第16話 トーナメント開催
次の目標はトーナメントの全制覇。トーナメントは夏休みを通して5つ開催される。タッグチームのトーナメント、4人1チームで行うフラッグ戦のトーナメント、物理攻撃のみの一騎打ちのトーナメント、物理攻撃禁止の一騎打ちのトーナメント、なんでもありの一騎打ちのトーナメントの5つだ。他にもないわけではないが、メモの主が言っていた景品が出るのはこの5つだけだろう。しかし、どうしたものか、5つのうち3つは個人戦だからいいものの、問題は残り2つだ。タッグチームの方は由紀か、柊彩芽に頼めばいいとして、フラッグ戦の方はあと3人か。トーナメントは上級生も参加するため生半可なやつでは経験の差で上級生にボコボコにされるだけで終わってしまう。たまに情報屋のところに上級生が殴り込みにやってくることがあるからわかるが、1年と2年ではやはり差がある。2年と3年ならもっとあるだろう。だが、3年はなぜかトーナメントに参加する人はほとんどいないらしい。何故かは知らないが、こちらにとっては好都合だ。エントリーまでまだ時間はある、メンバーは考えておこう。
「明日から夏休みになるわけだが、一応課題が出ているから怠けずにやるように。」
「ねぇ、ひろくん、なんで今日はこっちにいるの?」
「私は神谷凛ですけど?」
「あ、ごめんごめん。」
俺は今、ベガ学園の教室にいた。
なぜかトーナメントのエントリーは学校に出さないといけないらしい。
「前に言った通り、お前にはタッグチームのトーナメントに俺と出てもらう。あとフラッグ戦にも。」
「なんかトーナメント全部勝つみたいに言ってたね。でもさ、トーナメントって3つまでしか出れないよ?」
「佐伯広正の方でも登録してるから大丈夫だ。」
「ふーん。でもさ、フラッグ戦って4人必要だけど、凛ちゃんとウチとあと2人はどうするの?」
「1人は柊彩芽に参加してもらう。もう1人は考え中だ。」
「えっ!!柊彩芽ってあのSランクの!?そんな繋がりあったの!?」
「まあな。だが問題はもう一人だ。」
「ひろくんで参加するのは?」
「いや、分身は意識を片方でしか保てないからダメだ。例えば、分身体の方を神谷凛とすると、神谷凛の方に意識を移すと生身の俺はもぬけの殻になってしまう。分身体は自立して動きはするが、簡単な行動しかできない。上級生とも戦うのに実質3人なのは無理だ。」
「うーん。あの映画館で一緒にいた子は?えっと、碧ちゃんだっけ?」
「碧か、碧でもいいが、実力不足感が否めないのが正直な感想だな。....いや、作が無いわけではないか、そうするしかないか。わかったじゃあ碧を入れて4人としよう。この後顔合わせをする。」
「えっ!?この後?」
「何か予定があるのか?」
「いや、柊さんをそんな急に呼べるのかなって。」
「あいつはいつでも召喚できる。まぁ後でわかるって。」
「おけ、じゃあ中心街のカフェとかがいいんじゃない?」
「そうするか。」
その後、碧に連絡をして俺たちは集まることになった。
何この状況。今日はなんか全然喋らないと思ったら急に喋りだして、放課後カフェに行くとか言い出したと思ったら、なんか他の学園の人しかいないし、それに広正もいないし。
「初めまして!柊さん!黒山由紀って言います!お会いできて光栄です!」
「あなたのことは知っているわ。ベガ学園のトップなんですってね。私の凛の学園だからちょっと調べていたのよ。」
1人は前に映画館であった広正の友人、そしてSランクの柊彩芽さん、もう1人はなんか大人しい銀髪の女の子。なんなのこのメンツ。
「え、えっと、これはなんの集まりなんですか?」
「あ、ごめんごめん碧ちゃん。何も聞かされてないとは思ってなくて。では、ウチが概要を説明します。ウチらが出場するのは4人1チームで戦うフラッグ戦のトーナメント。あるフィールドに行って、敵チームを全員倒すか、敵チームのフラッグを取ったら勝ち。単純明快なルールだよん。ウチらの目標はもちろんこのトーナメントの優勝!ってことで、トーナメントの予選は来週だから、まず仲を深めようということで集まった次第であります。じゃあ早速自己紹介していこ。ウチは黒山由紀!趣味はゲーム一択!よろしくねん。」
広正、大事なことは先に言っておいてよ、なんかトーナメントに参加することになってるんだけど。
「みんな知ってると思うけど、私は柊彩芽。よろしくお願いするわ。」
「えっと、僕は東雲碧って言います。よろしくお願いします。」
「じゃあこれからの予定を立てていきたいと思うんだけど、」
え、銀髪の子はスルーなの?
「まず練習する場所を確保しないといけないんだけど、どうしようかな。」
「Sランクには1人1つ練習場が与えられているからそこでやればいいわ。」
「おお!さすがSランク!みんなこの後の予定は大丈夫な感じ?大丈夫ならこの後早速行きたいと思ってるけど。」
話がトントン拍子で進んでいってる。
「碧ちゃんは大丈夫?」
「えっ?ああ大丈夫だよ。」
どうやら2人は了承したらしい。僕も別に予定無かったしいいか。
「ねぇ!なんで僕がトーナメントに参加することになってるのさ!」
練習が終わって碧と合流するといきなり文句を言われた。
「何も知らされずに行ったらなんかみんな強い人しかいないし。明らかに僕だけ場違いなんだけど!」
「お前がまわりと比べて力不足なのは承知している。だから本番までに強くしてやる。」
そこから1週間後
トーナメント開幕
今日から2週間で予選トーナメントを行い、2週間空いて、その後に決勝トーナメントを行う。今日は物理攻撃禁止のトーナメントの予選がある。このトーナメントは佐伯広正で登録してある。
「ねぇ、昨日と一昨日でクラスの集まりあったのは知ってるよね?」
「ん?ああ、知らなかったな。」
「はぁ、絶対知ってたよね。広正返信は全然してくれないけど既読つくのは早いしさ。それでクラスでトーナメントに出ることになったんだよ。メインの5つのやつじゃなくて、その間にあるやつ。そこでさ、」
――――――
「また佐伯は来てないわけ?あんた何か知らないの?ずっと一緒にいるし知ってるでしょ。」
「いや、僕もわからないな。」
「来てないのあいつだけなんだよ。まぁいいや、これから森川くんが話すからそれ伝えといてね。」
「みんな、俺たちはこの前のバトルロワイヤルでそこそこいい結果を残して、上のクラスに行くまであと一歩だ。だからトーナメントでいい結果を残せば上のクラスに行けるはずだ。そこでみんなには色んなトーナメントに出て欲しい。ただ、予選がある5つのトーナメントは強い人しかいないし正直結果を残すのは厳しい。だからその間にあるトーナメントにできるだけ出て欲しいんだ。そのトーナメントはほとんどがチーム戦だから今日は出るトーナメントとチームを決めたくて集まってもらった次第だ。」
―――――――
「ってことがあったんだけど。」
「そうか、俺は一応他のトーナメントにもうエントリーしてるから無理と言ったはずなんだがな。」
俺は今クラスのあれこれに時間を割いている暇はない。
「俺はこれからトーナメント予選に出てくる。」
「あ、うん。頑張ってね。僕は応援してるよ。」
控え室に行くと見慣れた顔のやつがいた。
「お、ひろくんじゃーん。これはそっちの姿で出るんだね。」
「3つまでしかエントリーできないからな。1番目立つ最後のトーナメントは避けるためにな。」
「なーほどね。ウチも出るからさ、あたったらお手柔らかにね。」
由紀に見送られ、ステージへと向かう。
入場すると、歓声が上がる。見渡すと大量の人がいる。予選なのにこんなに観客がいるものなのか。頭上には俺と対戦相手の名前、ランク、学園、スターリー順位が表示されていた。俺は1年1689位、相手は1年98位。歓声が上がっていたのはこいつが原因か。どうやらTOP100くらいはだいぶ人気があるようだな。
「なんだ、初戦はFランクかよ。余興にもならねぇな。まぁなんだ、お前も運がなかったな、初めから俺が相手とは。それにしてもよく出ようと思ったな。Fランクなのに。」
完全に舐めきってるな。だがこういうやつの方がやりやすい。こいつの能力はワイヤーか。物理攻撃禁止といえども直接的な接触がたければいいだけだからこういうやつも来るのか。
「さぁ!第6レーン初戦はレグルス学園の主力、久村涼太!対するはFランクの佐伯広正だ!」
実況までついているのか、本格的だな。
「それでは!勝負開始!!!」
「さぁ、どう調理してやろうかn」
ドォン!
「おおおっと!!久村涼太!いきなり壁に激突したぞ!何が起きたんだ!?」
粉塵が落ち着き、視界が戻ると、
「久村涼太!戦闘不能!!勝者は、佐伯広正!!」
その言葉と同時にどよめきが起こる。まさかAランクのやつが瞬殺されるとは思ってもいなかったのだろう。彩芽の能力をコピーしておいて良かったな。これは楽だ。大抵は魔力増幅で強化しなくても瞬殺できる。
それから、その日は5戦したが難なく勝つことができた。そして、俺の対戦が全て終わった後、碧の姉の試合をふと見に行った。そこでの戦いは、圧巻だった。俺は増幅させた魔力はせいぜい身体強化か他の能力の強化にしか使えないと思っていた。だが、碧姉はなにやらエネルギーの塊のようなものを操って戦っていた。と思えば、炎を出したり雷を出したりしていた。碧姉は魔力増幅以外に能力は持っていない。やはり魔力には他の使い方があるのか。
「碧、お前の姉のところに連れて行ってくれ。」
「え!?なんで?」
「姉妹と言えば簡単に会えるだろ。」
「相変わらず理由は言わないなぁ、まぁいいけどさ。」
「えー!?碧ちゃん会いに来てくれたの!?」
「いや、あの、」
「最近ずっと素っ気なかったからお姉ちゃん嬉しい!!」
「すみません、ちょっとお聞きしたいことがあって。」
「あ、広正くん!いつも碧と仲良くしてくれてありがとうね。それで聞きたいことって?」
「碧、少し席を外してくれるか?」
「はいはい。」
「それで何かな?2人っきりで。」
「茜さんの能力って魔力増幅ですよね?」
茜さんの口角が少し下がる。
「誰から聞いたのかな?」
「いえ、俺が勝手に調べただけです。すみません。それで、俺も似たような能力が使えるのですが、大量の魔力の使い道が身体能力の強化以外にもあるんですか?」
「うーんそうだなぁ。碧ちゃんのお友達だもんね。いいよ、教えてあげる。今から話すのは私のイメージの話なんだけど、そもそも魔力ってなんだろうって考えた時に、私は何かの粒子を操る力だと思ってるの。だけど、その力っていうのはとても大きくて、大体の人が持ってる魔力では操ることができない。だから他の人っていうのは、能力というものを通して限定的な使い方をすることでその必要な魔力量を減らしているの。例えば、炎を出す能力だったら、その粒子を炎に限定させて使うことで少ない魔力で粒子を操ることができるみたいな感じ?私は膨大な魔力を使うことでその能力というフィルターを通さなくてもその粒子を操ることができる。それに、そのフィルターによって限定されないから、色んな使い方ができるっていうこと。でも感覚がわからないとできないからなんでもできるって言う訳じゃないんだけどね。こんな感じでいいかな?」
「ありがとうございます。」
これは凄いことを聞いたかもしれない。あくまでイメージの話だから信憑性には欠けるが、魔力増幅という能力は想像以上になんでもできる能力だ。感覚が掴めないから何でもはできないと言っていたが、俺はコピーで感覚を掴めば、なんでもできるということになる。もし、そのような粒子が存在して、それによってこの不思議な現象達が起こっているなら、色々辻褄が合う点がある。例えば、由紀の眼。由紀は生まれつき右眼がない。だから義眼をつけていた。だが、能力によってその義眼に視力が宿った。それが粒子を媒介することによって見えるようになっているならおかしな話ではない。それに、あの電波塔での違和感。あそこでは能力が使えなかった。それが、あの場が粒子が存在しない空間だった可能性がある。あの違和感は、ここに来てから当たり前に存在している粒子が全くなくなったが故に感じたものなのかもしれない。
どれも辻褄が合ってしまう。いや、今このことを考えるのはやめよう。あの電波塔の奥に行けばわかることなのだろう。なら目の前の目標に集中しよう。
次の戦いからは茜さん言っていたことを意識して戦ってみよう。
「久村涼太!戦闘不能!!勝者は、佐伯広正!!」
ほう、FランクがAランクに勝つか。面白い。こいつは勝ち上がってくるな。この能力、柊彩芽と同じ系統か、なら俺の敵ではないな。
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