第11話 鋼の閃光 ②
アキヒロとセレナは宮崎先生の後ろを、鬱蒼とした森の中を進んだ。彼らを包むのは静寂のみで、足元の木の葉が擦れる音と、微かな自然の音だけが聞こえていた。
教官は軽快かつ自信に満ちた足取りで動き、その鋭い両目は絶えず周囲を走査し、あらゆる危険の兆候を探していた。アキヒロは彼女に追いつこうと努め、その動き方や周囲の環境の読み取り方から学んでいた。
一方、セレナはいつものように静かに歩いていたが、アキヒロは彼女が普段よりも警戒心を強めていることに気づいた。まるで、現れる前に潜在的な脅威を感じ取っているかのようだ。彼女の氷の刃は召喚されていなかったが、その手は常にそれらが普段現れる場所の近くにあった。
「我々が遭遇した星喰狼は…『スカルカー』タイプだった」宮崎先生は振り返らずに、不意に言った。「彼らは集団で狩りをする種で、速さと奇襲に頼る。通常は小規模な群れで行動し、弱く孤立した獲物を狙う。」
「先生、この近くにもっといると思われますか?」アキヒロが尋ねた。
「可能性はある」宮崎先生は答えた。「今の我々の任務は、彼らが村に近づいていないことを確認し、彼らの次の攻撃計画を阻止することだ。この地域を徹底的に捜索する必要がある。」
彼らは慎重に進み続け、木々の間の狭い小道を進み、奇妙な兆候――異常な足跡、折れた枝、あるいは星喰狼の存在を示す可能性のあるあらゆる痕跡――を調べた。
「ヤマト」宮崎先生が言った。「君のゲートを開く能力…我々の位置を明かさずに、短距離偵察に使えるか?」
アキヒロは一瞬考えた。「できると思います、先生。近くに、覗き込むのにやっと足りるくらいの小さなゲートを開くことができます。しかし、集中力が必要ですし、木々が密集している場所ではあまり多くは見えないかもしれません。」
「試してみろ」宮崎先生は、丘の斜面にある小さな洞窟か岩の窪みのように見える場所を指差して言った。「ああいう場所は、星喰狼が一時的な巣としてよく使う。」
アキヒロは集中し、数メートル先の、岩の窪みの入り口近くに硬貨ほどの大きさの小さなゲートを開いた。そこから覗き込む。中は暗かったが、散らばった骨や毛皮の残骸がいくつか見えた。
「中に…何かあります」アキヒロは小声で言った。「放棄された巣のようです。動きは見えません。」
「良い」宮崎先生は言った。「これは危険を冒さずに偵察するのに有効な方法だ。この技術を磨き続けろ。」
「は、はい」ヤマトは答えた。
アキヒロはその称賛に少し誇らしさを感じた。最初は奇妙で実用的でないように思えた自分の能力が、本当に価値のある使い方をできるかもしれないと感じ始めていた。
彼らは地域の捜索を続け、星喰狼が隠れていそうな他のいくつかの場所を調べた。一度、セレナが新しい足跡を発見した。それは彼らが遭遇したスカルカーのものより少し大きかった。
「この足跡…違うように見えるわ」セレナは屈み込み、注意深くそれを調べながら言った。「もっと深くて広い。おそらく、別の種類の星喰狼ね。」
宮崎先生は慎重に足跡を調べた。「その通りだ、ヴァルキリー。これは『ブルート』の足跡だ。彼らはスカルカーよりも体が大きく、物理的に強いが、少し動きが鈍く、知能も低い。通常は単独かペアで行動する。」
「近くにいると思いますか?」アキヒロが心配そうに尋ねた。
「足跡は新しいようだ」宮崎先生は言った。「より一層注意しなければならない。」
彼らはさらにゆっくりと動き、五感を研ぎ澄ませた。アキヒロは再び緊張が高まるのを感じていた。「ブルート」タイプの星喰狼と対峙するという考えは全く心地よいものではなかった。先ほど弱いスカルカーとの戦いで苦戦したのだ。だから、獰猛なブルートと対峙するという考えは、彼の心に恐怖を呼び起こした。
さらに約30分捜索した後、彼らは狭い谷を見下ろす小さな崖の端に到着した。宮崎先生は突然立ち止まり、手を挙げた。
「あそこだ」彼女は谷底を指差しながら囁いた。
アキヒロとセレナは慎重に見た。谷底の、小さな小川の近くに、巨大な星喰狼がいた。それは確かにスカルカーよりも大きく、恐ろしかった。その皮膚は濃い灰色で、骨のような突起で覆われ、巨大な爪を持つ力強い両腕を持っていた。それは小川から水を飲んでおり、彼らの存在には気づいていないようだった。
「ブルートだ」宮崎先生は確認した。「そして単独だ。君たちの能力を再び試す良い機会だが、今回は、より良い連携と熟考された戦術を見たい。」
アキヒロはセレナを見た。これは新たな挑戦だった。ブルートはスカルカーよりもずっと強そうだ。
「君たちの計画は?」宮崎先生は二人を見ながら尋ねた。
アキヒロは素早く考えた。「もし動きが鈍くて知能が低いなら、それを我々の有利に使えるかもしれません。ヴァルキリーさん、動きが制限される狭い場所に誘い込むことはできますか?」
「できるわ」セレナは言った。「でも、攻撃はとても強力でしょう。支援が必要になるわ。」
「ゲートを使って混乱させ、攻撃の隙を作るように試みます」アキヒロは言った。「そして、もしかしたら…機会があれば、訓練した連携戦術の一部を試せるかもしれません。」
「それは理にかなっているようだ」宮崎先生は言った。「だが忘れるな、ブルートは圧倒的な力に頼る。あまり近づかせすぎるな。そして、状況が危険になったら、私が介入する。」
アキヒロとセレナは頷いた。
セレナは慎重に谷へと下り始め、物音を立てないように努めた。十分に近づいたとき、彼女はブルートの注意を引くために、その近くに小さな氷の塊を放った。
ブルートは頭を上げ、セレナを見ると怒りの咆哮を上げた。そして、計画通り、彼女に向かって突進し始めた。その重い足取りで地面が揺れる。
「来るわ!」セレナは、計画通り、いくつかの大きな岩の間の狭い通路へと後退しながら言った。
アキヒロと宮崎先生は上から見守っていた。
「準備しろ、ヤマト」宮崎先生は言った。「君の出番だ。」
ブルートがセレナを追って狭い通路に入ると、アキヒロは岩壁や地面に、その周囲に小さなゲートを開閉し始めた。ゲートは攻撃を目的としたものではなく、獣を混乱させ、注意をそらすためのものだった。
ブルートは怒りに咆哮し、現れては消えるゲートに拳を叩きつけていたが、セレナの位置を正確に特定するのは困難だった。
「今よ、ヴァルキリーさん!」アキヒロが叫んだ。
セレナはブルートの混乱を利用した。彼女は側面の岩の一つに飛び乗り、そして上から襲いかかり、二本の剣が輝いた。彼女はブルートの背中と肩に素早い数回の打撃を加え、防御が薄そうな箇所を狙った。
ブルートは苦痛に呻き、激しく振り返り、セレナを捕まえようとした。しかし、彼女は非常に機敏で、その攻撃を容易にかわした。
「ヤマト、奴の真後ろにゲートを開いて、私の方に向けてくれる?」セレナが叫んだ。
アキヒロは彼女が何をしたいのか理解した。これが連携戦術だった。
アキヒロは集中し、ブルートの真後ろにゲートを開き、セレナが準備している彼の前にもう一つのゲートを開いた。
「準備完了!」
セレナは目の前のゲートに向かって強力な氷のエネルギー波を放った。波は歪んだ空間を通り抜け、ブルートの後ろのゲートから現れ、その背中を直撃した!
カシャァァァァァッ!
ブルートの背中の大部分が凍りつき、獣は怒りの轟音を上げた。その動きは著しく鈍くなった。
「見事だ!」宮崎先生が上から叫んだ。「とどめを刺せ!」
セレナは時間を無駄にしなかった。動きの鈍ったブルートに突進し、高く跳び上がり、そして二本の剣をまとめて力強くその頭に振り下ろした。
ゴキャァァァァァッ!
ブルートは力なく地面に倒れ、二度と動かなかった。
アキヒロとセレナは息を切らし、疲労を感じながら立っていた。彼らは、チームワークと連携戦術のおかげで、スカルカーよりもはるかに強力な獣を倒すことに成功したのだ。
宮崎先生が崖から下りてきて彼らに合流した。「非常によくやった」彼女は、声に感嘆の色を浮かべて言った。「短期間で大きな進歩を見せた。君たちの連携は素晴らしく、能力の使い方も賢明だった。」
アキヒロとセレナはその言葉に誇りを感じた。
「だが忘れるな」彼女は付け加えた。「これは一体の星喰狼に過ぎない。真の脅威はまだ存在している。そして、我々は任務を続けなければならない。」
アキヒロとセレナは頷いた。彼女が正しいことを知っていた。
彼らは午後の残りの時間、地域の捜索を続けた。他の星喰狼には遭遇せず、村は当面安全なようだった。
太陽が沈み始めた頃、宮崎先生は通信機で主要集合地点への帰還命令を受けた。他のチームも任務を完了しており、当面は状況がコントロール下にあるようだった。
彼らは集合地点に戻り、そこでは他の一年生チームが待っていた。全員の顔に疲労の色が見えたが、達成感もあった。彼らは真の危険に直面し、協力し、そして生き残ったのだ。
ヤマトは隣に立つセレナを見た。彼女の銀色の髪が夕日に輝いている。アカデミーでの最初の日々から、彼らは長い道のりを歩んできた。もはや単なるルームメイトではなく、互いを信頼し、支え合う真のチームとなっていた。
この任務は始まりに過ぎなかった。そしてアキヒロは、さらなる挑戦が彼らを待ち受けていることを知っていた。しかし、彼はパニックを感じなかった。セレナ・ヴァルキリーが彼の傍らで戦い、そして彼らを繋ぐ「ゼロゲート」がある限り、運命が彼らの道に投げかけるどんなものにも、常に立ち向かうことができるだろう。