表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/73

5話 対決! 十二神最強!

 間違いない。ここから見える景色も、私の服装も「あの時」のままだ。


「過去に戻った?」


 すぐに首を横に振る。それはおかしい。私はすでに処刑台を回避しているのだから、ここが過去であってはならない。

 考えられるのは、「処刑台ルートのうちのどれかに戻った」ということ。


「罪状を読み上げ……おい、聞いているのか、悪女アビゲイル」

「うるさい、死んで」

「はあ!? お前が死刑!!」


 執行人がぎゃあぎゃあとわめいている。今大事なところなんだから邪魔しないでほしい。


 私は黙って思考をめぐらせた。

 ここに来た原因は何? ステラの手に触れたこと? 状況から考えると、あの片割れのイヤリングに触れたことが原因かもしれない。


「とにかく、ここでじっとしていたら殺されるわね」


 手足を拘束する鎖をどうやって破壊しようかと考えていると、処刑を急かす人々の中から、私を呼ぶ声が聞こえた。


「お嬢様!」

「え、この声って……」


 はっと顔を上げると、人々の間を縫うようにして近づいてくるシルバーの姿があった。

 立派な青年へと成長しつつある姿ではなく、ぼろぼろの服を着た、痩せた少年の姿をしていた。


「ということは、ここはイチゴタルトを渡したあの時の!」


 シルバーは観客からの大ブーイングを受けながら、行く手を阻む憲兵隊の頭上を軽々と飛び越え、襲いかかる執行人の斧を素手で殴り砕き、颯爽と登場したパロットを雑に蹴り飛ばした。


 たったひとりで私を助けようとして、私のために命を落とした少年がそこにいる。

 その姿に心が震えた。


「お嬢様、今お助けします!」


 シルバーは傷だらけになりながら、私の拘束を解こうと駆け寄ってくる。

 その背後に、槍を持った死神が音もなく舞い降りた。シャリスだ。

 槍を構えるシャリスを見て、私は鋭く叫んだ。


「シルバー、伏せて!」

「え!? はい!」


 ありったけの殺意を魔力に練りこんで、私は突進してくるシャリスに向けて右手を突き出した。

 あの時のように、ただ見ているだけの私じゃない!


「吹き飛べ! 薔薇の強欲(ロドングリード)!」


 私の目の前に、幾重にも重なった炎の壁が出現し、シャリスと接触した瞬間に大爆発を起こした。

 見物客たちが爆風に吹き飛ばされて、悲鳴を上げながら地面を転がり回る。


「おーほほほほ! 私の処刑を楽しんでいた罰よ!! 全員くたばれ!!」


 シャリスは爆発の勢いに逆らわず、そのまま後ろに飛び退いて処刑台から降りた。


「おかしいな……」


 シャリスは、右手をにぎったり開いたりしながら、不思議そうに首をかしげた。


「こんなに強い魔法を使う十二神って、いましたっけ?」


 シャリスの反応に、私は「ふふん」と胸を張って答えた。


「刺激しかない経験と殺意のおかげで超超強化された、元・十二神よ!」

「はあ? よくわかりませんけど」


 シャリスは探るように私を見つめた。彼は私に対する殺気を隠そうとしない。

 十二神最強に警戒されるなんて、面白くて仕方がないわね。


「おい、今の見たか!?」


 私の魔法を目撃した憲兵隊や神官たちが、何やら騒ぎ始めた。

 

「十二神最強であるシャリス様を、あの十二神最弱のアビゲイルが止めたぞ!?」

「あれは本当にアビゲイルか? あんな強力な魔法が使えるなんて聞いてないぞ!?」


 モブたちの称賛が気持ち良い。新たな経験は、確実に私の魔力を高めていく。

 もっと恐れおののきなさいよ!


「すごい……お嬢様はこんなにもお強かったのですね!」


 地面に伏せていたシルバーが、目を輝かせながら私を見上げた。素直な反応がちょっと懐かしくて、私は表情をゆるめた。


「あなたのおかげでね」

「え?」


 シルバーはきょとんと首をかしげた。

 詳しく教えてあげたいけど、今はシャリスの攻撃を警戒しないといけない。

 今の私には右手の紋章も、シュアンのコアもない。使える武器には限りがある。


 どうしてここに来てしまったのか、その理由を知るためにも、まだ死ぬわけにはいかない。


「あら、そういえば……シャリスって総神官長直属の特権高位魔術師だったわね?」

「そうですけど」


 シャリスは槍を構えるわけでもなく、じっとこちらを見つめている。

 このまま対話する流れに持っていけば、戦わずに済むかもしれない。とにかく今は時間が惜しい。


 私はシルバーに頼んで手足の鎖を外してもらうと、処刑台を降りてシャリスと向かい合った。


「シャリス。陛下の行方、知りたくない?」


 シャリスの目が鋭さを増した。


「陛下は宮殿にいるでしょう」


 声の調子は先ほどと変わらないけど、「犯人はお前か?」とその表情が語っていた。


「まあ、これだけ聞くと私が怪しいわよね。でも勘違いしないで、私はその誘拐犯を知っているのよ」

「シャリス!」


 私の言葉をさえぎるように、男の声が響き渡った。

 憲兵隊を押し退けて現れた男の姿に、私は思わず唇に笑みを浮かべる。

 

「早速登場ね、神官長アリーズ」


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


ブックマークと下側にある評価【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!



読者様の反応、評価が作品更新の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ