第3話 「お礼ガニに触れられるなど許さん!」
半分眠りながら書いたから爆裂しています。お暇な方、お風呂上りに、「くだらねー」と言いながら読んでいただければ幸いです。
悪役令嬢転生、侯爵様系?です。超短編。
第3話 「お礼ガニに触れられるなど許さん!」
眠い。完徹は20代前半までだ。
「旦那様、奥様。朝食でございます…」
2人とも。ほぼ生ける屍状態。何食べたか覚えてない。そもそも食べたのかしら。
ドレスもいつの間に着替えたんだろう。まさか彼の前で着替えたんだろうか。わからん。
「で…では、行ってくる…」
「いって…らっしゃい…ませー」
フラフラと夫が歩いて行く。頑張って馬車までたどり着け、夫よ。
ふらふら。ね、眠れる…これで眠れる…。
ピンポーン。「奥様、お客様でございます…。子爵様の…」
ピンポーン、「奥様、お客様でございます。公爵様におりいってお願いをと男爵様の…」
あぁ、これがあれかー。貢物溜まるシステムかー。悪徳政治家が生まれるワケだなー。
頭に霧がかかる。帰れよ~。眠いんだよ~。ねさせろよ~。
…そして。
もう夕刻近くになって、一人のイケメン侯爵が訪ねて来た。
「おや、結婚祝いを遅ればせながら渡しに来たんだが。マキアスの奴、居ないのか。」
マキアスは夫の名だ。
「こんな素敵な奥さんを貰っておきながら、まだ戻らないのか。困った奴だ。私はベナード。アイツの悪友だ。少々、待たせてもらって良いかな?」
髪をしっかり整えた背の高いイケメン侯爵はキラリと笑った。
うん、好きにせい。もう、意識が働いていない。
「どうぞごゆっくり。お上手な侯爵様。」
今、反射的にアタシはなんか言ったようだ。習性は怖いぜ。
「侯爵様、こちらなど奥地に合うかしら…いや、お口にあうかしら。」
しっかりしろアタシ。夫に毒されてるよアタシ。
小さな皿に、綺麗に乗せた砂糖菓子を、侯爵に渡そうとして。
ふらっと来たアタシは、ベナード様の胸に頭から突っ込んだ。
「…おっと、大丈夫ですか?ふふ、悪い人だ。旦那が居ないからといって…。」
いや、ちげーぞ。さすがにないぞ。愛してくれないったって、こっちはまだ愛してるんだぞ。そんな簡単に切り替えられるかって。
そのとき。
「おい、ルイミア。何をしている。」
いつの間にか帰って来てた夫がアタシの手を掴んだ。ジロリと侯爵を見て退散させる。
「い、痛い。お放しください!」
「うるさい。来い。」夫、強引にアタシを引っ張る。
アタシはホールから、通路の方に連れて来られた。ホールから覗こうと思えば覗ける絶妙な位置に。
あー、まずいよ~?不貞疑惑だよ~?また悪役令嬢フラグ来たよ~?
「なぜ、ベナードの胸に飛び込んでいたんだ!?」
「ち、違います!よろけただけです!」
「キミはオレの…妻だ!お礼ガニに触れられるなど許さん…!」
「………ワンモアプリーズ?」
「お礼ガニに触れられるだお…」
「壊れてんのかコラァ!どっからカニ来たコラぁ!?」
「すまん、眠くて…!」
「ちょっと来い。こっち来い。いい子だから来い。」
アタシは更に物陰に夫を連れ込んだ。
「深呼吸してゆっくり言えよ~!ハイ!」
「オレ以外に触れあエエ」
「触れ合わせてどうする!浮気推奨か!?ああ!?」
「お、オレ以外に触れさせるな!」
「…やれば出来るじゃねえか…。んじゃ、さっきんトコ戻るぞ。」
アタシたちはさっきの位置に戻った。
「オレ以外の男に触れられるなど許さん!」
「え!?」
自分自身の言葉に驚き、目を逸らす夫。報われる期待に揺れ動くアタシ。
「愛して…くれないくせに!!」
「うるさい!ウキワは許さん!」
・・・・・・
「沈めってかー!溺れろってかー!あーん!?」
アタシ、夫の腕を掴み再び物陰へ。
「ちょっと来い。諦めて来い。優しくしてやっから来い。」
「ハイ!すみませんでしたぁ!」
「う・わ・き。ハイ、浮気、ね。ココはノートが無いから繰り返し言え。」
「えー。」
「言え。」
「浮気浮気浮気浮気浮気浮気浮気浮気浮気浮気浮気…」
「覚えたな!?」
「ハイ!」
「プールで着るのは!?」
「浮き輪!甘いぞ!ルイミア!」
「残念!水着でしたぁ!」
「くっ!」
は!?侍女たちが、呆れた目でこちらを覗いている…。
「ほ、ホール戻るよ!?」
「ハイ、では。どうぞ…。」
「浮気は許さない!キミはオレのMONOだ!」
「まさかの文房具来た―!!」
「…座れ…床にかけ…プロッキーで1200回書け…」
アタシたちは、その晩、ついにホールに寝転がって意識を失った。
…つづく(こともある)