6/7
愛する人のために
お料理、お料理♪
今日も私は、彼のために食事を作る。
けれど、まだ若い私の作る料理の出来といえば。
「何だ、今日も焦げた料理なのか」
「ごめんなさーい。料理なんて、今までしたことがなかったし。あなたのために頑張ってるんだけど、ね」
そう言うと彼は、相好を崩した。皺だらけの顔で。
「まあ、いい。おまえが儂のために作ってくれたんだ。有難くいただくよ」
そう言って、食事を始める彼。
焦げた上に、老齢の彼にとっては重い食事だけど、彼はいつも完食してくれる。
仕込んだ薬には、焦げの味で気づくこともなく。
私も料理を口に運びながら、さっき彼に言った言葉の続きを、胸の内で呟く。
そう。頑張っているのよ?
あなたが、早く逝ってくれるように。
そうすれば私には、莫大な遺産が転がり込んでくる。
そしたら私は、もっと幸せになれる。
愛する妻が幸せになれば、あなたも幸せでしょう?
だから早く、私を幸せにしてね。
ね? あなた。