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3話 戦闘

颯馬は、家の静けさに耐えられなくなった。その晩、寝室の静寂を破るように、こっそりとベッドから抜け出した。窓の外には星が煌めき、夜の冷たい空気が部屋の中に流れ込んでいる。家の中での生活が決して嫌いなわけではなかったが、今はどうしても外の世界に触れてみたかった。


僕の力がどこまで通用するのか、試してみたくてたまらなかった。家族に縛られず、自分のペースで生きてみたかった。そう思うと、胸が高鳴った。


家の門を抜けると、町の街灯がぼんやりと灯り、夜の街が静かに息をしている。しばらく歩いて、ひっそりとした通りに入ると、少し先に冒険者ギルドの看板が見えた。その光景を見て、颯馬は一瞬躊躇ったが、すぐに気を取り直して中に入った。


ギルド内は思ったよりも賑やかだった。冒険者たちがクエストの情報を交換し合い、商人たちが武器や道具を並べている。受付の女性に軽く挨拶をして、必要な手続きを済ませ、ついに自分のステータスを公開することになった。


「名前とクラス、そしてステータスを確認させていただきます。」


名前を告げ、ステータスを確認するために手をかざした瞬間、画面に表示されたのは…予想以上の数値だった。


名前: 颯馬


クラス: 魔法使い(賢者)


レベル: 1


HP: 500/500


MP: 1000/1000


力: 50


敏捷: 80


耐久: 60


魔力: 1000


スキル:


鑑定 (★★★★★)


賢者 (★★★★★★★★★★)


魔法の師範 (★★★★★★★★)


魔法:火、水、風、土、光、闇、雷、氷、岩、聖、呪、無(全魔法使用可)


「は…?」


受付の女性は、言葉を失った。


周囲の冒険者たちもざわめき始める。


「おい、見ろよ…スキルが★5だと? それに、賢者のスキルが★10って正気か?」


「バカ言え、通常のスキルは★1が基本だ。ギルドの熟練者でも★3あれば大したもんだぞ!」


「ってことは、あいつ…新人じゃないのか?」


「いや、レベル1って書いてあるぞ。こんなのありえない…」


ギルド内は騒然となった。たまたま隣でステータスを登録していた新人冒険者の男が、自分のスキル欄を見比べて青ざめる。


「俺なんて『剣術(★1)』と『俊敏(★1)』だけなのに…」


受付の女性が慌てて確認し、目を丸くした。


「こんな数値、今まで見たことがありません…通常、スキルは★1が基本で、最も高い人でもせいぜい★3や★4なのに… それに、このスキルの組み合わせ…あなた、本当にレベル1なのですか?」


颯馬は戸惑いながらも、静かに頷いた。


「ええ、今日が初めてです。」


その言葉に、ギルド全体がさらにどよめく。


「初めてでこのステータス…? 何かの冗談か?」


「魔法、全属性使用可だと…? 賢者のスキルは★10だし、魔法の師範まで持っている…こいつ、一体何者なんだ?」


周囲の視線が颯馬に集中する。ギルドの中には、彼を勧誘しようとする者も出てきた。


「おい、お前! うちのギルドに来ないか? 一緒に世界を目指そう!」


「いやいや、うちのギルドならもっと待遇いいぞ! パーティを組めば最強の布陣が作れる!」


颯馬は、勧誘の声を聞きながら、心の中ですでに決めていた。


「1人でやってみる。どこまでできるか、自分の力を試したい。」


そう思い、彼はギルド内で目をつけたクエストを選んだ。


「このクエストにするか。」


ゴブリンの集落に向かう、低レベルのモンスター退治の依頼だった。経験も積めるだろうし、危険も少ない。しかし、それでも油断はできない。颯馬は決意を固め、町の外れにある洞窟へと向かう準備をした。


洞窟に到着すると、夜の空気はひんやりとしていて、周囲は静寂に包まれていた。洞窟の入り口が暗闇の中にぽっかりと開いている。颯馬は深呼吸をし、足を踏み入れた。


「まずは…どんなもんか見てみよう。」


周囲の暗闇に目を慣らしながら、洞窟内を慎重に進んだ。すぐにゴブリンの気配を感じ取る。『鑑定』スキルを使ってみると、ゴブリンたちは思ったよりも弱かった。


ゴブリン


レベル:3


HP:50/50


攻撃力:10


防御力:5


特徴:低知能、集団行動


「弱いな…」


颯馬は呟きながら、手にした魔法の杖を握りしめる。しばらく進むと、ゴブリンたちが数匹、洞窟の奥から出てきた。颯馬は一歩踏み出し、まずは簡単な風の魔法を使った。


「風刃!」


強力な風の刃がゴブリンたちに向かって飛んでいき、数匹のゴブリンが一撃で倒れる。残りのゴブリンは、すぐに反撃に出るが、颯馬は素早く次の魔法を唱えた。


「火球!」


火の球が飛び、残りのゴブリンたちを焼き尽くす。あっという間に戦闘は終わり、颯馬は静かに周囲を見渡した。


「これが…僕の力か。」


颯馬は自分の力に驚きながらも、少しばかりの満足感を覚えていた。その夜、彼は初めて自分だけの冒険を終え、満足げに町へ戻るのだった。

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