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最終話 宣言するわ!!

 シュアンは全身から煙を上げて、へなへなとその場に座りこんだ。


「しぶといわねぇ。さすがアンデッドクイーンだわ」

「ひっ!?」


 私が近づくと、シュアンは目に涙を浮かべて身体を震わせた。


「お、鬼じゃ……人間の皮を被った鬼じゃあ……」

「鬼にそう評価されるなんて光栄ね。そうそう、一応礼を言うわ、シュアン。最高の刺激をありがとう。これからも、ずーっと可愛がってあげるわよ!」

「うわぁぁぁぁん!」

「泣くことないでしょ? せっかく私と一緒なんだもの、全人類をひざまずかせて楽しみましょうよ!」

「それの何が楽しいんじゃ! どうせワシを奴隷のようにこき使おうとしておるのじゃろ!!」


 シュアンはいじけた子供のように、ぶちぶちと枯れた草を引っこ抜いた。


「わかってないわねぇ。あなたをはめた人間を、今度は私たちが支配してやろうって話よ。復讐って楽しいでしょ?」

「え?」


 シュアンはきょとんとした表情で、私を見上げた。


「どうして、それを……」

「さあね。ほら、行くわよ」


 右手を差し出すと、シュアンはすこし迷いながら、同じように右手を差し出した。


「べ、別に……お前を信用したわけじゃないぞ!」

「はいはい」


 シュアンの手をにぎるとブレスレットが反応し、シュアンの身体はブレスレットに吸いこまれるようにして消えた。

 シュアンが戻ったことで、再び魔力が増加するのを感じた。


「やっと戻ってきたわね、私の魔力! 気分もすっきりしたし、一件落着だわー! はー、疲れた!」


 今回のことで痛感したけど、私は同じ場所に留まりつづけることができないらしい。

 次はどこに向かうべきかと悩んでいると、ふとあることを思いついた。


 魔物封印専用ブレスレットに目を落とす。なぜこんな簡単なことに気がつかなかったのだろう。


「ふふ、そうよね! 限定したのがそもそもの間違いなんだわ!」


 私が本当に目指すべきものは何か、それがようやくわかった。今すぐ屋敷に戻って旅支度を整えないと。


 私がひとり心躍こころおどらせていると、ほぼ全裸状態の陛下が近づいてきた。


「さすがだね、アビー。これでアンデッドクイーンは、二度ときみに逆らわないだろう」

「逆らってもいいですよ。調教しがいがありますもの!」

「きみらしいね」

「アビーさんと共同作業、楽しかったぁ!」


 箱型に変形したステラが、私の腕の中に戻ってくる。生首って意外と重いのよね。


「あなた強いけど、持ち運びが不便ね。出発までに運搬方法を考えておかないと」

「きみはこれから魔術師の墓場に戻るのかな?」

「いいえ、私は感情が高ぶる過激な場所に向かいます!」

「過激な場所か。行き先は?」


 行き先を告げると、陛下は目をみはって、それから楽しそうに笑った。

 こちらに駆け寄ってきたシルバーには聞こえなかったのか、不思議そうに私と陛下を交互に見つめている。


 私たちは陛下に別れの挨拶をして、宮殿をあとにした。


「やっぱり普通の生活は無理ね。だって退屈は天敵だもの! 今すぐにでも出発するわよ、シルバー!」

「かしこまりました」

「アビーさん、私も一緒に行っていいんだよね?」


 箱の中のステラが、不安そうに私を見上げる。

 私は大袈裟にため息をついた。


「そうねー、陛下に任されちゃったし、ここで放り投げたりなんてしないわよ。やるからには完璧な身体を作ってあげるわ!」

「わーい! アビーさんと一緒に旅できるの、嬉しいよー!」

「こら、暴れないでって言ってるでしょ!」


 箱に二本足を生やして、自分で歩いてもらおうかしら? なんて考えていると、後ろからシルバーに呼び止められた。


「どうしたの、シルバー?」

「先ほど、陛下と何を話していたのですか?」


 シルバーはいつになく真剣な顔つきで、私の答えを待っている。何を深刻に考えているのかしら。

 私はシルバーに向き直って、得意気に胸を張って言った。


「宣言したのよ!」

「宣言?」

「今度は魔王をひざまずかせるってね!」


 シルバーは陛下と同じように目をみはった。


「伝説上の魔物の王を、ですか?」

「そうよ! あのドラゴン族をも従えるという存在を、今度は私がひざまずかせてやるの。人類に限定するなんて間違いだったわ! そうでしょう?」


 シルバーはしばらく目をぱちぱちと瞬かせていたが、ぷっと吹き出して、「ええ、その通りです」と力強くうなずいた。


「本当に驚きました。アビー様はいつだって私の予想を超えてくる」

「当然でしょ! じゃあ、シルバー、善意で聞いてあげる! あなたの返事は?」


 試すようにじっと見つめると、シルバーは私の目を真っ直ぐ見つめ返して、誇らしげに答えた。


「どこまでもお供します。地獄の果てまでも。先ほど、そう約束しましたから」

「当然だわ! さすが私の……」


 私はシルバーの言葉に違和感を覚えて、首をかしげた。


「先ほどって、あなたまさか……覚えているの?」

「え? 覚えているとは?」

「今、約束したって」

「そんなこと言いましたか? アビー様、また寝ぼけていますね」

「違うわよ! あなたが言ったの!」


 私が冗談を言っていないとわかったのか、シルバーは不思議そうに首をひねった。

 自分が何を言ったのか覚えていないみたいね。


「トキナオシをつけている私以外は、記憶を引き継ぐことなんてできないはず。陛下のように魂の状態になっているのなら、話は別だけど……」

「そういえばアビー様、死に戻りの話はいつしてくれるのですか?」

「あなたはそれを魔法ではなく、根性だけでやってのけたってこと?」

「聞こえていないな、これは……」

「ふ、ふふ、あはははっ! あなたのその執念深さ、誰に似たのかしらね!!」


 シルバーはまだよくわかってない顔をしているけど、それでいい。

 感情が高ぶり、魔力が全身にみなぎるのを感じる。

 湧き上がってくる高揚感で、そのまま空まで飛んでいけそうだわ!


「おーほほほほ! さすが私の所有物だわ! どこまでも私についてきなさい!」


 シルバーはかすかに頬を紅潮させて、まぶしそうに目を細めた。


「はい……どこまでもついていきます、アビー様」

「いい返事ね! さあ、手始めに、全人類をひざまずかせに行くわよ!!」



読者のみなさまへ。


この小説を最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます!

今はただ、「あきらめることが大嫌い」と語るアビーの物語を、最後まで書き切ることができて、ほっと安堵しております!


アビーという存在にこれでもかと理想を詰めこんだ作品でしたので、最後まで楽しく書くことができました。


ですが、この作品を見つけて、ここまで読んでくださった読者のみなさまの存在が執筆の励みになりました。

評価やブクマ、そしていいねをつけてくださったみなさまも、本当にありがとうございます!

ひとりひとり直接お礼が言いたくなるほど嬉しかったです!


読者のみなさま、アビーの旅にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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