弟漆章
この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ございません。
2025年10月31日(金曜日)午後19時18分
彩音『ねぇ、分かってる?先月に言ってた話。それにこの間の羽衣会のアレは何?』
和義『・・・・ごめん、うまく説明できない』
彩音も和義も自分の部屋から電話を掛けている。
彩音『斎藤先輩・・・やってるんでしょ・・・盗聴』
和義『・・・・だと、思う』
彩音『わたしに相談されても困るよ。どうするつもりなの?』
和義『黙るしかないのかな。何かあったらって思うと怖いけど』
彩音『こっちも急に変な事になって大変なのに・・・大泉議員のせいなのか分からないけど、急に政府の顔色を伺う必要は無いって感じで』
和義『・・・え?』
彩音『羽生田議員の話は流されたのに、山破総裁は叩いて良いんだって。・・・意味がわからない』
和義『それって・・・・何で急に?』
彩音『分からないよ。盗聴内容知ってるんだったら何か分かるんじゃない?』
少し考えて和義は一つの仮説に辿り着く。
沈みゆく政府は予定されていると。事の発端は間違いなく裏金問題。そして総理総裁選での旧体制への鉄槌。さらに衆議院選での連立与党大敗。さらに参議院選前の造反と離党。追い打ちをかけるような連立与党の更なる大連敗。その後の予定は?
内閣不信任案で強制的に店じまいをするのか。内閣総辞職で建て直すのか。
だが、これだけ日自党と創明党の議員が減れば内閣総辞職で首をすげかえようにも、任せられるだけの頭数が無い。そうなると伝家の宝刀は使えない。69条で強制的に再び国民に信を問うと言って3年連続の総選挙って話になる。その場合はきっと・・・造反と離党、そして代表を総理にとか言い出す。小選挙区で数を持ってる人は特にそう言うだろう。
議員全員が一つの共通意識を持っている。それは前回の選挙が近ければ近いほど数が総体的に減ったとしても(※投票率)負けはしないと。だから保険で他党に鞍替えする事で更に票の獲得と、違う形にせよ与党に入るという大義名分は成り立つ訳だ。
ただし、これは鞍替え先を間違えれば票を失いかねない。比例票を見て地区の判断をする可能性は高い。以前の選挙は全てデモンストレーションで2025年末から26年の選挙が本番と言う事なのだろうか?・・・・それでは情報バラエティーで言われていた背任行為というツッコミもあながち間違ってない。
言うべきだろうか・・・夕日新聞の態度の急変は、どっかの大物議員と繋がっていて前回はマズイと判断したから加地さんは止められたかもしれないし、今は鞍替え組の指示でGOサインが出たのかもしれないって。
和義『なんで叩いて良いんだろうな・・・・こっちじゃ分からないや』
彩音『嘘が下手だね・・・盗聴内容知ってるんだったら造反と離党の話、知ってたでしょ。駆け出し記者の後輩がね、スクープだって。油性ペンで消す前の収支報告書の写し持ってきて。山破総理の事務所に友達が潜り込んでるんだって・・・木蓮会って。多額の寄付があったんだって・・・・友達の母親が地元でパン屋やってて息子が会計士の資格取ったのに仕事無いのは可哀想だからって。それで地元の議員さんに頼んで仕事紹介してもらって、ちっちゃい事務所だけど会計士やってるんだって』
和義『・・・・・に・・・二菱商事・・・・』
彩音『・・・・やっぱり、知ってるじゃない』
和義『いや、あやちゃ・・』
彩音『優しいんだね・・・たぶん(ッ)・・・ぐらがえずる(ック)・・・(ヒック)ぎいんのながに・・・(ヒッ)・・・・(ゥ)・・・・わだじ・・・・』
和義『違う!違うよ!羽生田議員と夕日が繋がってる証拠は見つかってない!!!』
彩音『!!!!!!!・・・・・ぅぞっ!・・ヒッ・・・・・ヅギ!!・・・・うぅわぁ~』ガガッ!
ガシャン!!! (わぁぁぁぁ・・・・私のせいなんだぁぁぁ・・・記事を出して追及できたらぁぁぁ・・・)ガシャン!!! ドン! (ごめんなさぃぃぃ・・・)ガガン!!!
和義『あや・・ちゃん・・・あやちゃん!!!!!!!!!』ドッ・・・・・
ツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・・プップップッ・・・・・ピロン
何も言えなくなった。読書記者なのに。友達にすら真実を言えなかった。
いや、言えなかったんじゃない。 遠まわしに言ったんだ。 自殺に追いやる言葉を。
2025年11月14日
デスク『少し強いが、良いんじゃないか?』
斎藤『強いですかね・・・・割と手ぬるく手合わせ気分で執筆しましたが』
デスク『強いなぁ・・・特に最後のさ。銃剣の上に平和ってフレーズよ。まぁウチのやり方っぽいけどね。』
斎藤『まぁ記事というか、社説ですから。これぐらいの遊び心と言いますか』
デスク『いいよ。俺は好きだよ?こういうの。わりかしビシビシした社説って』
新聞青旗本社 政治経済部
デスク『それに何気にウチの株持ち上げようとしてるよね。途中の大々的に取り上げたのは我々が最初だったんだぞ~ってね』
斎藤『事実なので。そこは事実として認識してもらわないと世間の人もただの過激派と勘違いされては困るので。正しい認識を植え付けないと』
デスク『斎藤ちゃん・・・うちの新聞読んでる人は正しい認識持ってるから大丈夫だよ』
斎藤『辞めた方が・・・良かったですか?』
デスク『いや、過去の栄光も何とやらで忘れられちゃ困るからね。言い続けてこ?』
斎藤『はい』
2025年11月26日(水曜日)
夕日新聞本社 政治部
中島『おい、誰か加地見たか?』
男性記者『え?いやぁ・・・見てないっすね』
女性記者『・・・あんた加地先輩の事いつも後ろ付いて回って、スクープです!今度食事にでもぉって付きまとったでしょ』
男性記者『え!?いやいやいやいや!そんなことしてねーーーーっすよ!・・・そりゃぁ・・加地先輩可愛いって思うし・・・いい香りするし・・・』
女性記者『・・・・嘘だよ・・・きしょいな』
中島『・・・・・やめてくれよ、タダでさえウチは配達員の犯罪率高いんだからさ』
男性記者『えっ・・・ちょっ・・・や、辞めて下さいよ・・・パワハラっすよ・・・いじめ?』
中島『・・・・・とりあえず何も連絡ないんだな?』
女性記者『ですね~。確か何日前でしたっけ。木蓮会の記事を出して洗馬デスクが、ん~やっぱ上手いな。分かるかぁあ?この文言のチョイス。こういうのをセンスって言うんだぞ?わかるか?って』
女性記者が男性記者のお尻を掴み
男性記者『ぅあっ・・・ぅん』
女性記者『気合入れて上手いとこ真似しろよ~??』
中島『・・・・何やってんだおまえら・・・・とりあえず加地のカード寄越せ。多分次のネタ追っかけてるんだろ。俺がタイムカード切っとく』
女性記者『はい、これです』 加地の社員カードを中島に渡すと同時に男性記者は解放された。
男性記者『いてて・・・加地さん何を追っかけてるんです?』
中島『・・・これ』 週刊紙 週刊文秋 見出し【外務省と防衛省が沖縄県知事と密会!突如降って湧いた長崎県北松浦郡・小値賀町の斑島 米軍基地増設の危険な話】
男性記者『・・・・え、支部で良いんじゃないですかね?』
中島『最近フラストレーション溜まってただろ。加地はどっちかっていうと政局を眺めるよりも地域密着型のユーザービリティっていうの?そういう記事を好むタイプなんだよ。まぁ単純に休めって言っても有給消化は嫌うしな。話は付けるからさ、金は会社が出すから領収書と少しネタを持って帰ってくれば旅行で羽伸ばすのも仕事のうちってね』
女性記者『優しいですねぇ・・・私そういうの貰った事無い』
中島『スクープとかすっぱ抜いてこい!いくらでも女王様扱いしてやるぞ~』
2025年12月20日(土曜日)
どうしたらよかったんだろう。そりゃ中島さんの言う事も分かる。重要な事実を探るのに権力者に近づく事もある。だから記者は夜遅い時間帯こそ本領発揮って言われたりもする。会食してまさに飲ませ食わせ抱かせ・・・いや、抱かれた事は無いし読モとか紹介して抱かさせた事とかも無いけど・・・
でも、そんな事して得た情報って読者に説明できるかな・・・信用されるかな・・・
ゴトン・・・・スルスルスル・・・・
そんなことして得た情報って・・・いくら本人が言っても酒の席でしょって・・・・
それにサラリーマンの飲ませ食わせ抱かせは今や、金を抱かせに変わっただけ。新聞記者だから金は無くてもヨイショ記事で有頂天を抱かせ・・・かな・・・こんな記事、読者が本当に求めてるのかな
ゴゴゴゴゴ・・・・・ガタン・・・・カラカラ・・ギュッ
昔っからだ・・・私っていつもそう・・・空気を読もうとして、いつも良い子ぶって・・・新聞記者になったらもっと自分の言いたい事を言えるかなって・・・どっかで信じてた・・・変われるんだって・・・でも、ダメだったのかな・・・上手い事騙されたつもりを演じたり・・・洗馬さんは国会を・・・総理をにらんでたんじゃなかったんだ・・・あの敵意は子供達に向けてたんだ・・・・内通者?うぅうん・・・われらの羽生田議員のお膝元で怪我なんかしやがってって・・・
ググッ・・・・カタカタカタ・・・・
最初は苦しいのかな・・・違う・・・苦しかったのは心を汚されたあの時からだ・・・・
先輩優しかったな・・・ごめんね・・・でも、これは私のわがまま・・・最後のあがきだよ・・・
タッ・・・ポン・・・カタン!・・カタッ・・・・・
さようなら。ありがとう、お父さん。お母さん。あなたの娘は幸せだったよ。
ガターーン!!!!!!!!!
2026年1月3日
ディレクター『CM空けでV入りまーす。』
ディレクター『CM空けまで、10秒前。8・・7・・6・・5秒前3・・・・』
映像は彩音の自宅前。道路はさんで反対側の歩道から報道カメラマンが三脚に乗って映している。警察車両が複数止まって建物の入り口をビニールシートで覆っている。
プロデューサー『スイッチャー切り替えて。V空けでスタジオに戻すから。』
男性キャスター『今日の朝未明。夕日新聞の政治部記者である加地彩音さん23歳が自宅で首を吊っているのを上司である中島常義さんが発見しました。数日間連絡が付かず様子を見に行くつもりが、年をまたいだので遠慮したため発見が遅れたと話していたそうです。』
ポーン 映像が変わり紅白歌大戦の映像が流れる。
男性キャスター『一昨年で76回目となる紅白歌大戦では世界を超えて広げる平和をテーマに東京・渋谷NPKホールで・・・司会の・・・』
プロデューサー『やっぱり爆笑疑問の二人が司会ってのは、ベタ過ぎたかな・・・』
ディレクター『え、何言ってるんですか。百鳥は押さえられちゃったんで仕方ないですよ』
プロデューサー『まぁ来年あたりウチには~・・・まわらんか』