2話 対決、新・十二神!
「アビゲイルくん、無事だったか!」
「お久しぶりですね、ヘリオス様」
ヘリオス様は私を見てほっと安堵した様子だった。
対してアリーズは恐ろしい形相で私とグロウスをにらんでいる。
「どういうことだ!? お前はドラゴンに食われたはずでは……グロウスが裏切ったのか!?」
「そうよ。グロウスは私の手駒のひとつなの。まんまと騙されちゃってお馬鹿さん」
「き、貴様ぁ!!」
アリーズは顔を真っ赤に染めて、ぎりぎりと歯ぎしりをした。
「アングイス兄弟はどうした!?」
「あの兄弟魔術師? さっきあなたが美味しいって食べてたじゃない。昼食のステーキ」
「は!?」
アリーズの顔から一気に血の気が引いた。吐き気がしたのか、あわてて口を押える。
「ぷっ、あははは! 冗談に決まってるじゃない! 多分ね」
アリーズは額に汗を浮かべながら私をにらんだ。赤くなったり青くなったり、忙しいやつ。
「おい、アリーズ! こいつらをどうにかしろ! 兄上を殺した犯人だぞ!」
テンペスタが苛立ったように叫んだ。
その声に正気に戻ったアリーズは手元のベルを鳴らした。すると、隣の部屋から四人の魔術師が現れた。
「誰? 見覚えのない魔術師たちね」
「こいつらは私が推薦した新たな十二神たちだ。雑魚魔術師である貴様が敵う相手ではない。さあ、十二神としての初仕事だ! 大罪人アビゲイルを殺せ!」
新十二神の男たちが、にやにやと笑いながら近づいてきた。
「ちょっと火が出せるくらいのクソ雑魚魔術師に負ける先輩が四人もいるなんて、恥ずかしくてたまらないな」
「ええ、彼らよりも優秀な高位魔術師である僕たちで、敵討ちをしてさしあげましょう」
「こんなやつでも元十二神だってよ。弱そうで笑える」
「興味ないし、さっさと殺しちゃおうよ。というか、こんな雑魚に四人も必要なの?」
あまりにも幼稚な悪口に、腹立たしさを通り越して哀れみすら覚えた。
「言葉遣いも頭も悪い、魔力に頼ってるだけのクソ魔術師が何イキってんのよ。恥ずかしい」
「はあぁぁぁぁ!?」
四人は激昂して、それぞれ武器を構えた。
すぐに挑発に乗るところは、無駄にプライドが高い十二神らしいわね。
私は迎え撃つように、四人に向かって右手を突き出して唱えた。
「おいで、私の家具たち。相手してあげなさい!」
右手の紋章が輝き、私の前に四つの人影が出現した。
「ええ、お任せください、ご主人様。氷漬けにしてさしあげましょう」
「なあ、ご主人様! こいつら粉々にしていいか?」
「その前に細かく切り刻んでやろうよ」
「目障りですね。ドロドロに溶かしていいですかぁ?」
フロスト、ロック、パロット、ラヴァが、それぞれ殺気立った表情で四人を見すえた。
新十二神の四人だけではなく、アリーズや他の神官長たちも、突然現れた十二神に驚きの声を上げた。
いち早く我に返ったアリーズが叫ぶ。
「怯むな! やつらはアビゲイルに味方している裏切り者だ! 殺せ!」
アリーズの声で正気に戻った新十二神の四人は、あわてて魔法を発動させようとした。
「そんな乱れた精神状態で使用する魔法なんて、大したことないわ! 本物の十二神の魔法を見せてあげる!」
指をパチンと鳴らすと、フロストたちはぞれぞれの武器を新十二神の四人に向けた。
フロストたちの魔力がひとつに混ざり合い、目の前に巨大な魔法陣が出現する。
フロストたちは、同時に呪文を唱えた。
「我ら、王の願いを守護する者」
フロストたちはさらに魔力を高めた。魔法陣が輝きを増す。
「永遠に紡がれる偉大な誓い!」
属性を無視した十二神だけの特別な大魔法が発動する。
魔法陣から強力な魔力光線が撃ち出されて、新十二神の四人を貫いた。
その衝撃で、会議室内に風が吹き荒れた。
「うぎゃあぁぁぁぁ!?」
新十二神たちの姿は光にのまれて、断末魔だけが響き渡った。
光が薄くなり、かすかな余韻を残して消えると、光線に貫かれた四人は全身から煙を上げてその場に倒れた。
完全に気絶しているようだ。
呆気なく終わった新旧十二神の戦いに、アリーズはあえぐような声を上げた。
「馬鹿な……なぜ私の十二神が倒れている!?」
「あらぁ? あなたの推薦した十二神って、私の家具に負けちゃうわけぇ? 大したことないわねぇ! こんな雑魚に四人も必要なかったわ~」
「うぐっ!」
アリーズは悔しげに顔をゆがめる。
新十二神という駒を失ったテンペスタは、ひじ掛けを殴って怒声を爆発させた。
「おのれ、何をしておるのだアリーズ! この役立たずめ! おい、僕の兵を出せ!」
テンペスタが叫ぶと、開け放たれた扉の向こうから足音が近づいてきた。
「我が宮殿兵は十二神に匹敵する精鋭ぞろいだ! お前らなど一瞬で木端微塵にしてくれる! さあ、その女どもを殺せ!」
その声に応えるように、廊下のほうから武装したひとりの宮殿兵が吹っ飛んできた。
宮殿兵はテンペスタの頭上を通り過ぎて壁に叩きつけられ、ずるりと地面に落ちる。
それを見たテンペスタは悲鳴を上げて、怯えたように背もたれにしがみついた。
「な、何だ!? 何が起きたのだ!? 僕の宮殿兵は……」
「アビー様」
廊下の向こうから現れたのは、シルバーだった。
「全部片づけてきました」
「あら、早かったのね! さすが私の所有物!」
一礼したシルバーの背後には、ボコボコにされた宮殿兵たちが死屍累々(ししるいるい)と転がっていた。
テンペスタは驚愕して目を見開き、声を震わせた。
「な、な、なぜ、こんなことに!?」
「ああ、そうそう、宮殿の外にいる兵たちはイスカたちが抑えているから、援軍は来ないわよ」
それを聞いたテンペスタは絶望的な顔をして、がっくりとうなだれた。
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