第9章 (返
この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ございません。
2026年12月28日
東京駅 10時22分(発 きらめき509号
やっと乗れたというか、肩の荷が下せるというか・・・やっと報告が出来るといったほうが正しいか。1月頃に乗車した時とはだいぶ違って、周りの賑やかさも祝福してるように感じる。
自分の席に着いて少しすると列車が動きだした。駅の売店や人々が後ろへ徐々に流れていき、ホームを離れると山手線が走っているのが見えた。高層ビル群が徐々にマンションっぽい建物に変わる頃、音楽が流れる。確か北陸・・・何とかだったかな。
車内アナウンス『本日も北陸新幹線をご利用下さいまして、ありがとうございます。この電車は、きらめき号、長野経由金沢行きです。全車指定席で自由席はございません。次は上野に止まります。』
Train announcements『Ladies and gentlemen, welcome on board the Hokuriku Shinkansen. This is the KIRAMEKI Super Express bound for Kanazawa via Nagano. The next stop will be Ueno.』
とりあえず、羽衣会のLINEに新幹線に乗ったと報告。
和義【今から向かう。やっと報告出来ると思うと涙が】
恵美香【お疲れ様っす!ピエン( ;∀;)】
優実【はーい。読書は遅いな!半日遅れなのはカズピーだけだよービエン!( `ー´)ノ】
信之【こっちは昨日から恵さんを接待してた。誰か助けてブェッ!(/・ω・)/】
恵美香【無理っす!】
優実【全財産使い果たせ!今こそ!( ゜Д゜)】
和義『・・・・・・・フフッ』
彩音ちゃん、ごめんね。やっと報告出来るよ。子供達は元気に登校してる。工事の下請けは孫請けまでバッサリで見直しやら社長の逮捕やら。ゴチャゴチャしたけど、崩落事故で巻き込まれた子供達に対して国から給付される保証もだいぶ手厚いところまで行ったよ。たった1年だけど色々とあったんだ。逮捕って言えば羽生田議員も捕まったよ。日自党じゃなくて立進党の議員に変わった後なんだけどね。一杯、いーーーっぱい報告したい事があるんだ。もっと、もーーーっと。
・・・・・・・・着いたら話そうと思う。それまであと少し。もう少しだから待ってて。彩音ちゃん。
今、向かってるから。皆と一緒にまた話そう。
座席に深く座り一息ついた。
14時32分 長野県長野市差出南 霊山庭寺墓地
羽衣会+1と駐車場で待ち合わせして、住職さんに案内してもらい、彩音ちゃんのお墓へ着く。
山の傾斜にある御寺はとても静かで、手桶場から見える景色は長野を一望出来た。まるでご先祖様が皆を見守ってるような・・・暖かい気持ちになった。救われた気分になっていた。
違う。救われたかったんだ。この1年ずっと自分を責めていた。
皆で昨日降った雪を落として、お墓を拭いて・・・涙をこぼしながら読書新聞を供えた。敵討ちじゃないけど、こんなやり方しか出来ない自分が恥ずかしかった。どこかのネットに書いてあった事をふと思い出す。家族を救いたくて医者になったけど、救えなかったという話。一番助けたかった人を助けられなかった。そんな悲しみを嘘くさいと一蹴していた。
今はよく分かる。救われたかったんじゃない。救いたかったんだ。きっと今頃生きていたら・・・最年少でキャップになってたかもしれない。夕日やめて読書に来てたかな?後悔ばかりが1年ずっと自分の背後を付きまとっていた。
お線香に火を灯して、皆で手を合わせる。本当は彩音ちゃんのお母さんにも報告したかったけど、辛い思いをさせたくないからって、後回しに。
彩音ちゃん。やったよ。倒したよ。奴は今頃檻の中だよ。八王子の崩落事故で巻き込まれた子供達はみんな元気に学校に登校している。家族は国からの給付金を受けて子供の成長をこれからも支えながら見守る事が出来る。そうそう、山破元総理なんだけど・・・元総理ね。も・と!。野党がそろい踏みして全員で解散を叩きつけた。そこからはもぅしっちゃかめっちゃかでさ、参議院議員の連中も造反して離党。片岡さつき議員とかへいせいに入党したりとか色々あったんだよ。羽生田議員がさ、立進党に入ったんだけど、衆議院選が熱かったね。前回の2024年の時は禊だ~って無所属だったけど、立進党の公認を受けてまた再当選。それで・・・
あ、そうだ。年金機構が解体されたというか、民営化されたんだよ!なんでも昔の中曽根内閣?の時の再来だって。バブルを呼び込むんだ~ってさ。門林総理大臣がさ、その中曽根内閣の時にやってた国鉄・電電公社・専売公社を民営化した時と同じように。日本航空の民営化とか大泉元総理がやった郵政民営化の時と同じようにさ。それでただ年金機構を民営化させると言うよりも、アブラックとAEG損害保険株式会社・SBE損害保険会社・あいたいニッセイ同和損保・アキサ損害保険株式会社の5社で建て直しって言うのかな?それで出来たのが、JILS株式会社(Japan Insurance life Service)って。なんだか御大層だけどお役人が好きそうで困っちゃうよね。
でさ、この5社が多少ね、権力を握れるような法案を通して無理矢理年金機構を押し付けたんだけど、その時に斡旋したのがバレて羽生田議員は逮捕。公安の動きが早かったんだ。
彩音ちゃん。後輩の恵さんだよ。覚えてるかな?あの人さ、実は公安で若手のエースなんだって。彩音ちゃんと一緒だね・・・・グスッ
涙がポツリ ポツリと零れ落ちた。
何で、もっと話し合えなかったんだろう。きっと生きてたら今頃・・・望んだ世界を眺める事が出来たんだよ。誰も恨んでないよ。誰もガッカリなんてしてないよ。もっと自分に自信もってよ。ダメだよそんな結末なんて。記事にして欲しかったよ。もっと読みたかったって恵美香ちゃんも言ってたよ。斎藤先輩だって優実さんだって・・・僕だって・・・・・ごめんね。いつも困ると頼ってばかりで。
今日は報告するつもりだったんだ。報告とか言っておきながらまた頼ろうとしてる。ごめんね。本当にごめんね。そんなつもりじゃなかった。怖かった。
これも違うね。きっと一番怖かったのは彩音さんだよね。
優実『そろそろ、いこっか?・・・・また来るね彩音』
恵美香『うん・・・・・加地先輩に聞こえたかな?・・・・見ていてくれると良いな』
信之『・・・・うん、次は好物の胡桃の醍醐味を持ってくる。待っててくれ』
それぞれが、彩音のお墓に向かって声をかける。
恵『それホテルの売店にあったやつか。何故買わなかった?』
信之『いや・・・何て言うか色々と考えてたら忘れてて・・・』
恵美香『恵っち!逮捕だよ逮捕。怠惰だから逮捕しちゃっていいよ!・・・ふふっ』
信之『ええええ!なんだよその罪状!聞いた事ないよ』
優実『お~、んじゃ明後日あたりの朝刊に間に合わせるから、さっさと始めちゃって・・・ぷっ』
恵『んじゃ長野県警に通報して手柄譲って、私はまた貸しを作って・・・くっくっく』
長野の綺麗な景色を見渡しながら階段を降りる優実・恵美香・信之・恵。
和義『次は、もう少し・・・色々と報告したいな・・・・・いや、もっと話をしよう。きっと驚く』
信之『和義~、いくぞ~。助けてくれよ~』
和義『え?先輩、逮捕されるんですか?じゃあ~彩音ちゃんに報告しときますね~』
少し笑いながら和義も階段を降りる。
ホテルまでのレンタカー代は公安が領収書切ってくれるんだって彩音ちゃんに言ったら何て言ってたかな・・・きっとお菓子もって言うだろうな。