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第1章

この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ございません。

2025年12月28日

 静かな朝、僅かに空いた窓から冷たい風が流れ、カーテンの隙間から漏れる冬暁と一緒に暗い部屋に微かな光を挿していた。部屋の中でゆっくりと揺れるソレは時折全体を漆黒へと押し戻していったが、誰にも気付かれずに時間が流れていく。


 世間は仕事納めで、午前中に仕事を片付け社内の大掃除に始まり、夜には忘年会をする所も出て来る。

嫌いな上司も煩い部下も、鬱陶しい同僚や気難しい後輩も、尊敬する先輩も。

皆が一堂に会し無礼講で忘年会に勤しむ。今年の大反省会と言う訳だ。

そんな日の朝に揺れるソレの下には倒れた椅子。そして周囲に大量の原稿が散らばっている。

壁一面には東京都全体の地図と大量の政治家の写真が留められ、赤い毛糸で繋がれている。

反対側の壁には事務机と大量の書籍。ノートパソコン2台にタブレットが1台

携帯は床に2台落ちている。


 携帯に表示されているSNSにはラブレターのような愚痴が書かれていた。


12月20日午後3時40分

重要な事実を探るのに権力者に近づくこともある。

読者に堂々と説明できる論理がなければ、この記事も意味が無い。


12月20日午後3時50分

意図的な記事で権力者のご機嫌伺いをし、得られる情報は

本当に読者が求めている内容なの?

友達だから書くという論理では政権を監視出来なくなる。


12月20日午後4時7分

私は言う事を聞かない不良債権かもしれないけど、頑張って無理して取材したり指示に従って書いたのは読者を一番に考えた采配をしてくれたから。

どうせなら、嘘でもいいから私を説得して。騙して欲しかったよ。

好きな貴方だから許せたのに。


2025年11月14日(金曜日)

 参議院で大揉めに揉めて、ねじれ国会に発展。翌年度の予算編成が決まらずこのままでは

12月の臨時国会に持ち込むのではないかと紙面を飾っていた。

それもそのはず、政治資金収支報告書の不記載から裏金と言われ、有権者の注目を集め連立与党は衆議院選で大敗した。更に参議院での造反や離党。参議院補欠選挙でも苦戦を強いられ惨敗した。

遡る事2022年11月の新聞青旗が大々的に取り上げたのが最初だった。


 法的な解釈としては対価を得て行う資産の譲渡や役務の提供等の取引が課税対象で、課税関係については、各取引の実態に即して判断されるという。政治団体が開催する政治資金パーティーは政治資金を集める事が目的であり、その際に受領する金銭が資産の譲渡や役務の提供といった対価が無い場合は不課税という話。

 また、政治団体が受領する寄付金も同様に対価として支払われたものではないため不課税となる。

つまり納税義務は課せられないが、それは政治活動としての使用の範疇であり、金銭を渡した者や企業団体が何かしらの対価を得なかった場合の話になる。


 しかし、よくもまぁこんな恣意的な法案を作って政治資金規制法案などと言えたものだ。


この政治屋連中を見よ。我らを見よ。今や日自党は己の死臭で国民が見えていない。

我らは勝利した。我らの7・12。さあいざ決戦の途へ。我らの銃剣の上に平和がある。


2025年11月3日(月曜日)

 彩音(あやね)は悩んでいた。これは実は資産の譲渡や役務の提供では無いかもしれないが、減税という有益な恩恵に肖る一つの手法なのではないかと。そして注目すべきは仮に二菱商事(につびししょうじ)による日本自由党(にほんじゆうとう):通称日自党(にじとう)の総裁である山破重行(やまばしげゆき)総理が幹事をしている木蓮会(もくれんかい)への多額の寄付。およそ4千8百万円は新たな裏金になるのではないかと。昨年における収支報告書未記載による裏金事件は繰り返されているのではないかと。

時刻は既に18時を回り、記事の提出時間が迫っていた。


2025年10月26日(日曜日)21時35分

『カンパーーーーイ!』

 京町愛しぐれ 新宿にある居酒屋。大学生のノリではしゃぐ背広姿のグループがいた。

夕日新聞(ゆうひしんぶん)・政治部 彩音『にしても、まさかね~。カズっちが読書の政治部に居たとはね』

笑顔で話す彩音。

読書新聞(よみかきしんぶん)・政治部 古林和義(ふるばやしかずよし)『こっちのセリフだよ。アヤちんも政治部とか。皆もご存命で何より~何より~。願わくば我が国家繁栄のため、ゼネスト共の悪しき戦術についてや、民主人民連盟一般運動の方針についてご清聴頂ければ~』

ふざけながらも笑顔で答える和義。

『やー、もー。煩い煩い。あんたはもぅ青旗行けなかったの!だまってリベ党の宣伝しなさいっ』

そう笑顔で話を遮ったのは産市新聞(さんいちしんぶん)・経済部 平野優実(ひらのゆうみ)

『いやー、先輩方の活躍!いつも拝見させて頂いてマッス!』

目をキリリとしながら敬礼し顔を真っ赤にさせているのは、旅行予約サイトで有名なじゃじゃん編集部の松野恵美香(まつのえみか) ちなみに下戸なのに酒に付き合う可愛い後輩。


優実『そういえばさ、気になったんだけど青旗に行った斎藤先輩って連絡取れてるの?』

和義『いや、それがさ・・・全然ダメで忙しいみたいなんだけど・・・様子が変だったな』

彩音・優実『変って?』

和義は一度、周囲を見渡してから優実と彩音、そして恵美香に顔を近づけるよう小さく手招きをした。

和義『俺ら東京中央大の弁論部、羽衣会はさ、斎藤先輩の呼びかけで毎年こうやって集まって和気あいあいしながら情報交換したりとかさ、互いの立場を利用してサポートしたり入手した情報を自分のとこじゃ落とされるから、互いに回したりしてたわけじゃんか』

彩音と優実が静かに頷く。恵美香は真剣な顔して聞いている。無論、じゃじゃんの旅行サイトに政治的な記事は載らないが、幹事として一応聞いている。

何かを言いかけて急に俯いて黙る和義。

優実『・・・え、何。ちょっと怖いわ。』

和義『いや・・・変な噂があって、斎藤先輩がどうだって話じゃないんだけどさ。記者クラブで変な噂あるの知ってるか?』

少しの沈黙の後、和義の目を見てボソっと話す。

彩音『・・・盗聴・・・でしょ。それ。』

優実『あ・・・・・そっか。青旗って機関紙だし思いっきり共産圏というか労働組合というか。取材にしたって他の政党に出入りなんて簡単に出来ないんだよね。公安がマークしてるとかしてないとか。危ない噂が絶えないし。』

和義『・・・あぁ。で、どうやら議員事務所に盗聴器があるんじゃないかって。じゃなきゃ変だろ?どうやって収支報告書の不記載や収賄や斡旋の記事が出せたんだよ。』

彩音『でも斎藤先輩って・・・そういうタイプの人じゃないから関係無いんでしょ?』

居酒屋の賑やかさが、まるで安っぽいオモチャのような雰囲気に感じるほどの静けさが皆を包む。

和義『・・・・・・・・・・それが、今は分からん。』

優実『・・・だとしても・・ほら、そんなスパイ紛いの事が出来る人じゃないじゃん。』

和義『だと良いけどな・・・』


2025年10月1日(水曜日)午後2時13分

 補正予算の審議。

国家民主党(こっかみんしゅとう):通称国家党(こっかとう)の党首である門林雄二郎(かどばやしゆうじろう)の質疑。

委員長『門林雄二郎君。門林君』

門林『えー国家民主党(こっかみんしゅとう)代表の門林です。えー山破総理(やまばそうり)・・・一体どういうおつもりなんですか。一緒に103万の壁を崩すと約束したじゃないですか。』

ガヤ『そうだ!そうだ!約束を反故にするな!』

門林『私はですね、消費税の減税も話し合うと。103万の壁も一緒になって案を進めると約束したからですよ。いいですか?約束したから首相指名選挙で貴方の名前を書いたんじゃないですか!他の政党さんからも言われましたよ。信用しないほうが良いと!1994年の3党連立政権で社会党(しゃかいとう)村丘富一(むらおかとみいち)さんを総理に仕立て上げ、予算案の一つも通さない。何だったら当時に起きた大震災。阪神淡路大震災ですよ!その時でさえ協力もしない。そうやって国政を停止させ辞任に追いやり与党第一党に返り咲く。』

ガヤ『国民を何だと思ってるんだ!』

門林『憲法審査会の時の山破重行はどこに行ったんですか!日自党を変える。変えられる。それが山破重行だと。党内の人だけではなく、党外の人も含めて期待したんですよ。これじゃ1994年から何も変わってないじゃないですか!』

ガヤ『ふざけるな!政策を人質にとるな!』

門林『今から、まず税金と社会保険料についてお伺いします。真摯にこた・・さい・・ですか・・』


都内の喫茶店でメモを走らせながら彩音はタブレットで中継を眺めていたが、内容が入ってこない。


参議院選に関しては完全に日自党の敗北だった。立法民進党(りっぽうみんしんとう):通称立進党(りっしんとう)野島康彦(のじまやすひこ)代表の読みが当たり、参院選での議席も大幅に獲得。政界は正に乱気流のど真ん中を歩いている。キャップの中島常義(なかじまつねよし)は良き先輩で切れ者。最年少でデスクになるんじゃないかと噂されるほどのやり手記者だ。そんな中島からの指示で書く記事はいつも楽しかったし、やりがいも感じられた。しかし、彩音はそれよりも何かを見落としている気がして集中出来なかった。


 彩音『はぁ・・・問題がありすぎだよ。読者は知りたがっているはず。でも・・・書けない。

書けばキャップがガッカリするし、きっと通らない。今更・・・』


喫茶店を後にし東京都庁へ戻る。足取り重いまま記者クラブの部屋に入り夕日新聞(ゆうひしんぶん)のブースにある自分の机に向かう。考えがまとまらないまま。


登場人物の勤め先や所属団体等の紹介


日本自由党   (略称:日自党  カラー:保守

立法民進党   (略称:立進党  カラー:リベラル

創明党     (略称:創明党  カラー:中道政治

関西維新の会  (略称:関新   カラー:保守

国家民主党   (略称:国家党  カラー:穏健保守・リベラル・中道

共産民主党   (略称:共民党  カラー:社会・共産主義

へいせい新選組 (略称:へいせい カラー:不明

社会主義党   (略称:社義党  カラー:社会主義・キリスト


政党代表者

日自党:山破重行 (やまば しげゆき

立進党:野島康彦 (のじま やすひこ

創明党:岩井啓二 (いわい けいじ

関新会:大辺信幸 (おおべ のぶゆき

国家党:門林雄二郎(かどばやし ゆうじろう

共民党:田辺信子 (たなべ のぶこ

へいせ:川本次郎 (かわもと じろう

社会党:福岡瑞樹 (ふくおか みずき


新聞記者

夕日新聞:加地彩音(23)(かじ あやね

読書新聞:古林和義(23)(ふるばやし かずよし

産市新聞:平野優実(23)(ひらの ゆうみ

新聞青旗:斎藤信之(24)(さいとう のぶゆき

ジャジャン編集部記者:松野恵美香(22)(まつの えみか



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