第14話 再会
俺は今、碧と学園都市の中心街に来ていた。
テストが終わって、このまま夏休みまで特に何も行事のようなものはないため、碧が遊びに行こうと誘ってきたのだ。目的地は映画館。この学園都市は外との連絡は遮断されているが、映画や書籍のようなものは外から入ってくるため娯楽には困らない。
「僕ちょっとトイレ行ってくるから待ってて。」
「わかった。」
碧が帰ってくるのを待っている時にそいつは現れた。
「んぉ?」
「げっ、」
俺は足早にその場から立ち去ろうとする。
「ちょいちょい、なんで逃げるのさ。」
その直後、俺の体が硬直する。
なんだ?体が動かない。何かの能力を使われたか。無理やり抜け出すことはできなくはなさそうだが、観念するか。
「それにさっき、げっ、って言ったよね?感動の再会だと言うのに酷いもんだよぉ。」
黒山由紀 15歳 女性 所属ベガ学園
ランクA
筋力 45
防御 40
俊敏 55
体力 58
知力 67
魔力 140
能力 イマジナリーアイ 熟練度4
「わかった、逃げないから解除してくれ。」
「ねぇねぇ、なんで逃げようとしたのかなぁ?」
やたらと絡んでくるこいつは保育園の時から一緒に進学してきた、いわゆる幼馴染というやつだ。中学卒業してからここに来たからそれっきりだと思っていたがこいつも来ていたのか。
「なんでそんな顔するのさぁ、ウチのこと嫌いになっちゃったの?」
こいつのことは別に嫌いではない、むしろ中学の時は一緒にゲームをやってたくらいだし結構仲がいいと言ってもいい。だが、こいつはとにかくウザイ。一緒にゲームをしてる時はそうでもないが、それ以外になるとかなりウザイ。俺がクラスの人と話していると、後で、友達できたんだ、どうやって仲良くなったの?人と話すのそんなに好きじゃないのに、とか色々聞いてくる。今は碧と来ているから帰ってきたらかなりめんどくさいことになる。
「広正、お待たせって、そちらの方は?」
噂をすればだ。
「おやぁ?おやおやおや、ちょっと君、こっち来て。」
そう言って由紀は碧を連れていった。
「ねぇ君!名前は?」
「えっ、東雲碧です。」
「碧ちゃんね!私は黒山由紀、タメ口で良いよ!それでさっき広くんのこと名前で呼んでたけど、どんな関係?まさか付き合ってるしちゃってる?」
「い、いや!そんなことない!ただの友達だよ。」
「ふぅん、広くんの性癖ドンピシャだったからそうかと思ったのに。」
「えっ?」
「いや、なんでもない。それじゃ戻ろっか。」
「広くん、お待たせー。」
「何話してたんだよ。」
「そんなに乙女同士の会話聞きたいー?」
やはりめんどくさいなこいつ。
「いや、そんなことよりお前なんでここにいるんだよ。」
「なんでって、映画館には映画見に来る以外にないでしょ。」
「それもそうか、お前はどうせあのアニメのやつだろ。」
「お!よくわかったじゃーん。って広くんも同じやつじゃないの?」
「俺はこっちだ。」
「へー、こういうの見るんだね。」
「いや、こいつの誘われたから見てみようと思ってな。」
「ふぅん、そうなんだ。じゃ、映画終わったらね。」
「はぁ、やっと行ったか。」
「それであの人は?」
「あいつは、なんというか、腐れ縁みたいな感じだ。まさか学園都市に来てるなんてな。」
「そういうのって事前に言っとくもんじゃないの?」
「そろそろ始まるから行くか。」
「話逸らさないでよ。」
映画が終わると俺たちは一緒にファミレスで夕飯を取っていた。
「それでね、その時に広くんが、」
「黒歴史を掘り起こすのはやめてくれないか?」
「広正にもそんな時代があったんだね。」
碧がニヤニヤしながら苦笑している。
おい、人の黒歴史を笑うな。
その後は俺の黒歴史暴露大会で終わった。死にたい。
「それじゃーねー碧ちゃん。」
俺たちは駅で別れた。だが、
「なんでお前はついてくるんだよ。お前こっち方面じゃないだろ。」
「んー?ウチの家知らないでしょ?」
「今まで同じ学園で見たことなかったから同じ学園ではないだろ。ならこっち方面ではないはずだ。」
「まぁ正解だね。」
「あー、疲れたー。」
「おい、なんで家に上がってくるんだよ。」
由紀は家に上がるやいなや勝手にくつろぎ始めた。
「別にいいでしょ、よく広くんの家でゲームしてたじゃん。」
「まぁ、そうだが。それはそうと色々聞きたいことがあるんだが。」
「んー?」
「お前の能力ってその右眼だよな。」
「そうだよん。よくわかったねぇ。」
「能力使ってる時に光ってたからな。それで、お前は生まれつき右眼が無かったなかっただろ。でも今のお前は普通に見えている。それはどういうことなんだ?」
こいつは生まれつき右眼が無く、生活でも苦労する場面が少なくはなかった。だが俺にとってはそれが普通だったから特に気にしたことはなかった。
「ウチもよくわかんないんだよねぇ。能力を使えるようになってから見えるようになったんだよ。でもこれは本物の眼じゃなくて義眼なんだよね。」
由紀は自分のまぶたから義眼を取り出した。
「ほら。でもこの状態でも見えるんだよね。ウチが離れたところにいてもこの義眼を通して景色が見える。この学園都市に来てから訳わかんないこと続きだよ。でもウチにとっては片目見えるようになったから良かったけどねぇ。」
「そうか、良かったな。」
「なんか反応薄いなぁ。まぁいいや、久しぶりにゲームしようぜぇ!久しぶりなんだから朝まで付き合ってもらうよん。」
そうして俺たちはゲームをして夜を明かした。
「おい、なんでまだいるんだよ。」
「えー?だって家で一人でいても暇なんだもん。」
「ここにいてもいいが、その代わりに俺の頼みも聞いてもらうぞ。」
「えっちはお願いはダメだかんねー。」
「はぁ、お前ベガ学園のAクラスだよな?そしてお前のクラスで最近1人学校から消えたよな?」
「え?なんで知ってんの?怖いんですけど。」
「それでだな、お前のクラスに俺の分身を転入させるからよろしく頼む。」
「んん?どゆこと?」
実際に見せた方が早いか。
俺は女の姿に変身して見せた。
「ん?え?どちら様?」
「俺だよ、佐伯広正だ。まぁこの姿では神谷凛と名乗っているが。」
「え、女装ってこと?」
「いや、身体も女になっている。それでこの姿の俺はお前のクラスに、」
「えー!!!広くん女の子になれちゃったりするの!?何その2次元的な展開!」
「お、おい!勝手に触るな!離れろ!」
「えー、いいんじゃんかよぉ、女の子同士なんだしさ。それにそんな可愛い声で言っても怖くないゾ。てかちゃんと下着とかつけてるけどどうしたのこれ?まさかちゃんと自分で選んでたりする?」
「いや、これは、まぁ、知人に全て選んでもらった。言っておくが碧ではないぞ。」
「あれ、そうなんだ。それでお願いってのは?」
「この姿の俺をベガ学園Aクラスに入学させるからそれなりにクラスに馴染むように手伝ってくれ。お前ならできるだろ。」
ベガ学園に実際にいないと柊彩芽に色々探られてバレる可能性があるからな。それに学園内にいた方が得られる情報も多いだろう。
「まぁいいけど、ちゃんとそれに見合ったリターンは貰うからねぇ。でもそっちの学校はどうするの?」
「それは問題ない。」
俺は先日獲得した能力、分身を発動する。
「おお、2人になった。」
「こいつは基本的に俺と同じ行動をするが、女の姿で俺と同じ行動だと違和感があるかもしれない。だからそこでお前に手伝って欲しいんだ。」
「まぁとりあえずこの子とは普段の広くんと話してる感じで仲良くしとけばいいんだね?」
「そうだ、なにかあったらこっちに意識を移すこともできるから心配入らない。」
「おけおけ。」
これで暫くは大丈夫だろう。
やっと俺がやりたかった調査ができる。それは定期テスト以降、各学園で複数人が失踪しているというものだ。しかも何故か学園のデータベースからも消されている。うちのクラスでも1人消えたが教員側は何も気にした素振りを見せない。ということは学園側の犯行で間違いないだろう。この学園都市に来てあのメモ書きを読んだ時に明らかになにか闇があるとは思っていたがこうも明らさまに頭角を現すとはな。
「広くん?聞いてる?」
「すまん、少し考え事をしていた。」
「ウチのお願い聞いてくれるんだよね?」
そんなこと言った覚えはないが。
「いやぁ、銀髪美少女に色々してもらうの夢だったんだよねー。中身が広くんでもいいから。」
由紀が期待の眼差しでこちらを見てくる。こいつにこの姿を見せるのは間違えたか。ていうかなんでこんなにも能力をやすやすと見せてしまったのだろう。こんなファンタジーみたいなところにやって来たというのを同じ価値観のやつと共有したかったのか?
ふと由紀の眼を見ると僅かに光っているのが見えた。
「お前、俺に能力を使っていたのか。」
「あれ?バレちゃった?認識できないようにしてたはずなんだけどなぁ。まぁいいや、安心しなよ。別に広くんの目的を邪魔しようなんて思ってないからさ。じゃ、ウチはこれでおいとまさせてもらうよん。」
不敵な笑みを浮かべて由紀は帰っていった。
後で調べてわかったことだが、由紀はベガ学園の学園内順位が1位だった。あいつになんの目的があるのかは知らないが、俺から何か聞き出そうとしていたのは間違いない。それに俺が複数能力を使っても何も反応はしなかった。あいつは確実に何かを知っている。




