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間話04・十二人の怒れる乙女

間話その4です。主人公、ほぼ出てきません!読まなくても本筋に変更はありません。

          ◆



 パルデュー侯爵家の侍女が東の森に旅立った翌日。12人の若い女性達が王城のサロンに集まった。皆、行方不明中の騎士達の婚約者である。


 呼びかけたのは幼馴染の3人組、フランソワ、ミシェル、ソフィーだ。少しでもキコ様の役に立ちたい。そう思ったフランソワは、手持ちの宝飾品を寄付しようと提案した。


「他に同じ考えの方はいない?一緒に侯爵家に行きましょうよ」


 賛同する声があちこちから上がった。実務に長けたミシェルは希望者の日程を調整し、侯爵家にお伺いを立てる使者を手配した。


「他にできる事はないかしら?何かしていないと、私不安で…」


 ソフィーがハンカチで涙を拭いながら訊いた。フランソワは繊細な彼女の気を引き立たせようと、楽しい話題を振ってみた。


「一緒に副団長とキコ様の結婚祝いを考えない?」


 だが別の令嬢が不穏な事を言った。


「お二人はまだ婚約されてないそうよ。キコ様の身分が低すぎるから、エイゼンシュテイン家に養女の打診をしているって聞いたわ」


「そうなの?それで?」


 フランソワが尋ねると、また別の令嬢が声を潜めて言う。


「でも反対されてるらしいの。副団長の火属性魔力は当代随一って言うでしょ?その血を遺せないからって」


 しらっとした空気が流れた。時代遅れの優生思想だ。昔、多くの女性を犠牲にして非道な実験が繰り返された。その結果、人為的に魔力量を上げることはできないと証明されたのに。フランソワは顔を顰めて訊いた。


「誰なの?そんなバカな事を言ってるのは」


「さあ。美しさと身分に拘るお方?」


 それだけで想像できた。王太子殿下だ。最近は狩りや夜会にしか出てこないし、戦況報告会にも姿を現さなかったので、ここにいる令嬢達には好かれていない。


「じゃあ、私たちがお二人を応援しましょう!」


 腹立ち紛れにフランソワが提案したら、皆が乗ってきた。


「同感!でも、具体的にはどうしましょう?」


「親に根回しを頼むとか?」


 あれこれ頭を捻っていると、ソフィーがおずおずと手を挙げた。


「あの…お話を書くのはどう?お二人の愛の物語を、皆に読んでいただくの」


「世論を動かすのね。良い考えだと思う。出版社なら心当たりがあるわ。費用も…これくらいで済むかな」


 ミシェルは算盤を弾いて計算してみせた。それほど高くない。小遣いを出し合えば、なんとかなりそうだ。


「決まりね。ソフィー、あなたがお話を書いてちょうだい。ミシェルは出版社との交渉と経理を頼むわ。私たちは資金集めと取材をしましょう。みんな、それで良い?」


 フランソワはテキパキと割り振った。ミシェルが騎士みたいに「了解です!編集長!」と敬礼したので、皆が笑った。


「私が書くの?無理よ!」


 ソフィーは顔を真っ赤にして固辞したが、説得の末、了承してくれた。こうして、『ある侍女の物語』製作委員会が発足したのである。



          ◆



 フランソワ達はパルデュー侯爵邸を訪れた。心ばかりの宝石を渡すと、夫人はやつれたお顔に微笑を浮かべた。


「ありがとう。皆さんのお心遣い、とても嬉しいわ。キコは幸せ者ね」


 慌ててフランソワは頭を下げた。


「とんでもない。お礼を言うのはこちらです。キコ様のお言葉に、どれほど私たちが救われたことか。副団長とキコ様の強い絆が羨ましいです」


「きっと、深く愛し合っておられるんでしょうね」


 ソフィーがうっとりと言う。夫人は首を傾げた。


「どちらかというと、ジェラルドの一目惚れだったのよ。ずっと片思いだったし。いつの間に思い合う仲になったのかしら?」


「そこのところ、詳しくお聞きしても?」


 取材班がメモを取り始める。夫人はお二人の馴れ初めを語った。キコ様が日雇いの労働者だったとは知らなかった。あんなに気品があって堂々としていたのに。


「多分、異国の貴族の娘だと思うわ。没落したか逃げてきたか。まあ、とにかく、ジェラルドが助平男の魔の手からキコを救ったのよ」


 聞いているうちに胸がドキドキしてきた。素敵すぎる。フランソワ達の頭の中では、悪漢を空まで殴り飛ばした英雄と美姫が熱く見つめっていた。だがミシェルは冷静に尋ねた。


「ちなみに、その助平男って誰なんですか?」


「何て言ったかしら。確か、オンナスキー子爵家の…」


「ああ。有名な淫魔(インキュバス)ですね」


 ミシェルが頷く。フランソワはその男を知らなかった。


「誰?」


「人の家の下女に手を出す変態よ。平民は訴えられないから」


 酷い!ゴミだわ!死ねば良いのに!と令嬢達は一斉に罵った。夫人は笑って宥めた。


「安心なさいな。留学という名の流罪になってるから」


 それから、お二人の様々なお話を伺った。強盗団の手先になった少年を庇ったり、舞踏会に行く途中でお産を手伝ったり。聞けば聞くほど、キコ様の優しさに心打たれる。その取材メモを元にソフィーが執筆を始め、他の者は資金集めに奔走した。



          ◆



 令嬢の一部が本を作っているという。主人の生存を信じて、東の森に向かった侍女を礼賛する内容らしい。王太子は彼女達に同情した。婚約者を失って頭がおかしくなったようだ。


(ドラゴンに遭って生きている訳がない。これだから女は…)


 彼は近々、騎士団を率いて出陣する。絶対防衛線でドラゴンを討つのだ。今は、地図を見ながら、側近達と策を練っているところだった。王室秘蔵の文献によると、強大な光魔法が有効らしい。


「聖女はまだ見つからないんだな?」


 王太子が確認すると、側近は皮肉な口調で答えた。


「はい。捜索隊の責任者が行方不明ですから」


「ジェラルドめ。口ほどにも無い。今すぐ再召喚すべきか…」


 老聖女はもう諦めるべきだ。ドラゴンに勝つために、もう一度聖女を呼ぶ。若く、健康で美しい聖女をだ。


「侯爵令息亡き今、一刻も早くご結婚せねばなりません。聖女もようございますが、婚約解消となった令嬢達にも目を向けてみては?」


 爺やのような事を言うのは、最近、留学先から戻った男だ。整った見た目をしているからと側近が連れてきたが、女の話しかしない。


「大した家柄じゃないだろ」


 気のない返事をしたのに、女好きの男は具体例を挙げた。


「例えば、トリフォー家、ファイファ家、マルソー家はいずれも伯爵家です。容姿端麗な令嬢達と聞きますし、側妃にはちょうど良い家柄ですよ」


「ああ…フランソワとかいう生意気な娘か。ミシェルは眼鏡が嫌だ。ソフィー?ソフィア?は本の虫じゃないか。私は側妃など好かぬ。まあ、形ばかりの後宮で良かったら、入れてやっても良い」


「では、この件は私にお任せくだい」


「好きにせよ。ドラゴン討伐が終わってからの事だ。父上に再召喚をお願いしに行ってくる」


「はっ」


 王太子は側近達を連れて執務室を出た。異国帰りの男はついてこなかった。頑なに反対する父王や騎士団長を説得するうちに、そんな話はすっかり忘れてしまった。



          ◆



 『ある侍女の物語』が完成するのは、騎士達が無事に戻ってからだ。最後の場面は副団長とキコ様の結婚式に決まっている。フランソワはソフィーの原稿を読む朗読会を開いた。行方不明の婚約者を待つ令嬢達はことのほか喜んだ。


「ありがとう!希望が湧いてきましたわ」


 良かった。皆で励まし合って朗読会を終えた。その夜。フランソワが婚約者の無事を自室で祈っていると、執事が一通の手紙を持ってきた。見慣れない封蝋だ。それを開けた彼女は、悲鳴を飲み込んだ。


『王太子側妃・立候補許可証』だったのだ。



          ◆



「うちにも来たわよ。酷いよね。婚約者のお葬式も済んでないのに」


 夜にもかかわらず、ミシェルとソフィーが来てくれた。冷静な友は同じ手紙をヒラヒラと振った。


「絶対に嫌よ。前に殿下に好きな本のお話をしたら、『賢い女は好かぬ』って。エーミールはそんな事言わないもの」


 赤い目のソフィーはまた泣いた。フランソワは憤然と立ち上がった。


「断固抗議すべし!明日、王太子宮に行ってくる!」


「無駄よ。殿下は騎士団とロワーヌ川に向かったもの。そこが絶対防衛線なんだって」


 ミシェルが止めた。彼女の父は諜報部のトップである。着々と対ドラゴン戦の準備が進んでいると教えてくれた。


 ふいに、窓の外でカラスが鳴いた。こんな夜遅くに?と不思議に思っていたら、ミシェルが立ち上がって窓を開けた。


「確認完了。お嬢様方以外、9名に送られています」


 女の声だけが聞こえる。声はそれぞれの家門名を伝えた。


「分かった。ご苦労様。今夜はトリフォー家に泊まるから」


「承知」


 ミシェルは何事もなかったように窓を閉めた。今のが隠密だろうか。フランソワがドキドキしながら尋ねると、


「そう。一人しか使えないんだけどね。さあ、全部で12人にこれが送られた。その意味、分かる?」


 彼女は教師のように質問した。ソフィーが目を見開いて答えた。


「『ある侍女の物語』の制作委員だわ…!」



          ◆


今、王城は非常事態宣言下だ。王太子殿下は最前線へ、国王陛下すら王都近くの砦に行った。その混乱に乗じて好き勝手に振る舞っている者がいる。フランソワ、ミシェル、ソフィーを乗せた馬車は城門で止められた。


「トリフォー伯爵令嬢と皆様は白亜宮へお越しください」


 何故か離宮の一つに案内される。彼女達が抗議に来る事を予想していたようだ。


「記録用の魔道具、ちゃんと持ってきた?」


 フランソワは小さな声で訊いた。ミシェルが頷く。


「父が貸してくれたわ」


「え?ご両親に言ったの?私、内緒で来たんだけど。絶対止められるから」


「私も」


 ソフィーも驚いていた。諜報部長の娘はサラリと言った。


「この程度の陰謀に引っかかるようじゃ、ファイファ家失格だって。しくじったら陛下の側妃にされちゃう」


「殿下じゃないんだ」


「垂簾の政がしたいんでしょ。タヌキだから」


 歴史小説みたい。陛下亡き後、娘が産んだ王子を玉座に据えて…フランソワが妄想している間に馬車は離宮に着いた。人気のない建物の奥に案内され、茶が出されたが、3人は手をつけなかった。


 ミシェルがお茶に試験紙みたいなのを浸す。


「睡眠薬入りね。ベタ過ぎる」


 すると、奥の扉の隙間から怪しい煙が入ってきた。フランソワは窓を開けようとした。しかし鍵がかけられていて開かない。ソフィーが廊下側の扉に走った。


「ダメ。閉じ込められたわ」


 どんどん煙が上がってくる。追い詰められた娘達は、ハンカチで口を押さえてソファの上に登った。その時、別室に続く扉が開いた。


「良い様だな。ご令嬢方」


 長い金髪に青い目の男が入ってきた。一見すると美男だが、澱んだ目をしている。フランソワはミシェルに訊いた。


「誰?」


「淫魔」


 それを聞いた男は顔を真っ赤にして怒鳴った。


「それだよ!やっとのことで帰国したのに、お前達が広めた変な話のせいで、俺の評判はめちゃくちゃだ!どうしてくれる!」


「事実じゃないの。ちょっと調べたら、山のように出てきたわよ。夜会の度に下女を弄んだわね。このクズ!」


 フランソワが言い返すと、奴はせせら笑った。


「証拠があるのか?第一、下女をどうしようが、裁く法は無いんだ。俺は貴族だからな」


「黙りなさい。私たちにこんな無体を働いて、タダで済むと思ってるの?」


 ミシェルの言葉をフンっと鼻で笑い、男は懐から紙を出した。広げてこちらに得意げに見せる。そこには『王太子の側室選びを一任する』と書いてあった。御璽らしき印も押してある。


「残念だったな。お前達はこの場で後宮送りだ。ただし、相手をするのはこの俺だ。殿下は聖女以外に興味がないからな。俺を怒らせたことを、一生悔やむが良い」


 煙が満ち、一番背の低いソフィーが倒れた。睡眠ガスだ。


「安心しろ。他のお友達も仲良く側妃にしてやる」


 外は美しいが中身は腐っている。フランソワはミシェルと頷きあった。証拠は十分録った。ミシェルが土魔法で作った球を窓に投げつける。ガラスは1枚だけ割れた。淫魔は笑って近づいてきた。


「それっぽっちじゃガスは消えないぜ。俺?俺は耐性があるのさ。さあ、眠れよ。もう動けないくせに」


 穢らわしい手を、フランソワが払った瞬間、部屋中の窓が一斉に吹き飛んだ。


「?!」


 彼女は風魔法でガスを一気に外へ押し流した。綺麗になった部屋に、9人の娘達が窓から飛び込んできた。皆、学園の運動着姿だった。


「合図が遅いから心配したわよ!」


「きゃーっ!ソフィーが倒れてる!光魔法使える人!早く、早く!」


「みんな重いわ!魔力切れそう!」


 途端にかしましい声が部屋を満たす。解毒の魔法でソフィーも意識を取り戻した。尻餅をついた淫魔は呆然と令嬢達を見ていた。すかさずミシェルが土の蔓で奴を縛り上げた。


「何驚いてるの?女だって力を合わせれば、窓ぐらい壊せるのよ。令嬢はお茶を飲むしか脳がないと思ってた?残念だったわね!あなたは牢屋行きよ!」


 フランソワが転がる男に言い放つと、12人の乙女達は奴をぐるりと取り囲んだ。ミシェルが書類の束と魔道具を突きつける。


「これは乱暴された下女の証言を集めたものよ。確かに平民が貴族を訴える事はできない。でも、孕った娘を、銅貨の1枚も渡さずに捨てるのは違法よ。今日の私たちに対する狼藉も記録したし」


「俺は殿下という後ろ盾がある。今すぐ解放すれば許してやる。仲良くしようぜ。死んだ騎士なんかより俺の方が…」


 ゴチャゴチャと往生際が悪い。とうとう一人の堪忍袋がはち切れた。


「今、始末した方が良くない?世のため女性のためじゃないかしら?」


「そうね」


「どうする?切り落とす?」


「ちょっ…待ってよ!」


 剣呑な雰囲気になってきて、フランソワは慌てて皆を押し留めた。すると、廊下側の扉から兵を引き連れたパルデュー侯爵が入ってきた。


「はい、そこまで。オンナスキー氏は公文書偽造で逮捕。トリフォー嬢とファイファ嬢は代表で話を聞くよ。マルソー嬢は医務室へ。他のお嬢さん方は…何て格好だ。着替えはあるんだろうね?」


「はい、その…」


 萎縮してモジモジする乙女達に、閣下は優しく言った。


「心配しなくて良いよ。事情は大体分かってる。ご家族にも内緒にしてあげるから。ただし、今後はこんな無茶はやめてほしい」


 皆はしゅんとして頷いた。フランソワは謝った。


「申し訳ありません。窓を壊してしまって…」


 当然、弁償だろうと思った。だが閣下は笑ってパチリと指を鳴らした。すると床に散らばったガラスがみるみる溶けてしまった。


「お嬢さん達は、この男に騙されてここに連れてこられた。私がガラスを消して突入した。そうだね?ファイファ嬢」


「はい。見事な火魔法でした。閣下以外には不可能です」


 ミシェルはすぐさま合わせてみせた。淫魔は引っ立てられながら叫んだ。


「これは冤罪です!私は殿下の御為に…」


 パチリ。音がした途端、奴の髪の毛だけが燃え上がった。


「ぎゃああああ!」


「今、陛下から城を預かってるのは私だ。消されたくなければ黙ってろ」


 静かな、しかし恐ろしい声で閣下は言った。フランソワは脚が震えるのを感じた。凄まじい発動速度と制御力。父母の世代で最強の火属性魔法士と謳われたのは王弟殿下ーーパルデュー侯爵閣下であることを思い出した。


 閣下はすぐに温和な表情に戻り、フランソワとミシェルに手を差し出した。


「さあ。お茶でもどうかね?他のお嬢さんも着替えておいで」


 両腕で二人をエスコートしてくださる。『娘がほしかったんだよ。息子なんて可愛いのは一瞬だから』と、大層ご機嫌だった。



        ◆



 代表の2人は重臣専用のサロンでお茶をご馳走になった。内装も調度品も、普段使う部屋とは格が違う。フランソワは緊張してガチガチに固まってしまった。そこで形ばかりの聴取をされ、証拠の魔道具と書類を提出した。


 絶妙のタイミングで現れた理由を、閣下は笑って教えてくれた。


「実はファイファ伯爵に頼まれたんだ。危ないようだったら助けてくれってね。実際、危なかったのはオンナスキー氏の方だったけど」


 ミシェルは渋い顔をして尋ねた。


「何点でしょうか?」


「そうだねぇ。85点ぐらい?マルソー嬢が倒れてしまった事、令嬢達が暴走しかけた事が減点かな」


「ありがとうございます。このご恩はどのようにお返しすれば?」


 フランソワはドキッとした。冷静に考えれば、侯爵家に借りを作ってしまった。だが願ってもいない取引を持ちかけられた。


「気にしなくて良いのに…。じゃあ、こうしよう。キコの友達になってほしい。エイゼンシュテイン家の養女にしたところで、平民だった事実が消せる訳じゃない。風当たりは強いだろう。君たちが各家の夫人になっても、ずっと彼女を守ってくれないか」


「はい!」


 2人は大喜びで承知した。閣下も御子息の無事を信じている。フランソワはミシェルの手を握った。彼女も強く握り返してくれた。すると、診察を終えたソフィーがサロンに入ってきた。


「フランソワ!ミシェル!」


 3人は抱き合った。ソフィーにキコ様への忠誠を誓ったことを話したら、彼女は呆れたように言った。


「まあ。閣下、取引になってませんよ?お頼みにならずとも、私たちはキコ様の大ファンなんですもの」


 ミシェルが人の悪い顔で提案した。


「1年以内にキコ様派を最大派閥にして見せます。いかがですか?」


 しかし、閣下は困ったように言った。


「ちょっと気が早いな。ジェラルドはまだプロポーズしてないんだよ」


「ええーっ?!」



          ♡



 驚愕の叫びが木霊していた頃。『紅の狼』は、いよいよ東の森に足を踏み入れようとしていた。


「ハックションッ!」


 きよ子は思いっきりくしゃみをしてしまった。誰かが噂をしている?キョロキョロと見回していると、スタローンに睨まれた。


『音を立てるな。ど阿呆』


 とその目が語っている。『ごめんなさい』と目で謝ったが、通じなかった。昼なお暗い森は瘴気とやらに満ちているらしい。侍女と冒険者一行は慎重にその中を進んでいった。


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