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奇術の証明
さあさ皆様、ご覧あれ。
このシルクハットの中から、鳩を出してご覧にいれましょう。
見事成功しましたら、拍手を。
では。おいでませ、鳩よ!
奇術師の掛け声と共に、ばさあっという音がして、シルクハットの中から鳩が飛び出た!
見物客たちからは、わあっという歓声と共に、ぱちぱちという拍手が起こる。
しかし中にはひねくれた客もいるのか、どうせ仕掛けがあるんだよ、という声がそこかしこで出ていた。
だがそれを聞いた奇術師は慌てることもなく、悠然と言い放った。
おや。これではまだ、私の術が本物と証明出来ませんか。
宜しい。それでは今度こそ、皆様が驚愕するような術をご覧に入れましょう。
──ワン、ツー、スリー!
奇術師がそう唱えると同時に、彼の姿がかき消えた‼
客たちは驚き、そのすぐあと、消えた奇術師に対し、割れんばかりの拍手が沸き上がる。
これなら、さっきケチをつけた客も納得しただろうと思い、彼らがいた場所を見やる観客たち。
だがそこには、文句を言った観客はいなかった。
まるで奇術によって、掻き消されてしまったかのように。