勝凱旋パレードの先頭で手を振っていた。

「……もう、いいだろ」

その翌朝、俺は勇者制度推進局に足を運んだ。

「勇者職、辞します」

担当官の表情が凍りつく。

「な、なにを言っている!? 今や君は“戦功勇者”だぞ? 名誉だぞ! 勲章もつく!」

「俺は戦ってきた。でも、そのたびにノルマ未達、装備弁償、証拠不備……

挙句、勝っても認められず、負ければ切り捨てだ。もうたくさんだ」

提出した辞職届は、その場で破られた。

「非国民が……! お前のような裏切り者に、国を背負う資格などない!」

噂はすぐに広まった。かつて拍手を送っていた人々の視線が、石のように冷たい。

「勇者なのに逃げたんだってさ」

「魔王に魂を売ったかもな」

「恩知らずめ」

王国が作り出した“勇者像”から外れた瞬間、人は勇者を見捨てる。

俺は装備を返却し、リース契約の精算をして、街を去った。

自由は手に入れた。だが、その代償に、名も、居場所も、社会的信用もすべてを失った。

勇者という看板がなくなった今、俺はただの人間だ。

さて……これから、どう生きていくか。

(つづく)


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