第肆章
この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ございません。
2025年9月28日(日曜日)
新宿御苑 目の前には大きな池と手にはすぐ近くで買ったスターバックスコーヒー
少し遠くに見える、やたらと尖った建物はNTTドコモ代々木ビルだろうか。時刻は11時を指している。
和義『なるほどね。それで交換したいって話か。確かにウチが追ってるよ』
彩音『こっちじゃ載せてくれないんだよね。・・・』
周囲には家族連れだろうか。読書には良い日和で日曜のせいもあって和やかな雰囲気が公園を包んでいる。
和義『叩けば埃しか出ないはずだけど、今は野党が強いだろ?どこも政権交代は何時来るんだーって、そのための仕留めるトライデント探ししてる』
コーヒーを一口、落胆と疲労も飲み込んだ。
彩音『・・・ふぅ・・・まぁ言いたい事は分かるけど、このままじゃそりゃ遅かれ早かれでしょ。』
和義『だけど、抑止力のつもりで野島代表追っかけろって。そういう魂胆なんだろ?それはそれで夕日っぽさがあって良いと思うけど』
彩音『ん~・・・いや、そうじゃなくってさ。どうしても頭から離れられないんだよ』
俯く彩音を見て目線を手元に向けると、僅かに震えていた。目線を前に戻し何と言えない気持ちになる。
和義『・・・・あの崩落か』
彩音『裕司君って・・・分かる?・・・・・・右腕と左足・・・グチャグチャになって一生歩けないんだって』
和義『・・・・・・・・・知ってる』
彩音『まだ8歳だって・・・お母さん泣いてたよ。一緒に泣いてあげられる事しか出来なくてごめんねって・・・・・・』
和義『・・・・知ってるよ』
彩音『許せないんだよ・・っ・・・・・お姉ちゃんも泣いてたよ・・・・・・私のせいだって』
和義『・・分かってるって』
彩音『私のせいで・・・秘密基地に行ったんだって・・・・・・好きな餓殺隊ならきっとゴミはちゃんと捨てるからって言っ』
和義『分かってるって!!!!!!』
涙をポロポロとこぼす彩音 何も出来ない歯がゆさを噛みしめるように怒鳴ってしまった和義
和義『・・・・・・・なんで・・誰も責任とらないんだろうな・・・・なんで皆・・・他人事なんだろうな』
彩音『・・・・・・・・・・・・・』
静かな日曜日を思い出させるような風が、優しく中池の上を歩く。
和義『あのさ・・・・・・これは黙っていて欲しいんだけどさ』
彩音『・・・・何?』グスッ
和義『斎藤先輩が・・さ・・・・久しぶりというか、2週間ぶりかな。』
彩音『何の・・話?・・・・・』
和義『青旗に行ったはずなんだけど、配送センターで見かけて。偶然だったんだけど、今って配送センターの管理とか商品の梱包って全部AIでやれるらしくってさ。その取材で本当に偶然だったんだよ。まぁ都心から直ぐで中継センターなんつって侮ってたら結構おっきくてさ』
彩音『・・・・政治家を配送センターでラッピングして海に放り込むって話なら聞くけど?』
やや怒ったような、すこし膨れて目を皿にしながら要領得ない話にムッとしてる彩音
和義『・・・いや、何て言うか・・・本当に秘密にして欲しいんだけどさ』
彩音『分かったよ!しっつこいのぅ!』
迷っているような苦虫を噛み潰したような顔をする和義
和義『・・・・議員に送る花束ってあるだろ?よく事務所に飾るやつ。』
彩音『あるけど?斎藤先輩がトリカブトだとか、キチガイナスビでも送ってるって言うの?』
和義『いやぁ・・・その配送センターで取り扱ってる物ってのが割と霞ヶ関に集中しててさ』
彩音『・・・・・・・』ピッ ピッ
和義『やっ・・・やめてっ!・・微妙に熱い!・・・モカってる!』
彩音は早く要点を言えと言わんばかりに器用にマドラーで和義にコーヒーを飛ばす
和義『だから、見たんだよ!斎藤先輩が3人ぐらいの同じ格好した配送員の姿の仲間と!何か花とか電話とか椅子とか机に爆弾みたいな黒い箱を仕掛けてるの!』
彩音のコーヒー爆弾が止まった
和義はハンカチで顔を拭いたり服を拭いたりしている。
彩音『・・・え、爆弾?』
和義『だと・・・思う。なんか色んなサイズの黒い箱で導火線なのかな・・・黒い紐が出てて・・赤いランプが点滅してて・・・電話とか椅子とか分解して修理でもしてるのかなって・・・そしたらその黒い小さな箱を入れて、布テープでペタペタして・・で、元に戻すの。何してんのか全く分からなくって、それに人違いだったら・・・勘違いだったら嫌だなって・・声かけられなくって』
彩音『・・・霞ヶ関吹っ飛ばすの?・・・・許可する!今すぐやれい!』
目をカッと見開き、サムズアップしながらウィンクする彩音
和義『何でだよ!』
互いに笑ってしまったが、その黒い箱が何なのか分からないままだった。
2025年10月1日(水曜日)午前1時15分
人通りが少ない公園 普段は人通りはあるのだが、この時間帯はほぼ誰も居ない。
それもそのはずで周辺に住民は居ないからだ。 ここは日本水準原点。国会前庭 北地区
三権分立の時計塔の下に二人の作業着を着た男性が座ってタバコを吸っている。
帽子を深く被っている男『そろそろですね』
オールバックの男『んー。んじゃ行くか。・・・心配すんな新人。俺らは慣れてる』
帽子を深く被っている男『・・・はい』
二人はタバコの火を消し、南地区へ向かって歩き出す。やや坂道を降りていくと右側の木々の間から真っ黒なロケットの先端が時折姿を見せる。
公園の出口に差し掛かり左手側の上には道路標識で日比谷 桜田門
半蔵門 溜池と書かれてあり十字の矢印と六本木通り。
オールバックの男『来たな』
右側から信号を曲がってハザードを出しながら目の前に止まるハイエース。
助手席に乗るオールバックの男 深く帽子を被った男がサイドドアを開け乗り込む。
オールバックの男『出せ』
ハイエースはハザードを消し右にウィンカーを出しながらゆっくりと走り始める。
後ろに見えたのは国会議事堂。さっきのロケットのように見えた建物だった。
ハイエースはゆっくりと交差点に進入し412号線に入り六本木通りを走る。
霞ヶ関料金所を右目で確認し左に曲がる。ちょうど外務省と国税庁の間にある潮見坂だ。
再び交差点に入ると右に曲がり国税庁と経済産業省の間を通り、また右へ。ちょうど国税庁と文部科学省の間、三年坂を通る。坂を下りきったところで一旦とまりハザードを焚く。目の前に見えるのが内閣府だ。
オールバックの男『どうだ、反応あるだろ?』
帽子を深く被る男『はい・・・今、ダウンロード中です。あと1分・・・いや30秒かな・・・』
運転手『な、割と簡単だろ?構えすぎだって、斎藤君』
帽子を深く被る斎藤『はい・・・・ダウンロード出来ました』
オールバックの男『上出来だ。次周るぞ』
斎藤『はい』
2025年10月2日(木曜日)
読書新聞本社 政治部
キャップ『古林~、ちょっと来てくれ』
和義『はい。・・・なんですか?』
口をとがらせながらタブレットとにらめっこしているキャップ。そこに和義がコーヒー片手に来る。
キャップ『あいつの面倒みてやれって言ったろ~。誤字脱字は直せって。教えてやれよ~』
和義『ぇえっ・・・・・はぁ・・・多分アレっす』
目線を上に上げるキャップ。責任者としてデスクに上げる前に全員の記事をチェックしている。
キャップ『まぁ・・・分かってるけど。どうせアレだろ。勝手に自分で出したんだな?おまえ見てないんだろ』
和義『ぅえぁあ・・・あぁ・・ぅぃ・・・はい』
キャップ『いいよ。いいよ。・・・はぁ・・・おーい田嶋ぁ~ちょっとこーい』
和義『今日このあと外回って、夜討ちで・・・そのあと朝駆けなんですけど・・直帰いいっすか?』
キャップ『おいおい、働きすぎじゃないの?しっかり休めよ~』
和義『はいっ』
自分の席に戻る和義。携帯のランプが点滅している。誰かからの電話のようだ。
タップすると斎藤先輩。履歴で3回。何かあったのだろうか。席を外しそのまま空いてる会議室で折り返しの電話を掛ける。
和義『あ、もしもし?お疲れ様です。古林です』
斎藤『あ、もしもし、斎藤です。すまない折り返させちゃったな』
和義『どうしたんです?急に珍しいじゃないですか。あ、そうだ忘れる前に今月の羽衣会の場所は新宿の居酒屋で松っちゃんが予約を』
斎藤『待ってくれ。ちょっと聞いてくれ。その話は後だ』
和義『えっ・・・はい』
斎藤『今、誰にもこの通話聞かれてないよな?』
和義『え・・なんですか急に』
斎藤『大事な話だ。会う事も出来ない。だから電話で伝える』
和義『な、なんです?』
斎藤『青旗は全ての省庁と議員事務所に盗聴器を仕掛けている。しかも仲間である共産民主党の議員の先生方も含めて。身内も信用してない』
和義『えっ!藪から棒に何を言い出すんですか!?』
斎藤『このままだと俺もいずれ検挙されるか東京湾の底に沈むかだ。だから預かって欲しいデータがある。所謂保険だ。これがあればもし俺の身に何かあれば公表して欲しい。頼む』
和義『えっ・・えっ・・・わ、分かりました』
斎藤『新宿駅から徒歩8分ぐらいだったかな。主興ホーム株式会社ってコインロッカーがある。入ってエレベータが正面にある。そのエレベーターを前にして左手側に灰色のボックスがある。その灰色のボックスの下にカードキーを両面テープで張って付けておいたから確認してくれ。消火栓の上だ』
和義『わっ・・かりました。主興ホーム・・・ロッカー・・・カードキー・・・』
斎藤『そのカードキーだけど、使える場所は違う所だから書いてある住所を辿れ。頼んだぞ』
和義『えっ・・・は・・・はぃ・・あの・・・羽衣・・・集まり・・・』
斎藤『ごめんな・・・それは俺不在で進めてくれ』
和義は少し漏らした・・・・訳の分からないまま取材へ行くと言いながら背広を腰に巻いて家へ向かい、着替えをして放心状態になってから急に言われたカードキーを思い出し車を走らせた。